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 次の間でも6体のゾンビが出た。

 子供が4体、大人が2体。


 手始めに子供ゾンビたちがエスタやウヒョウにとびかかってくるが、これは軽くあしらわれる。

 ウヒョウの一撃を受け死にかけたのを、俺が蹴り飛ばして永眠させた。


 しかし大人ゾンビの片方、老人ながら体格の良いのが錆びた剣を振るうのを見て、おやと思う。

 頭上に《1:5》。特技持っていやがる。


 もう一体の大人ゾンビは大したことないが。


 ここでチビっこいのが俺のみぞおちに頭突きをゲフゥ


エスタ「何当てられてんの、しっかりして」

俺「いやその爺さん、」


 ガキゾンビが続けて俺を狙うが、膝蹴りを入れて距離をとる。

 ウヒョウが別の子供ゾンビに豪打+4。これは一撃で沈む。


 人間の基本HPは10だが、9歳以下は年齢がHPだ。0~3歳は3。

 さっきの子供の享年は7歳だったのだろう。


 エスタが残る子供ゾンビにつきかかる。当たるがまだ倒せない。

 俺はちょっと飛び出して爺ゾンビを打ち据える。この爺はほっとくとまずい。


 当たりはしたが、


ジーネ「そのおじいさん動き良くない?」

ウヒョウ「生前戦士だな」

エスタ「見覚えあると思ったっ」


 若い大人ゾンビがエスタを付け狙うが、こいつはただの素人だ。何の問題もない。

 爺ゾンビが赤さび剣を俺に振るう。《5:4》?

