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龍の涙が降る頃に  作者: 夜祢亜
2/2

あの時の君はいつまでも・後編

「消えるって、どういう事だよ!?」

「神はね、人々から信仰を貰えないとこの世では生きていけないんだ……後、私の住処ももう……」


こんな、彼女になんて言えばいいか。

気持ちを、この彼女を助けたいこの気持ちをどうしたら……そうか!!


「諏訪子」

「帽子があればチカラは使えるんだよな?」

「うん……」

「分かった」


俺は、懐にから一刀の短刀を取り出し刃零れがないか確認した。


「お前!?」

「ちょっと、待ってろ。俺が取り返す」

「えっ、それって……あっ、待って」


彼女の事など脇目も降らず走り出した。


…………


俺にはちょっとしたチカラがある。

他人より目がいいのだ。


そして、目的地へ到着した。


…………


雨上がりの夜空、月明かりの照らす一面沼と化している田んぼ畑。


「君は昼の子だね」


神奈子はこちらに気付いたみたいだ。


「(ぜぃ、ぜぃ)お前のその帽子、返してもらう」


懐刀を抜き彼女に襲いかかる。


「ほう、人の子が神に牙を向くとは愚かな」


まず、腹、肩、太腿……どこを狙っても寸での所で避けられる。


「所詮、人の子は神には勝てぬよ」


隙を見せた俺の土手っ腹に御柱が突かれる。


「あぁ!!」

「喚け喚け、その方が虐め外あるって言うものよ!!」


しかし、それは誤算だった。


「その帽子、貰い受ける……短刀【山無(やまなし)】」


短刀の真名が開放される。

この力は4年に1回しか使えず、何の役にも立たなかったから……回数は余ってるざっと、2回。

チカラは、狙った所は見えている限り必中という代物。


「帽子が?!」

「狙いどおり、諏訪子」

「ありがとうね、君」


諏訪子は手に取った帽子から腕の長さくらいの鉄の輪を2本取り出す。


「洩矢。本当にやるのかwそんな状態で?」

「いやだ、あそこは私の国だ!!」


そう、怒りを顕にし神奈子に言うと優し声で……


「君を傷付けたくない、離れ見てて♪」


そう言った……


…………


争いが始まった、荒れ狂う天とそれを受け止める大地。

龍は涙を流し、カエルは勝利の為の賛美歌を歌い、ヘビはそれに食らいつく。


「……」


見てることしか出来ないのか……なんで、なんでだ。

もどかしい気持ちが頭の中をグルグルグルグル駆け回る。

それでも、見届けるしか無かった。

二人の死闘は夜明け前まで続いた。


「はぁ、はぁ、はぁ」

「洩矢、もう限界みたいだね……やはり、数の信仰には勝てないのだよ」

「そんなことない!!」


彼女は拒否を宣言する……自分はまだやれると。


「……すわこ」

「?」

「諏訪子、好きだ!!」

「「はぁ?!」」


はっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ……神奈子は笑いだした。


「何、君……呪われたいの?」

「いや、本気だ」

「あーうー///」

「戦場で愛の告白とはww」

「うるさい……だから、俺はお前を愛し永遠の信仰を誓う。魂にかけて」


そう宣言すると、何も生えていなかった田んぼ地帯が干上がり芽が出て若葉が生える。

やがて、それは金色の穂波隣辺りを黄金で満たした。


埋まっていく諏訪子の姿もだんだんと濃くなり、金色の衣を身に纏う。


「君……」

「こんな、質の信仰初めてだ。ますます、欲しい諏訪子。後君もだね」

「い~だ、八坂にはあげません」


ふ~ん、神奈子がため息をつくとこう言った。


「わかった、諦めるよ……だけど、もう社壊しちゃったから……治せないけど」

「お前は許さない」

「はいはい、またね。君も」

「二度と来るな!!」


神奈子は元からいなかったかの様に、消えていった。


「ふぅ、どうなるかと思った」

「おつかれ」

「ありがとう」


……気まずい。

少年も諏訪子も、あんた型でプロポーズをした……結果的に危機は去ったが凄く気まずい。


「……私帰る」

「はぁ?」

「……だって///」

「分かった」


2人の間に言葉なんていらなかった。


「じゃあ、さよなら」

「ちょっと、待って」


彼女は俺が投げた短刀を拾ってくると祈った。

すると、刀身にカエルの絵が掘られていた。


「これ……」

「御神刀にして、豊穣の祈りが込めてあるから、じゃあ」


またね……


彼女はこの世を去った。


「……」

俺は心に残るモヤモヤを抱きながら帰路へ戻った。


その時は龍は泣いてなかった。


……それから、数年。


龍の泣く日。


「また、雨か……」

傘を差しカエル達の鳴く、大雨の中を草履を濡らしながら歩いていた。


「あの時を思い出すな……」


確か、あの時は……昔の事を思い出してもしょうがないか、

悪い癖ついちゃったじゃねぇか……なぁ、諏訪子。

……ザァザァーザァー


その日は、豪雨でも記録に残るほどの雨だったらしい。


次の日から男の姿を見るものは居なくなっていた。

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