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さてジーネ三度目の正直。獲得したのは『牧民』。
…
この神殿で戦士を得る確率3割というのはどこ行ったんでしょうね。
一方俺は霊格成長に失敗。
かわりに呪い一つ得た。いいかげんにしろよクソ神殿。
ミニダンジョンで成長してるとたまに呪われるのである。
プレイヤーだけは。
NPCは霊格が増えないので、これには関係ないし知るわけもない。
これは『いつまでもそんなところでケチ臭く霊格伸ばしてるんじゃないよ』と巣立ちを促すためのルールだ。
一見深刻なものはないので、前世はフレーバーとして幾つかくっつけておくのも悪くはなかったものだ。
現世だと実害ありまくるんだが。
ほんとクソゲー。
『尿路結石になる確率20%上昇』とかあったからな。
現状だとシャレにならん。
『3人以上の会話に混ざると発言のたびちょっと沈黙される』とか。
なお今回得た呪いは『暗い部屋で眠ると床にレゴブロックが撒かれる』
今夜から同室者には警告しておかないと。
そのうえ外に出ると、辻説法をしていた神官とウヒョウが教義論争していた。
なんなんだ全く。
神官「万物これ魂あり。いかなるものにも慈悲をもって当たるのが神意である」
ウヒョウ「魂の有無と慈悲を施すことの間には何の関係もないと思われます。それより天界から落とされる罪ある魂の数が、世界の命の数と同じとは、あまりにも多すぎませんか」
神官「天界は広大無辺、無慮無数の住人がいる。神意に沿わず戯けるものがたとえ大海の一滴としても、それはこの世を満たすに足るのだ」
ウヒョウ「草木虫魚に転生したとて、何の償いができましょう? それらの存在は魂が悔い改めるための鑑として、神が創造したものとは言えませんか」
神官「逆である。世界を創造した神々から見れば、被造物は皆同じ。人の知恵も蠅の知恵も」
ジーネ「ちょっと待ったーっ。天地を作ったのは四大元素ですよっ。地水火風の相互作用に寄るのですっ」
エスタ「そうだそうだー」
うちの姉御たちも参戦してるし。
見知らぬ誰か「違うぞ! 喜怒哀楽の四大神だ!」
ジーネ「なんで感情が物を作るのです!」
見知らぬ誰か「命とは感情だ! 熱き思いだ! 感情無き土くれから命が生まれるわけないだろうーっ」
さらに「東西南北の神が」とか「陰陽二原理こそ」とか「風林火山が」とか、『教義を公言する』系の戒律持ってる奴らが集まってきて、どうしようもなくなってる。
(なお「風林火山」や「花鳥風月」を世界起源とする神殿は実在する。これは前世俺たちがとりあえず四字熟語をぶっこんだせいなのだが、がんばって教義をそれらしくしているようだ)
お互い戒律がある以上、一歩も引けないのでどうせ論争しても無駄。だから日ごろは押さえているのだが、火をつける奴がいるとこの有様だ。
適当なところで三人を引っ張り出して、いつもの親父の店で一休みすることにした。
こうした対立する教義は、初期のころあまりに強すぎた単一教義の神殿を切り刻み、力をそぐために付け足したルールなのだが、よく機能してるというか、うっとおしいものである。
エスタ「かーっ、あんだけ論破してやったってのに、挫けねぇ坊主だ!」
ジーネ「そうだそうだー。神様が最初からつくってたんなら、世界に理不尽あるわけないじゃないかー」
ウヒョウ「いやそれはこの世が罪を償う場所だからで」
俺「この席で論争はやめろ。すでに二人酒入ってるし」
◇ ◇ ◇




