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第十四話 同級生が自分の姉と話しているのってどんな感じ?

 シュコシュコシュコシュコ。

 タイヤを指で押さえてみる。

 う~ん、まだだな。まだシュコシュコがいるなぁ。


 この空気圧で田舎の荒れた道を行くのは心配だ。外でもない肉親のお姉様を乗せてのことだからな。そこそこに気遣って調整しようじゃないか。まぁ感覚的には、昨日出来たばかりの変な姉なんだけどね。

 というわけで俺は忙しくポンプを操って自転車のタイヤに空気を送るのだった。


 その間に姉とグミは出会いを果たしていた。


「あなた、ちょっと誰よあなた。何ウチの太郎と仲良し小好ししちゃってくれてんのよ」

 舞愛は強気に少女の前に立ちはだかる。


「名乗りを惜しむことはない。今すぐにだって私がどこの誰か言ってやりたい思いでいる。けどねお姉様、ここは礼儀に重んじた順番があります。ではお先にどうぞ」


 グミは右手を広げて舞愛に見せ、「どうぞお先に」のジェスチャーを完成させる。


「そうね、礼節を欠いてはレディの名折れ。いいでしょう、聞くがいいわ。私は六反田舞愛。両親の愛が舞いに―(以下省略)(省略内容は数話前参照)」

 

 人に名前を聞くならまず自分から言うべし。姉の名を聞いたからには、次にはグミが名乗る。

 こうして二人は互いの自己紹介を交わした。


 というのが2、3分前の話。最初こそ険悪な関係性に入っていきそうな感じもしなくはなかったが、今ではホラ、あの通り。


「はっは~そうかそうか。グミちゃんがウチの弟を助けてくれたのね。で、助けた後もまた吹っ飛んだ頭の中身をかき集める手助けをね。いい子じゃないの~。それにあなたお肌すべすべで可愛い~!」


 二人は縁側に座ってアイスキャンディーを舐めながら談笑していた。すっかり仲良しさんで互いを気に入ったようだ。グミは対人スキルが高いようで、年長者が相手でも臆すことなく上手に懐に飛び込んで好感度を稼ぐ。姉の方は相手に何か気を遣うなんてことはなく、ただ普通に生きているだけであの通り初めての相手とも打ち解けるのが早い。


「ちょっとお姉様、このクソ暑い中シュコシュコサービスしている弟にはアイスないわけ?」と不満を言ってみたりする。


「ああ、太郎にもちゃんとあるからね。仕事が終わってからね」



 外がうるさいので、母も表に出て来た。

 縁側に座る知らない女子を見て反応を示す。


「あら、あなた!あなたは……」 

 レイシーママは顔を近づけてグミをじっと見つめる。

 

「あなた、若い時の私に……全然似ていない」

「似てないのかよ!」とついツッコミを入れてしまった。


「ええ、それはもう。まったく、全然、これっぽっちも似てないわ。はっは~、すっかり他所様のDNAね!」母は笑って言うのだった。

 

 そりゃしっかりそうだろうさ。でも、それをわざわざ言うことがあるかね。よく分からない母だ。


「しかし可愛らしいお嬢さん。どうしたの?タロちゃんのお友達?」

「ええ、お友達です」

「それ以上になる可能性は?」

「未来のことは二人にも、他の誰にも分からない事なので何とも言えません」


 すごいなぁ。初っ端から年頃の女子にする質問にしては諸々面倒なことを吹っかけられても、グミは怯まずそれっぽい内容を即答する。


「これはこれは、利発そうなお嬢さん。将来に見込みありね!」

「ありがとうございます」

 

 レイシーママにも気に入られたようだ。


 女3人で楽しく談笑していやがる。俺は一人忙しく自転車のメンテナンスを済ませた。


「ふぅ、終わった。じゃあ後はアイス舐めて飯食って明日が来るのを待つか」


 はい、これで今日の俺の活動は終わり。ここからは極省エネモードに入ろう。


「何を言ってるのよ太郎。あんたはこれからグミちゃんを家に送るのよ」

 

 何を良い出すのだこの姉は。家に送ってもらったのは俺の方なの。だから後はここで大人しくしとけばいいの。

 という事を告げのだが、姉はジェントルマンの心得がどうのこうのという理不尽でワケワカメな反撃に出て、とにかくグミを家まで送るよう強制するのだった。母はそれをなんだか面白そうと思って眺めていた。


 そして夕方。せっかく家についたのに俺はまた道路を歩いている。グミも俺の横をご機嫌に歩いている。 

 持っていけと姉に言われ、先程メンテナンスが完了した自転車を押して俺は道を行く。


「よし、乗るか~」俺は自転車に乗ってみた。運転テクは覚えているようだ。こけることなくグングン進む。


「よし、グミも乗れや!」手招きして困った届け荷を呼ぶ。

「いやいや、私が運転するよ~」

 

 そうかそうか、疲れた俺をお前が乗せてくれると言うならそちらでも構わない。

 グミに自転車を渡す。すると奴は一人で乗ってグングン進んで行ってしまう。


「おいおい待て!俺がここに!」

 置いてけぼりを食らった俺は小走りでグミを追う。


「あっはっは!二人乗りなんてしたらお巡りさんに捕まっちゃうよ~。私が乗るから走ってついてきてね」


 くそぅ!結局またしんどい仕事が待ってるのかよぅ!

 ご機嫌に運転するグミを追い、俺は1キロ以上は走らされることになった。こいつ結構酷くない?

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