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ユーの名はみー

神は言った。

「そうか・・・」

「私は見ての通り片腕がない。」

「最後にハグしてくれんか愛の勇者よ・・・」

俺は言われた通りに神にハグした。


「わが息子よ・・・」

「???」

「聞き間違いか?」

俺はそうしているうちに、ふわふわとしたいい気分になって

夢の中に入り込んでしまった。



・・・・

目を覚ますと、俺は森の入り口で倒れていた。

俺は周りを見渡した。

サイクロプスは?あの神様は?

俺が死んだ場所・・・しかし、敵も味方ももういない。

そして荷物もない、食料もない。


「(前進したらまた奴に会うかもしれない。俺一人ではとうていかなうまい・・・)」


俺は喪失感を感じながら来た道、森の中を戻ることにした。


もう日が暮れそうだ。

疲れているせいかあたたかいベッドが頭の中に浮かんで離れない・・・

あたたかいベッド、あたたかいかけぶとん・・・

そういえばお腹も減ってきた。

一番近くの村は猫の妖怪であるネコマタの村だった。

猫は長く生きるとしっぽが割れて妖怪になるのだ。

身体を半分失っても復活する強力な再生能力、熊のごとき比類なき攻撃力、そして2足歩行するという特徴があると言われている。


昔はネコマタも人間に付き合ってくれたらしい。

ある時は芝刈りに

ある時は田植えに

そして魔王退治に・・・


しかし、いつからかネコマタは人間をあまり歓迎しないようになった。

なぜかは分からない。


・・・

そうこうしているうちにネコマタの村の入口に無事到着した。

入口には見張りの猫が数匹立っている。

その姿は何物も寄せつけぬという固い意思を持っているかのようだった。

目はギラギラと輝いている


それでも俺は一晩だけでも泊めてもらえないか村で交渉することにした。

物置でもどこでもいい・・・とにかく落着きたかったのだ。


見張りの猫達は俺を見るなり言った。

見張り猫1「あっ!見て見て~」

見張り猫1「この人間、愛の戦士じゃない?」

見張り猫2「あ~100年ぶりくらい?にゃ?」

見張り猫3「触ってもいいかにゃ?」

見張り猫4「ねずみ食べる?」

猫はねずみを見せびらかした。


なぜか猫が寄ってくる・・・行きに通過した時は冷たかったのに・・・

それに俺が愛の戦士だということを知っているようだ・・・だが、この反応はいけるかもしれん

あたたかいベッドが待っている。


見張り猫4「ねえ、ねずみ食べる?」

俺「お願いがあります。一晩泊めていただきたいのですが・・・明朝には出ていきます。・・・それと、ねずみは結構です。」

見張り猫1「愛の戦士はまず長老に会わせる決まりになっている。ほかの話はそれからだな。」

見張りについてくるよう促され、俺は長老の部屋に行くことになった。


部屋には豪華な装飾品と、大きなテーブルがあった。

テーブルの奥中央には長老、隣にはトレンチコートを着た変わった猫、まわりには沢山のネコマタがテーブルを囲んでいる。

長老はこちらを一目見るなり断言した。

「愛の戦士に違いない!」

「しかたがない・・・魔王退治のお供にうちのホープを連れていくがよい!」

俺「(俺何も言ってないですけど)」

長老「昔、じぇい〇ん・ステイサム似の愛の戦士がおってな・・・そいつと約束したのじゃ!うちのホープを遣わすと!」

長老「みーよ!来るのだ!」

?「はいは~い!」

奥から別のネコマタが姿をあらわした。

白黒ハチワレで目がくりっと可愛く、毛並みがとても良いネコマタだ。

背は私と同じくらいだが、パワーはずっと上だろう・・・

みーと呼ばれるネコマタはこちらをじっと見つめている。


長老「みーよ!このものに協力して魔王を退治するのだ。」

みーはかしこまりながら、うやうやしく答えた。

みー「お任せください。魔王など!私にとってはただのサタンでございます。きっと美味しいフランベにしてごらんにいれましょう。」

長老は答えに満足したのか、やさしくうなずいていた。

長老「愛の戦士よ、今日は泊っていくといい、魔王退治は明朝出かけるとよかろう!」





さて、朝になると長老のいったとおり、みーと一緒に旅にでることになっていた。

トレンチコートを着た猫がみーに言った。

「グッデ~~イ」

みーはにこりと笑っていた。

そこはグッドラックではないのか・・・


俺は皆に感謝しながら別れを告げ、村を出た。

驚いたことに猫ちゃん達はお弁当も持たせてくれた。

しかもねずみ丸ごとではなく、きちんと調理してあるようだ。(何の肉かわかんないけど)

せっかく作ってくれたのに、捨てるのは気が引けるな・・・でも食うのも勇気いるしな・・・

そんなことを考えていると、村を出てしばらくしたところでみーが話しかけてきた。

「あ~人間なんて久しぶりだわ~」

「ちょっとハグしてもいい?」

みーは返事をする前に俺に抱きついてきた。

「あ~これよこれ!人間の匂い~」

みーはこれまでとはうってかわってテンションが上がっていた。


「甘噛みしていい?」

みーは口の中の鋭い牙を見せながら言った。

俺は首を横に振った。「絶対やめて!」

「え~残念~」


「あっ!」

みーは何かを発見したらしく、草むらにしゃがみこんだ。

そして嬉しそうに立ち上がると言った。


「見て見て~~。」

みーは手の爪の間をにょろにょろしているミミズを俺に見せつけて言った。

「貴重なタンパク質で~す。」


俺「そんなの食べないよ!」


みー「おまえそれサバンナでも同じこと言えんの?」


俺「おまえこそ、絶対、サバンナ、行ったことないよね?」


みーは、あははと笑った。

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