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最終話

9月15日。朝起きて1番に考えたのは明日の事だった。自分なりにこの間のクイズの答えを考えたのだ。明日が楽しみで仕方がない。毛布を跳ね除け鈴を鳴らし、メイドを呼ぶ。メイド長が着替えを持って入室してくる。いつもなら億劫なこの時間も明日の為の時間だと考えたらかなり楽しい。

……私は話し相手が出来ただけでこんなに変な人になるのか?たかがクイズの1つでこんなにも楽しくなってる自分を見ていると馬鹿馬鹿しくなってきそうな反面、楽しければいいなとも思う……よく分からない感情になる。


「……お嬢様。今日は気分が良さそうですね」

「そうね。メイド長は今日も気分が悪そうね」

「確かにメイド達の面倒を見るのは大変ですが……余計なお世話です」

「そうね。違いないわごめんなさいね」

「………………意外です。お嬢様が謝るとは」


私は普段どれだけ礼儀のない奴だと思われてるんだろうか。確かにどうでもいい奴らに対しては酷いかも知れないが、嫌いな奴らと好きな奴……はいないけど……その人達にはある程度の礼儀は持ってるつもりだ。

まぁメイド長は嫌いな奴らの部類だったからそれなりの態度だったかもしれないけど……


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朝食に向かうとお母様がいた。キィキィ猿みたいにヒステリックで煩いので此処での会話は無しだ。というか、お母様とまともに会話ができる気がしない。いい加減にちゃんとした人になって欲しい。ちゃんとしてなくてもいいからせめて会話ぐらい可能になって欲しいわ……

朝食を済ませ、庭園に向かう。今日も不知火は先に来ていない。メイド長に聞いたところ、ここの2、3日は不知火は御館様……お父様からなにか指示を受けているらしく、忙しいそうだ。まぁ、私としてはお昼と夜の食事の時には来てくれるからいい。この2つにも来なくなったら無理矢理呼びに行こうと思ってる。


「彼奴の事。気になり過ぎよ私。いい加減彼奴がいなかった毎日に戻りなさい」


いつもこれを呟く。自分に言い聞かせるように。執事やメイドはいつ居なくなるか分からない。それなのにいつまでも居ることにして此処に来るのを、来てくれるのを当たり前と思うのは辞めた方がいい……というのを身を持って体験している。


「はぁ……彼奴。今頃本家で何をしてるのかしら」


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書庫。相変わらず人がいない。不知火は以前と同様に携帯を取り出し耳に当てる。


「はい。決行は明日の朝。朝食の際にやろうと思います。丁度その時間なら、父と母、子と全員揃うので」


依頼人(クライアント)の喧しい声を聞きながら不知火は考える。明日の朝までにやっておかなければいけない膨大な数の準備の事を。

……正直面倒臭いが…仕方ない。仕事だしやらなきゃ生活出来なくなるし……いや、此処に住めば一応生活出来るのか?……まぁ関係ないかどうせ1ヶ月も持たずに崩壊する未来しか見えない。


「確認しますが、対象は父母。子にはただその風景を見せるだけ……でしたね?……はい。間違いがないならいいです。それでは失礼します」


電話を切る。司書がクツクツ笑いニヤニヤとこちらを見ている。何が面白いんだよこいつは。


「いやぁ父も母もやっといて子だけ残すってさ……どっかで同じようなことになった奴を見た事あるなって思ってさぁ〜」


なるほどね……僕に対する当て付けか。まぁなんとなくそんなことだろうと思ってたよ。性格悪いもんな。


「性格の悪さならほぼ同じだろう?」

「まぁ……うん。そうだな」


性格の悪さの話を始めると長くなりそうだし……とっとと出て行くか。不知火はそう考え、足早に書庫から立ち去った。司書は明日起こることを想像しながら、さっさと此処を離れる準備をするのであった。


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お昼は紅茶とマカロン。いつも通りのメニューだった。不知火は私と一緒にそれらを食べながら少しの間会話を交し、直ぐに立ち去った。午後も忙しいらしい。仕方ない。お父様やお母様は何かと注文の多い事を私は知っている。それのせいだろう。

カップに残った温くなった紅茶を啜り、一息ついて立ち上がる。どうせなら庭園をもっと改装して星とか月とかがもっと綺麗に見えるようにしよう。うん、良さそうなアイデアだ。

……気がつくと夜になっていた。だいぶ集中して改装出来た。上を塞いだり、少し隙間や穴を増やしたり……うん、大成功な気がする。いつもより星も月も綺麗に見えるし。


「お嬢様。今日は十五夜という事で夜ご飯……とは言えませんが三色団子を用意させていただきました」

「……団子だけ?」

「いえ、普通にお米とかもありますよ」

「ならいいわ。とりあえず横に座りなさい。団子を食べながら月でも眺めましょ」

「畏まりました」


不知火が隣に座り、団子を手渡してくる。月を眺めながら1口食べる。美味しい。一頻り(ひとしきり)眺め終えた後は普通のご飯を食べ、本家に戻る。お風呂に入り部屋に帰り、待機している不知火に指示を出す。いつも通りだ。


「ねぇ不知火。そろそろ答えを教えてくれてもいいんじゃない?」

「明日までお預けですよ。あっ、明日の朝は私が迎えに向かうので着替えは置いておきます。着替え終わったらいつも通り鈴をお願いします」

「はいはい。じゃあおやすみ」

「はい。おやすみなさいませお嬢様」


不知火が出ていくと急に部屋の気温が下がった気がして毛布を被る。明日か……明日はいい日になるといいんだけどな……そんな事を考えてたら疲れが出てきたのか、私は瞬く間に眠りについた。


