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第一章 月城明は地元に戻り、妹への気遣いからヒロインから嫌われる side さくら(3/10)

「知らなかったでしょ、早苗姉さんは占いさちこでバイトはじめたんだ」


 占い屋さんというのはわたしの街にあるレオンズビルというビルに入っているブードゥー占いさちこのことだ。レオンズビルは何の変哲もないマンションなのだが、一階にはラーメン屋とスイーツが美味しいい喫茶店と、占い屋さんが入っている。


「それが何って言うのよ」

「早苗姉さんは高校生にして立派な社会人なんだよ。隣の喫茶店のコックさんが美少女だって知ってた?」

「そ、そうなんだ」

「分かる? これが社会人の情報網だよ」


 知らなかった。喫茶店の前を通ることはあるし、ときどき中を覗いたりするけど、あそこの厨房で美少女が働いていたとは。やっぱりバイトをしている早苗ちゃんは他にもいろんなことを知っているのだろう。


 早苗ちゃんはちょっと変わったところはあるけど、面倒見のいいお姉さんで占い師のバイトでもきっと優しくアドバイスをしてくれるのだろう。お兄ちゃんは優しいけど、占いなんかできっこない。

「それに早苗姉さんはまつ毛が長い!!」

「もうやめてよ! わたしを泣かしたいわけ?」


 わたしは両手を前に出して降参のポーズをとった。占い屋さんのバイトの時点で旗色の悪さを自覚していたのに、そのうえまつ毛の長さを見せつけられてしまった。

美央ちゃんだって、くるんと跳ね上がったきれいなまつ毛をしている。

「へへん、どうだ、参ったか」

「もう、美央ちゃんは早苗ちゃんのことになると負けず嫌いになるんだから。もう少し大人になったら?」

「ごめんって」


 美央ちゃんはそう言って、頭を撫でてくれた。わたしはその目をじっと見つめる。ともかくさっきまでのむずむずはなくなっていて、自分の喜びを分かってくれる人ができたのだ。でもまだ落ち着かない。早く会いたい。お兄ちゃんに早く会って、今日は久しぶりに二人でおやつを食べに行くのだ。


「いいもん、五カ月間離れ離れだった分、わたしの方が幸せだから」

「うん、うん。明くんが帰ってきてよかったね」

 わたしは「うん」と頷いて、美央ちゃんの悪戯っぽい猫目を見返した。


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