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アンセム・オブ・アサシン  作者: 海幸 マグ郎
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予兆

 

「ねぇ、おじいちゃん。いつもみたいに勇者様の昔話を聞かせてよ!」

暗い闇に包まれる夜、かすかに光が灯る一つの家屋の中で少女の声が響く。

「おや、またあの話が聞きたいのかい?もう何回も話してやっただろう。」

「だって、あのお話聞かないと、私、眠れないんだもん。」

少女は足をばたつかせながら、少し拗ねたように言った。彼女の大きな瞳が老人の顔を見つめる。

「わかったわかった。じゃあ、そこに横になりなさい。」

老人はそういうと、少女を小さな布団に横たわらせ、毛布をかけ、隣に座り直した。軽く咳払いをした後、彼をとある物語を語り始めた。

「昔々、この国がまだ荒れ果てた土地であった頃、この世の中では神々による戦が繰り広げられていた。」

 老人はいつもの決まり文句で話を始める。少女は目を輝かせながら話に聞き入っていた。

「神々による戦は壮絶なものだった。彼らのその大いなる力によって、彼ら自身が生み出した大地をも破壊し、彼らの子孫でもある生物たちの多くは滅びてしまった。そんな戦を終わらせた神が…」

「戦いの神、アレスでしょ!」

 少女が勢いよく言うと、老人はニコッと笑って話を続ける。

「その通り。アレスは神々の戦を制し、広大な土地と、五つの強力な神器を手に入れた。彼はその土地を完全に支配し、豊かにするため、五つの神器に、それぞれべつの思考と、その器となるものを与えた。こうして生まれた五つの生命体が、私たちの最も古い祖先と言われているんだ。」

 少女の目が少しづつ閉まってきているのを横目で見ながら、老人は話し続ける。

「アレスから土地の支配を命じられた神器たちは、それぞれの持つ思考にそって支配を行おうとした。あるものは生物の命を尊重し、またあるものはアレスのように戦を好んでいた。彼らはそれぞれべつの地域を支配下に置き、独自の生態系を作っていった。そこには新たな生物が生まれ、文化も発達した。そうして誕生したのが、今この土地にある五つの国というわけだよ。」

 老人が毛布の下を覗き込んだときには、少女はすでに眠ってしまっていた。

「まったく、毎回話が終わるときに眠るのはどうしてなんだろうね。」

 老人は苦笑いし、立って外を覗くと、見えるのは暗闇の中で光っているいくつかの星だけだった。

「…きっといつか、この子もこの物語の続きを知ることになるんだろうねぇ…。」

 老人は小さな声でそう呟くと、少女のそばに横になり、ゆっくりと目を閉じた。


 少女らがいつも通りの夜を過ごしている頃、各地では様々な者たちが、それぞれの目的を持って動き始めていた。ある者はすべての支配のため、ある者は人々の幸せを守るため、またある者は本当の強さを得るため…。

 しかし、平坦な土地に一人たたずむ少年は違っていた。彼の周りに人気はなく、土地には所々に草が生えているだけである。自分が何者なのか、何故ここに立っているのかすらわからない。唯一はっきりしているのは、自分が本来ここにいるべき存在ではないということ。そして、それを承知の上で自分をここに送り出した人物がいるということ。彼の名前はなんだったか。思い出そうとすると頭が痛くなる。なんだがぼんやりする。まるで長い眠りから先ほど目覚めたようだった。

「…行かなきゃ…進まなきゃ…。」

 どこに行くべきか、そもそも何をするのかすらわからない。しかし、心の中にある「前へ進め」という言葉が自分を焦らせる。自然と足が前へ進む。目的も何も持たない少年は、おぼつかない足のまま、荒れ果てた土地を前に進み始めた。



 小鳥のさえずりで目が覚める。さえずりと言っても優雅なものではない。朝から餌の取り合いをしているせいか、けたたましい鳴き声が睡眠を妨げたそうだ。

 まだ少し眠いのを我慢して体を起こす。家にはすでに親はいないようだ。二人とも今日の準備で朝から出払っているらしい。今日は我が家にとって、主に自分にとって、とても重要な日なのである。

 自分のすぐそばで寝ていた弟のカオルが自分の下半身に覆いかぶさっている。出来るだけ優しく足を生き抜きながら、顔を洗うために外へ出る。

 空は晴れ渡り、鳥が空を舞っている。いつも通りの朝だ。少し違うところと言えば、いつもより少しだけ多くの人が仕事をしていることだろうか。

 家のすぐそばにある井戸へ行き、桶いっぱいに水を溜めて顔を洗おうとしたとき、自分の顔が水面に映った。少しだけ薄い眉毛の下の大きな目が自分を見つめている。特に特筆すべき点があるわけではないが、18歳の少女には珍しい、落ち着いていてどこか涼しげな顔立ちである。

 自らの顔をまじまじと見つめる自分をおかしく思い、気を取り直して顔を洗う。冷たい水のおかげで目が覚め、布で顔を拭いていたところに聞き慣れた低い声が聞こえた。

「おはよう、ミズキ。起きるのが少し遅いんじゃないのか?」

「仕方ないでしょ。昨日の夜遅くまで、今日のために鍛錬してたんだから。」

「ふふ、どうかしら。今日のことが不安で眠れなかっただけじゃないの?」

「ちょっとお母さん!」

「ははは!確かにミズキは昔からよく緊張する子だったからなぁ。」

「ちょ、お父さんまで…。」

 村の近くの森から今日の準備の手伝いを終えて帰ってきた両親にからかわれる。まったく、我が子の人生で最も大切な日ともいえるようなこの日に、緊張感がまるでない。しかし、いつも通りのやりとりが不安な心を幾分か軽くしてくれた。

