「みー」の身の上話
ネコマタの村で出会い、一緒に旅をすることとなった「みー」は自分のことを喋り始めました。
俺たちは川沿いの道を歩いて次の村に向かっていた。
途中俺たちは自分の身の上話をした。
「みー」はその昔、別世界で普通の猫として暮らしており、女性の飼い主に可愛がられていたようだ。
長いこと幸せに暮らしていたらしい。
その女性は最後は亡くなったが、「みー」はしばらく亡くなったことに気付かなかった。
あちこち探し続けているうちにこちらの世界に迷い込み、ネコマタになったらしい。
俺はその話を興味深く聞いていた。
「彼女が亡くなったことに気づいてからも、私はずっと待っていたの・・・」
「でも昨日あなたが「俺は愛の戦士だぜ」ってボウフラみたいに現れて長老から紹介されたとき、心がぱっと明るくなったの!本当よ。」
みーは楽しそうに言った。
こちらの世界に来てからも、「みー」の時計は止まったままだったのかもしれない。
ネコマタの長老はそんな「みー」の心を察して俺のお供に付けてくれたのかもしれないな・・・
しばらく歩いていると、「みー」が驚いたように声をあげた。
「見て見て~」
何かを見つけたようだ。
「熊よ~(熊だわ)」
見ると確かにクマが川の中にいる。魚を採っているようだ。こちらには気づいていない。
「あ~面倒なことにならないようにそっと遠くに離れよう。」
俺は「みー」のほうを見ると、「みー」はもうおらず、熊のほうにすたすたと歩いているところだった。
「やばい」俺はそう思って剣に手をかけた。
熊は近づく「みー」に気づいた。
すぐさま立ち上がり、両手を大きく広げて威嚇のポーズを取った。恐るべき殺意だ。
「危ない!」俺は「みー」のもとに駆け寄った。
しかし、その刹那「みー」はすかさず熊の腹にこぶしを入れ、頭が下がったところにビンタを喰らわした。
あっという間の出来事だった。
熊は退かされた。実力差に驚いたのか、すごすごと退散していった。
「みー」は熊が川で取っていたサケを持って見るからに嬉しそうに言った。
「見て~サケが手に入ったわ~」
俺が何も言えずにいると、
「あーーーひょっとして熊のほうが良かった?」
俺たちはその場で火をおこし、サケを焼いて食べることにした。
それにしても熊が手も足もでないとは・・・
「みー」は喋り始めた。
「私たちネコマタは食物連鎖の頂点に輝く存在なのよ。熊なんてなんでもないわよ。」
「ネコマタ最強戦士の背広さんはなんと!あの伝説の生き物ドラゴンもわからせたんだから!」
「そうなの?ドラゴンは俺も会ったことないけど・・・伝説級だよね・・?」
俺はネコマタがドラゴンをわからせている場面を想像した。
「みー」は気分が良くなったのか歌いだした
「最強~背広~」
「背広~最強~」
「着てるのはトレンチコート~背広じゃない~yeah~」
みー「さあ、食べたらいくわよ。」
俺「そうだ!」
俺はネコマタの村で持たされた弁当を差し出した。
「この弁当も食べない?」
俺はさりげなく言った。
「あんまり腹減ってなくて・・・」
「私はいいわよ。猫の好意を無にしたらいけないわよ。」
「みー」は意地悪そうに笑って言った。