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おっさんは河岸を変えて飲んで、さらに賭博場に向かうつもりらしい。
元気なことである。
翌朝に、ある神殿で会うことを約束して別れる。
エスタはやっぱり前後不覚になるまで飲んだので、俺が肩に担いでいる。
さっそく【剛力】が役に立った。
なおテルミナは、今はウヒョウにおんぶされてスヤスヤ寝ている。
ビルトソークのしっかりした鎧より、彼の貧乏くさい、布に革を張り付けた鎧のがまだ柔らかい。
そして左右を警戒しつつ歩いていたが、とくに怪しげな影はなかった。
クルベルトワらが特技を持ち続けているとしても、それは戦士と魔術師のそれであって、隠密は不得意ではないかと思う。
チリリ「ビルトソークとウヒョウは、宿を一緒にする?」
ビルト「そうだな」ウヒョウ「そちらに問題ないなら」
俺「部屋はあるかな?」
チリリ「隣が空いたの」
俺「それはまた都合のいい」
チリリ「先日の悪臭騒ぎでね。
部屋が埋まると、朝の挨拶も楽になるのよ」
俺「あ、ハイ」
宿の女将が、結構ねちねち言うんだよな。仕事はちゃんとしてるが。
ジーネ「チリリちゃん、我慢したから戻ったら一口お酒ちょうだい?」
チリリ「いいけど、警戒するためにも一口だけよ」
ジーネ「うん」
宿に戻ると、3人の客の追加があったことで、女将の愛想が良くなった。
似顔絵の書かれたテラの葉を渡し、描かれた子供が来たら待たせて呼んでくれと頼んでおく。
心付けはチリリが出してくれた。すいませんね、財布がひっ迫してるのだ。
三人娘の借り続けている部屋に戻り、エスタを放り込み、ウヒョウはテルミナを俺のいつも寝ている上の段に載せた。
今日は、そしてこのチームが続くなら、男女に部屋分けして寝ることになる。
俺「そういえば、今のパーティ人数はチリリに負担になってる?」
チリリ「問題はないみたい。平均は10人というものね」
NPCはパーティリーダーとして率いられる人数に制限があり、それを越えた数だとペナルティがつくルールがあった。
その平均が10人である。
最初は6人だったが、それだと雇い人や依頼人、救助対象が入れにくいのでちょっと加算された。
実プレイでは忘れてることも多かったが、この世界では結構重要になっていたりする。
PCがリーダーなら人数に限度はないが、人を増やせば管理の手間が増えるのだから、むやみと増やすことはなかった。
ウヒョウ「ズロイ氏は外してもいいように思うが」
チリリ「今のところはいいわ。寂しがり屋みたいだから」
ビルト「寂しがり屋?」
チリリ「うん」
特に何も説明はなかった。気が付くことがあったのだろう。
そんな感じで、二手に分かれ部屋に入った。
◇ ◇ ◇