 盾受けして《3:2》! げふっ


 この爺、一撃がでかい。4の目で特技発動してるぞ。おそらく【豪打】。


エスタ「大丈夫かマショルカ!」

俺「いいからガキを片付けてくれ!」


 そこでジーナが《6:3》

 ここは雷撃を拾わせてもらう。

 そして爺に落雷。


ジーネ「しゃあ! あ、でもごめんねおじいさん」


 こんな爺に労わりはいらん。錆び剣とはいえ特技持ち、両手で振るってくるからいてぇんだよ。


 ふらつきちょっと煙を上げてる爺さんに俺が追い打ち。筋張った肉をこそげとる。

 エスタが同じく爺さんゾンビにつきこんだが、同時だったのがまずかった。

 なんと俺にフレンドリーファイア。しかも豪打+4発動。


俺「ぎえっ」

エスタ「うわあああ」


 さらにこれを好機と見た糞爺ゾンビが俺に切りかかる。これは当たる。

 わあ死ぬ。

 《5:3》盾受け成功。


 俺にみぞおちミサイルで初撃を加えたガキゾンビが再度特攻してくるのを回避。

 このガキ生前この技を連発してやがったな。

 さっさと誤射して脳みそぶちまけて死ね。


 向こうでは子供ゾンビを狙ったウヒョウが剣を壁にぶつけて手首痛めた様子。ちょっとかなり流れが悪い。


 ウヒョウを逃れたその子供が俺に向かって飛び蹴りを飛ばしてきたが、これは盾で弾く。床に落ちた。打ちどころが悪かったか、片腕を折って自滅。


 若い大人ゾンビは今度はウヒョウを狙うが、これは相変わらず無害。


 そしてジーネが《4:3》

 いやこれは大きい。【ホコリ巻き】だ。

 自分のパーティ以外のもので抵抗失敗したものを行動済みにする。

 発動判定から実際の発動までタイムラグがあり、その間に術者が打撃を受けるとしくじるタイプだが、この時は敵が動く前に風が吹いた。

 ゾンビ4体が風に巻かれて安定を崩す。膝をつく。


 まずウヒョウが動き、片腕の折れた少年を突き殺す。

 ジーネは《5:3》

 ここは眠りを発動し、大人二人を眠らせる。

 ミサイルガキをエスタが串刺し。まだもがいてるのを俺が盾を捨てた両手撃ちでとどめを刺した。


 あとは爺を三人でぶすり。

 ん? 《6:1》? 何か受動特技持ってたな。1の目だから発動はしてないだろうが。


 若い成人を片す前に【指先通話】の掛けなおし。


   ◇ ◇ ◇


 いやマジで死にかけた。あと1点だった。

 本体HPが17。鎧合わせて19。

 ガキミサイルで1点。

 エスタから7点。

 すると両手攻撃の爺ゾンビは【豪打+5】持ちか。


 今思えばウヒョウの攻撃目標も爺に替えるべきだったかと思うが…


 ゲームではプレイヤーが管理下パーティの行動対象を選択できるし、この現実でも、操作された者に違和感は生まれないようなのだけど、周囲の目には時々変に見えるらしいからな…


 初級治癒薬を2本飲んで7点回復する。

 あとは【賭け治癒】

 《5:4》《1:3》《6:6》

 8→13→12→17

 本体全快。


エスタ「ごめんなー」

俺「いいって」

エスタ「ん、【指先】してくれたんだ」

俺「若い方のおっさん、お前らが殺してる間に」


 掛けなおしたので、話すと口中のイボに舌が当たる状態である。


エスタ「ほんとにどうしようかと」

俺「それはどっちの意味で? いや答えなくていいや」


 すでにニヤニヤとこれからに期待してる彼女に期待してもしかたない。


ジーネ「エスタ、切り替えが早いっ」

エスタ「えー、生きてたからいいじゃん」

ウヒョウ「それはそうだ。探索者は切り替えが大事だ。

 ところであの老人、打たれ強くなかったか?」


 さっそく話題を切り替えるウヒョウ。


俺「強かったぞ。ジーネが【雷撃】を落とし、俺が2回殴ってる。それでも余裕があった」

エスタ「ん」

ウヒョウ「してみると生前の恩寵を残したタイプか」

ジーネ「職業という恩寵を残してるんだから、特技も残すよね」

ウヒョウ「そうだな。呪文は忘れるというが」

ジーネ「それはさー、職業差別だよね。魔術師迫害」


 実はゾンビの生前データをいちいち書き換えてるわけではない。

 迷宮データに『ここのゾンビの行動表は空欄』とかあるだけ。

 しかしイベント表で『生前そのままの能力を持つ戦士ゾンビが出た』とか言うのを引いたら、そっちが優先される。


 ここはミニダンジョンのくせに、そうしたイベント表がついているようだ。

 町の近場で来やすいぶん、嫌がらせが充実してるな。魔石も出ないし。


俺「タフなだけじゃなく、一撃も重かった。次にあったら警戒しないと」

ジーネ「そういえばエスタ、見覚えあるって言わなかった?」

エスタ「城門前の首枷台で見た気がするんだよ。さ、行こうぜ」

ジーネ「あー、怖いから見ないようにしてるからなあ」

俺「ここと距離が近すぎるんだよな。凶悪犯の亡霊が出るのはそのせいだ。引き寄せられる。城内民は城外民の問題だからと気にしないが」

ウヒョウ「首枷台についたまま死んだなら、誰にも好かれてはいなかったな」

俺「即時処刑がいるほどの力量もなかったとはいえるが、それでも気を付けないとな。こっちも弱いんだから」

エスタ「なー、早く~」


ウヒョウ「確かにここにいても、また魔物が発生するだけだ。出よう」

ジーネ「ここ魔石も落ちないしね」

俺「コア触って神殿行くぞー」

エスタ「もう」


   ◇ ◇ ◇


 最後の部屋では廃れた板の間にぼんやり光るコアが浮いているばかりである。


ウヒョウ「それにしても、ここのコアに触ることに何の意義があるんだ? いや、差し支えなければでいいが。単なる好奇心だし」


俺「『呪いにかかりやすくなる』呪いにかかっててな。これを押さえるのにコアに触れての神殿詣でがいるんだわ。タメが効くんで、できるときには何度もしておくことにしてる」

