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少し離れた、廃屋の崩れた空き地につくと、エスタからまず質問があった。
エスタ「結局どういうことだ? 何かわかったのか?」
俺「テルミナの弟妹は、クルベルトワらの霊体に人格を乗っ取られてると思うんだ」
ビルト「え? どういうことだ?」
チリリ「やっぱりそういうことなの?」
ジーネ「! 真似してるって、ふざけてじゃなく… でもそんな魔術あるの?」
ウヒョウ「俺もそうではと考えてた。疑問なのは」
エスタ「死んだタイミングで発動するなにか… あの灰になった護符か?」
テルミナ「人格って?」
過半は何か察していたようである。
その時ふと、気になって辻の方をみると、幼児が二人こちらを驚愕の目で見ていた。
テルミナ「あ、ユベルとジメ!」
俺の目線につられて見たテルミナが、走りだしたので、他のメンバーも何人か走り出した。
しかし向こうは身をひるがえし、家と家との隙間、子供しか入れない通路を抜けて消えてしまう。
なおも一人で追おうとするテルミナの肩をつかんで引き留める。
テルミナ「なんで止めるの!?」
俺「あの子たちは今、クルベルトワたちの霊に取りつかれて操られているんだ。除霊の手段がわかるまでは、君が近寄っても意味がない」
思うところはちょっと違う。彼らには今、テルミナを殺す理由がある。
なぜならこの場ではっきりと彼らの顔を知っているのは、彼女だけだからだ。
この娘を排除すれば、俺たちは彼らを見つけ出せなくなる。
ビルト「つまりあの子たちは被害者というだろう? 左右に手勢を分けて捕まえよう」
なんかチリリから解説受けてたビルトソークが飛び出そうとする。止めた。
俺「街中で取り押さえて騒がれたら、こっちが人さらいだ。それに力量がわからん。生前の特技をそのまま持っているのか、まったくなくしたのか。
前者なら街中で戦闘になる」
後者なら、衛兵呼ばれてこっちが捕まる。
ジーネ「逃げたから、勝てる自信はないんじゃ?」
エスタ「どっかに誘い込む気かも」
チリリ「その力量って、どうしたらわかるの?」
俺「憑依の手段がわかればね。それでさっきペリヨンという少―」
テルミナ「ねぇ、なんで二人に死んだおじさんたちが憑りついているってわかるの?」
俺「じゃなかったらまず、お前さんから逃げる理由ないだろ」
ジーネ「門番さんの聞いたっていう口調、それとさっきのペリヨン兄さんも、二人が死んだ人の真似していて腹を立てたっていったでしょ」
エスタ「突然逃げ出して、そんなふざけたことする理由も想像つかないしな」
ウヒョウ「確信をもって、ずっと以前に埋められていた、恐らく財布を掘り出している。そんな知識が急に湧く何かがあった」
チリリ「大事にしていたという、ぬいぐるみや木刀を捨て去ってるのも」
ビルト「なるほど」
テルミナ「ぐぅ」
チリリ「それで、ペリヨン君から受け取ったもので、何かわかった?」
俺「いや。これ以上はどっかで話そう」
情報収集できればいいや、というつもりであの少年とはやり取りしたが、思わぬ拾い物をしてしまった。
クルベルトワが第一に回収にくるのは当然だった。
エスタ「メシヤいくか」
俺「あ、金ないわ」
ジーネ「唐揚げ払いでOKと思うよ」
ビルト「先に神殿じゃないのか」
俺「それもあったな」
ウヒョウ「君らはまだ成長を終えていないのか?」
エスタ「ウヒョウはもう空き枠ないの?」
ウヒョウ「次が最後の一回になるな。結縁用に残すか悩んでるが」
チリリ「私たちは、万一のチャンスに期待して霊格伸ばせるか試しましょう」
ジーネ「あたいはまた追加職?」
俺「いや、それはミニダンジョンで十分だ。今回は魔術師としてとれ。できれば追加行動表」
ジーネ「なにそれ?」
俺「受動系の特技を数多く準備できる」
ウヒョウ「何が得られるかは神意だ。受け取ってから考えよう」
まあそりゃそうなんだが。
◇ ◇ ◇




