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「ほんとに攻撃しちゃってよかったの?」

 今さらながらジーネが不安そうだ。


「その男が腰に付けている飾り布は、朝方見たグループの付けていたものよ。

 彼らが迷宮追いはぎだった可能性は低いと思う。それをするには装備が貧弱で、実力もなさそうに見えた」

 チリリが護衛を指さして指摘する。


「それもあるし、あいつらの目がウデンタとおんなじだったんだよな」

 それで十分、というエスタである。


「いくらか古びた血のニオイがした。直前ではなく、しばらく前にも殺している。

 魔物の血なら消えてしまう。だから相手にしたのは並みの生き物だ。

 もちろん自分が怪我をすることもあるが、この坊ちゃんの鎧に傷はなかった」


 俺は斥候の死体から消耗品を略奪しつつ、そう告げた。


俺「しかしリーダーの意志を確かめず、戦闘始めたのはすまなかった」


チリリ「いいのよ。手信号で『人殺し』『三人』というのは二度繰り返してたし、止める気ならそういう行動とってたわ」


「バスティオスには以前から人間狩りの噂があった。

 こちらもニオイで分かったよ。人の血のニオイだアレは」

 結構な重傷のビルトソークがそういう。


俺「怪我をしたみんなは、こいつらから薬を取り上げて使ってくれ。そっちの旦那は半分治ったら泉を使って大丈夫だぞ。アンタ頑丈だからな」

ジーネ「あたいが癒す?」

俺「いいね。でも薬飲むのも同時だ。急ぐから」

ジーネ「頑張るよー」


 なお今回は俺が介入しなかったので、まるで成功しなかった模様。

 ジーネ落ち込んでた。


「見捨てられるかと思ったよ…」

 ぐったりしながら怪我男が言う。

 今も再度怪我して死にかけてるが。


俺「見捨てようかと思ったよ。

 向こうもこっちも気づかなかった振りで別れられるなら。

 しかしなあ」


チリリ「無理だったと思う。この人らがこちらに向けた視線からすると」

エスタ「追っかけてたアンタを始末するまでは友好的だったろうけどさ、まだ仲間がいるんでしょ。あとで合流して襲ってきたよアレ」


ビルト「相手の消耗具合にもよるが…」

俺「こいつらがまだ治療薬も蘇生薬も持ってたんだから、残りのメンバーもいまじゃ無傷と思わんと」


怪我男「6人で来られなくてよかったよ」

俺「死にかけのアンタくらい、」と怪我男を見て「三人で十分と思ったんだろう。全員がその場を離れると遺物が消えるからな。

 …いや女性が生きてるなら消えないかな?」


チリリ「ビルトは彼の名を言ってしまったでしょ。

 ああなると、あっちも証人を消すしかなくなるからね」

ビルト「まあそうか…

 するとあれは軽率だったか」

チリリ「軽率とは思うけど…

 でもあちらもあなたに気付いて知らんふりしてたかもしれない。

 犯罪の自覚があるなら殺しに来たはず。

 やっぱり分断殲滅できてよしとしましょう」


俺「後ろの斥候がどう行動するか分からなくてさ。

 仲間に連絡にいかれても困るが、止めるのは敵対行為だ。戦闘になる。

 腰籠に入っているものを魔術師ジーネに投げる可能性もあった。

 だから迷いを捨てるきっかけになって、かえってよかったよ」

ビルト「そうか。ならいいか」

俺「だけど反省はしろ。次は考えて話せ」


 あの斥候の腰籠には、こっちより性能の良い範囲型麻痺薬や、範囲型幻惑薬が入っていた。

 後者はまともに見ると催眠状態になる奴だ。

 サングラスや濁った眼鏡を付けていないと、身内が敵に見えたりする。


 後方に投げられたら三人娘が倒れた可能性は高い。


 現実に起きた戦闘でも、ジーネの自力【眠りの雲】がなくば、こちらが壊滅していたろうほどである。三人娘が倒れたら、こちらに勝ち目はなかったろう。

 初手で敵斥候を倒せたのは運がよかった。


「ねぇ、君名前は?」

 十何度目かの【完全治癒】投射に失敗し、もう諦めたジーネが怪我男に尋ねている。


「ウヒョウだ」

 泉の水を飲み、顔を洗って怪我男が答える。

 よくよく見ると醜男ではないのだが、痩せぎすで愛想に欠け、魅力の乏しい御仁である。


チリリ「さて、みんなどうする? このまま外に出て知らんふり? それとも」

ウヒョウ「待ってくれ。まだ捕まっている女性がいた。彼女らを助けるのを手伝ってくれないか?」


エスタ「おお、カッコいい。…とは思うけど」

ビルト「恐ろしいとは思わないのか? 逃げたんだろう?」

ウヒョウ「リーダーが逃げろと言ったのは、悪事を知らせるためだ。死んだ者は帰ってこないが、助けられるものは救うべきだし、これ以上の悪事を止めるべきだ」


俺「ではウヒョウが率先して突っ込むか?」

ウヒョウ「いや、それは…」


 どうやら正義感はあるが度胸はないというキャラらしい。面倒な。


 とはいえ

 パーティを見ると、見捨てたら心に傷負いそうな顔が並んでるな。

 みんな芯のところで善良だな。


ビルト「よし、助けるか」

チリリ「誰も反対はいないのね?」

俺「まあまて。まず作戦だ。

 これにあいつらの居場所からここまでの地図を描いてくれ」


 俺はテラの葉を一枚取り出し、地に置いた盾の裏に載せた。


ウヒョウ「わかった」


 彼はさらりと地図を描く。


俺「きったない地図だなっ」

ウヒョウ「わかればいいだろ! 時間もない!」

俺「分かんねぇよっ、これ十字路か?」


 いちいち確認のいる超簡略図はやめてもらいたい。


 ちなみにここに来るまで、既にメンバーそれぞれに地図を描かしてみたが、なぜか三人娘が彼と同レベルで破滅の画伯である。

 ましだったのは俺とビルトだけだ。


 不得意技能値でみな判定してるはずだから、ヘタなりに横一列と思うだが、三人娘の作品は本人があとで見ても何を意味するか分からないのだ。

 どうも常連キャラには存在したフレーバー能力値が関係してるんじゃないかと思うのだが。

 『絵心』とかあったんだよな。そういや。

 四人には互いの似顔絵描いてもらいたい。いづれ。


 ともかく、俺が描きなおしたものを合ってるか確認とる。

ウヒョウ「そう。同じだろ」

俺「そうだな」もういいや「で、提案なんだが」


   ◇ ◇ ◇



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― 新着の感想 ―
[良い点] この世界は画伯(笑)ばっかりということか…マップ売ってるおっさんいたけどみれるものだったのかな…
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