ウヒョウ「ほう」

エスタ「ふう…」


ジーネ「マショルカはねー、役に立つ呪いにかかってるんだよ。唐揚げ食べたでしょ。あれ出すのとか」

ウヒョウ「え? 呪いなのか?」

俺「そうだが、勝手に人の能力を話すのはマナー違反だぞ」

ジーネ「あ、ごめんね…」

ウヒョウ「気になるので確認はしたいのだが…」

俺「食べても害はない。俺の寿命が半減してるだけだから」

ウヒョウ「! それはまた… 俺は君の命を食ったのか…」

エスタ「なあ」

俺「二十歳前には外したいと思ってる。だけど現在はまだ貯え無くていつ飢えるかわかんないから、持ってた方が利があるんだよなあ」



 このゲームの寿命は、『その年になったら死ぬ』というわけではなくて、『その年になったら老化が始まる』なので、期日が来てもすぐ死ぬわけではない。

 老化の再現である老化ポイントの蓄積といったことはダイス目次第。

 通常は新年にチェックする。「門松は冥土の旅の一里塚」


 そして人間の寿命=老化開始は40である。

 それが半減なら、20になったら老化が始まる可能性が高い。



ウヒョウ「そうか… 呪いを解く手段を手に入れないとな。銭を稼ぐのが一番確実か…

 あ! まてジーナ、なぜお前も触る。ここにいい恩寵はないぞ」

ジーネ「ん? 追加職のためだよ?」

エスタ「なー」


俺「ここで恩寵狙いは、たまにゴミをもらうだけなんでやめた方がいいが、追加職業を取る気なら、ここでも最高難度の迷宮でも同じなんだよ」

ジーネ「あたいが戦士欲しいの」

ウヒョウ「そうか。それは失礼した。確かに魔術師が戦士と兼職するのは良い選択だ。しかし狙ってとれるわけではないから、君には度胸があるな」

俺「しかし戦士なら3割で得られる」

エスタ「早く~」

ウヒョウ「得やすい方とは聞いたが、それでも3割…うーん」

俺「ほかの職はもっと厳しい。斥候や魔術師だと5%程度の神殿も多い。ここの街には斥候15%のところもあるけど」

ウヒョウ「神殿によって違うのか!」

ジーネ「そうなの?」

俺「あんまり知られていないけどね」


 俺のプレイヤー能力だとわかるんだ。


エスタ「お前ら無視すんなよ!」

俺「わかったわかった」

ジーネ「じらされるのも好きでしょ」

エスタ「好きだけど。こいつさっきからおしりを」

ジーネ「マショルカ、さいてーだね」


 外に出て、先ほど使った石のベンチのところに小走りで寄ると、さっさとエスタが装備を外しだす。


 座ったり寝転んだりしてた少年二人が慌てて立ち上がる。

 クワンが上衣を脱いで石のベンチに広げた。それを見たヤッドも続く。


エスタ「石のままでもいいぜ」

クワン「さすがに冷たいですよ。さっきまで寝てたんでちょっとあったまってますが」

エスタ「お前らのニオイに包まれるのも悪くないけどさ」


 腰巻だけになった二人のが寒そうである。

 真冬でも前世の日本よりずっと暖かいので幸いだが。


エスタ「じゃあさっそく、

 の前に」


 貫頭衣だけの彼女に太もも裏に蹴りを入れられた。


エスタ「今その親指はよせ」


 お尻の穴の内側から揉んだり出し入れするのは不評らしい。

 不評というか、そっちの二人の前でイベント発生したらドン引かれるという確度の高い予知というか。


俺「ではジーネと神殿にいって来るんで、その間周囲の警戒を頼む。周回はしないだろ?」

ウヒョウ「先ほどの老人見てしまうとな。まあこっちは任せてくれ」

ジーネ「エスタは手を出しても怒らない人だけど、筋は通してね」

ウヒョウ「だから手は出さんと」


   ◇ ◇ ◇



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― 新着の感想 ―
[良い点] ランダムで強敵がでてくるのはクソゲーがすぎる。誰だこんなにゲームつくったのは
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