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⑼『生命の抽象化』
⑼『生命の抽象化』
㈠
生命に関する、眩暈など、有って無いようなものなのである。思想の根源にある、幸福追求に関する、自己の延命としての他者への、また、他世界への還元は、まさに、生命を抽象化した後に残る、叙述主体的文章に、克明に印字されるだろう。
㈡
生命の抽象化、それは、一見すると、生命とは程遠い気がする。何も、無理に生命を抽象化する必要はないのだ。しかし、文脈の連なる、小説的評論において、実験的に、また、現実的に、抽象化しておくことは、自己という一つの存在を、残すことに他ならないからである。
㈢
ジーニアスの消失に、生命の抽象化は、酷似している。元来、ジーニアスとて、生命を抱く一つの存在現象であるから、ジーニアスも、生命の一部であることは、明白である。ならば、ジーニアスをも抽象化することになるから、皆平等の人間存在に立ち返った時、生命は簡単に、抽象化される訳である。