第二章 月城明と里見ひなたはケンカをする。その結果、ハッピーエンドは遠のく sideひなた(10/10)
なにこれ、私のケーキはマズくて、こっちは美味しいってこと? なに、お前のケーキはマズかったから、このケーキを食べて勉強しろってこと?
背中が冷たい。
それとも、何? 仲直りの印とか言いながら、マズいケーキを食わせて、嫌がらせするつもりだったわけ?
私は月城のことが分からなくなる。良い奴だと思っていたのに、なんでこんなことするわけ?
私は月城の意図を汲み取ろうとした。マジでどういうこと? どんなつもりでこのケーキを送ってきただろう。
まず、私があそこの店で働いていることは知っているのだろうか。知っている可能性はある。この辺は意外とムラ社会だなんて言っていたし。
知っているとすれば、これは明らかな宣戦布告だ。
お前のケーキはマズかったから、こっちの美味しいケーキを食べて、少しは勉強しろってことだろう。だって、あんなに大袈裟にマズいって言っていたんだし。
知らないとすれば……、知らないとすれば、純粋に自分がマズいと思ったケーキと似たケーキを送ってきたことになる。
つまり何? 仲直りの印とか言って、私にマズい思いをさせたかったのだろうか。
どっちにしても、彼が善意からこのケーキを送ってきたとは考えにくかった。
とりあえずケーキを食べてみよう。
私はフォークを取り出すと、ケーキを一口、口に運んだ。美味しい。私のおばあちゃんが作ったケーキと同じくらい美味しい。
ということは、私にマズいケーキを食べさせようって魂胆ではないはずだ。じゃあ、お前のケーキはマズかったから、これを食べて勉強しろってことに違いない。
「優しいところもあると思ったのに……」
気が付くと私は泣いていた。裏切られた気分だし、最高級の侮辱を受けた気分だった。
「やっぱりアイツは許さない。嫌い、大っ嫌い、超嫌い。絶対呪ってやる。一生好きな子とくっつけない身体にしてやる」
私は泣きながらケーキを食べ続けた。美味しいケーキなのに。他のケーキだったら、なんだって最高の気分で食べられたはずなのに。
第二章 月城明と里見ひなたはケンカをする。その結果、ハッピーエンドは遠のく sideひなた【終】
次章 妹たちは勝手な計画を立て、月城明は誤解する。