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9月16日。この日は大雨だった。今夜は月も星も見れなさそうだなぁ……ガッカリした気分で服を着替え、鈴を鳴らす。不知火が入って来て軽く挨拶をした後、朝の食事に案内してくれる。

食堂に入るとお父様とお母様の両方が座っていた。そうだ。今日は月に1度の3人が顔を合わせる日だ。なんだか今日は憂鬱になりそう……


「今日の食事はなんだ?」


お父様が口を開く。


「相変わらず貴女は屑よ屑。要らないのよ貴女」


お母様が口を開く。


「こちらになります」


不知火がお盆に乗った皿を私の前に置き、蓋を開ける。普通の料理。相変わらず、美味しくも不味くもなさそうな料理が出てくる。と、不知火が手を叩きこちらに声をかける。


「すみません。領主、一郎様。領主代理、芽衣様。そして、次期領主……(れい)様。私は隠していた事があります。今日この場でその隠し事について告白させていただきます」

「ほう……言ってみろ」


不知火が少し笑ったかと思うと、燕尾服がだんだんと白いダボッとした服装になる。何が起こったのか理解できない。


「初めまして。そしてさようなら」

「貴様ッ」


一郎の手が肩の付け根から飛ばされ、辺りに血を撒き散らしながら飛ぶ。一郎の背後にあったツボや絵画は、刃物で切り裂いたかのように綺麗な線を作り、砕けた。


「あれ?首を狙ったんだけど……あぁ、そっか僕……怒ってるんだな」


いつもの不知火からは想像出来ないような冷え切った声。しかもその声は、人の腕を飛ばしておいて何事もないかのようにトーンが変わらない。


「怒ったのは久しぶり。昔の僕に近い扱いされてるのを見たからかな?まぁいいや、せめて無惨に死ね」

「やめ……やめてくれ…」

「いいから死んどけ」


不知火がシッシッと、誰かを追い払うように軽く手を振ると一郎の身体がバラバラになり、そこら中に散らばる。


「さて……次は芽衣さん」

「し、不知火!何をしたのか分かってるの!?」

「なんか漫画みたいなセリフだな……気に入らない奴を殺した。以上。あと、僕は不知火じゃないよ」


芽衣の両手両足が飛ぶ。血で壁が真っ赤に染る。周囲の名画や骨董品はまとめて砕け散るか、その存在を塗り潰されるかのように赤に塗り替えられてく。


「僕は、十六夜。十六夜秋夜って言うんだ。二度と間違えないでね?まぁ2度目はないけど」


不知火……秋夜がこちらに振り向くと同時に、芽衣もバラバラに散らばる。次は私の番か……逃げれそうにないな。

不思議と落ち着いた気分を味わいながらその時が来るのを待つ。


「……澪。澪お嬢様。貴女今、興奮してるでしょ」

「……何を言ってるのか分からないわ」

「そんな恍惚とした表情で強気な事言われても…」


いい、確かに興奮している。人が死んだ。鮮やかに。返り血の一滴も浴びずに人を殺した。綺麗だと思った。美しいと思った。思ってしまった。


「貴女は愛を知らない」


そう。母には早々に棄てられ、父には政治のための道具として見られ、執事やメイド達には自分の出世の道具と思われている。確かに愛なんてものは知らない。漫画や小説。御伽噺みたいなあんなものはまやかしとしか思ってない。


「僕と同じだけど、僕とは違う。貴女のこの後を見てみたいと思うけど……此処でお別れだ」

「……えぇ、たったの3週間だけど楽しかったわ」

「最後にクイズの答え合わせだけ。あの言葉の答えは…………『殺したいほど愛しています』」


秋夜の言葉と共に視界が歪み意識が遠のく。赤みを増す視界に、私は死ぬのだな。と悟った。


「おやすみなさいお嬢様」


私はゆっくり意識を手放した。


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「はい。依頼は完了しました。報酬は手筈通り僕が7割。仲介人が3割でよろしくお願いします。1円でも足りなかったら請求に行くので」


秋夜が依頼人との電話を終えると横に女が現れる。あの屋敷の司書だ。相変わらずニヤニヤしながら横に並んで歩く。


「な〜秋夜。君明日から暫く仕事ないから久々に学園行ってきたら?」

「なんでだよ面倒臭い」

「もう特別講師として行きますって言ってあるから行ってらっしゃい」

「この畜生め」


仕事が終わってお金も入るから、久々に休暇でも取ろうかと思ったのに……はぁ仕方ない明日から暫くはまた学園でお世話になるか。学園長にお土産も買わなきゃな。あと、天狐組にはなにかお菓子でも買ってくか。

そんな事を考えてながら秋夜はふらふらと適当に歩き出すのだった。


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「生きてる……?」


澪は生きていた。ただ、もう親もいない。家もない。ただの1人の人として生きていた。


「それにしても……かっこよかったなぁ…秋夜様…」


澪はふらふらと本家を後にする。行く先も特に決まってないが、金もあるし……まぁ暫くは生きていけるだろう。暫く生きて……長生きして……殺し屋になろう。

そうだ。名前も変えよう。この屋敷で生きていた澪はあの時、秋夜様に殺された。今ここにいる私は……レイ。字を捨てよう。読みはいつか秋夜様に会えた時のために変えないでいよう。

……澪がそう決めたこの日から、死神と呼ばれる様になるまではそう遠くないが、その話はまた別のどこかで話そうと思う。

という事で番外編完結です。

澪の後日談的なものは今のところ書く予定はありませんが……気が向いたらいつか出すかもしれません。


番外編にしては、長かったかもしれませんが、読んでいただきありがとうございました。

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