 私の住む村、アガレット村には、18歳になると剣士としての資質を問う試練を受けるという古くからの風習がある。試練を達成し、村の者たちに力を認められたものだけが、村の外へ出ることを許されるのだ。もし試練を達成できなければ、次の年の試練の日までは村で鍛錬に励まなくてはならない。アガレット村が位置する国、「剣の国」では剣士としての腕が重要視され、力のない者に未来は無いからである。

 そして今日こそ自分の18歳の誕生日であり、試練の日でもある。試練の内容は毎年変わらない。村が誇る剣士5人と連続で模擬戦をし、すべてに勝利することで試練達成となる。この試練は村のすぐ隣にある森の奥の神殿で行われる。そのため、両親は朝早くから準備のために家を出ていたのだ。

 親の声によって起きたのか、家の戸からカオルがまだ眠そうに目を擦りながら出てくる。キョロキョロと辺りを見渡し、こちらに気づくと表情を明るくして走ってきた。

「お父さん、お母さん、あとお姉ちゃんも、おはよう!」

「あとってなんだ、あとって。」

「おはよう、カオル。早く家を出る準備をしてしまいなさい。今日はお姉ちゃんの大切な日なんだから。」

「はーい。まあ、試練が達成できなくても僕が励ましてあげるから、せいぜい頑張ってきてね。」

「このガキ…朝から私に抱きついてきてたくせに…。」

「カオル、あんまりお姉ちゃんをからかわないの。ほら、早くしないとお父さんと一緒に行ってしまうわよ。」

「はーい。」

 自分から逃げるように家の中に入っていったカオルは、身支度を整えるとすぐに出てきた。まあ、身支度といっても大したことはしていないのだが。

 家族全員で森へ向かって出発する。道中、村の人々から声をかけられる。

「よぉミズキちゃん、今日は気張ってけよぉ〜。」

「ミズキー!頑張れー!」

「ミズキねーちゃん、頑張ってね!」

 小さい頃からお世話になった人や友人、子供たちに声援を送られながら森へと向かう。この村の人々ら全員が助け合いながら暮らしているため、みんなで一つの家族のようである。無理もない。この村はその位置するところにより、常にそれなりの危険と隣り合わせなのである。

 この世界に広がる5つの国のうち、それぞれ東、西に大きく領土を広げる「剣の国」と「槍の国」は昔から敵対関係にある。そのため、この両国の紛争は各地で起こっており、特にこのアガレット村は「槍の国」から我が国に攻め入るための道中の通過点になっている。毎月何度か送られてくる「槍の国」の兵たちとの戦闘は避けられない。「剣の国」への牽制が目的であるため、さほど多くの兵が送られてくるわけではないが、被害が無いわけではない。酷い時には、両陣営に死者が出てしまうときもあるのだ。

 そういった理由もあってか、村の人々は互いを尊重し合いながら暮らしている。急に人が亡くなっても、村の人々が協力し合うことで村に大きな被害が出ないような関係が築かれているのだ。自分も10年前、祖父が亡くなってしまったときにこの関係性の重要性を深く感じた。昔よく伝承や神話について話してくれた最愛の祖父を亡くしたとき、我が一家は大きな喪失感に苛まれたが、村の人々の気遣いによって救われたのである。

 そんな村の人々への感謝の気持ちを抱きながら森の中を歩いていくと、奥に人だかりができており、こちらに気がついた一人の少女が手を振って自分たちを呼んでいる。彼女の名前はフミカ。自分の古くからの友人であり、今日共に試練を受ける同士でもある。

「おはよ、ミズキ。昨日はよく寝れた?」

「まあまあね。あなたは?」

「寝れるわけないじゃない!緊張で今も心臓がはち切れそうだわ!」

 肩の辺りまで伸びた柔らかそうな髪を揺らしながら、興奮を隠しきれない様子でフミカは言った。彼女の明るさには幾度となく助けられてきた。彼女と共に試練を達成し、共に外の世界を見てみたい。

「お嬢さん方、そろそろ試練を始めてもいいかね?」

「はっ、長老。すみません。気づかなかったものですから。」

「ふふ、いいんじゃよ…ワシは若い頃から影が薄くての…存在感がないことはしっかり理解しておる…。」

「ちょ、おじいちゃん!孫の晴れ舞台なんだからいつもみたいに勝手に一人でショック受けるのやめてよ!」

「ふふ、そうじゃな…さて、気を取り直して。」

 孫であるフミカからの言葉を受けて、この村の長老であるジンベイは声を張り上げた。

「これより、アガレット村の古くからの風習に従い、若者がこの「剣の国」の未来を背負うだけの資質があるか見極める!」

 神殿に集まった村の者たちの間から歓声があがる。とうとう始まった。試練が行われるのだ!

「今年試練を受けるのは2人の若者である。一人目は我が孫、フミカである!幼い頃から鍛錬を積んできた剣術、村の外でも通用するかどうか見極めさせてもらう!…それにしても、フミカももう18歳…この前まではあんなに小さかったのに…。」

「おじいちゃん!」

「コホン…さて、もう一人はケンゾウの娘、ミズキである!父のもと、日々鍛え上げた剣の技、どれほどのものか見極めさせてもらう!」

 自らの紹介がなされ、体が震えた。これが武者震いであることを願い、神殿前に準備された広間へ出る。

「それでは早速、試練を執り行うこととする。まずはフミカ。」

「は、はい!」

「これからフミカには、この村の剣士5人と連続で模擬戦を行ってもらう。5人連続で倒すことができたら試練達成とし、村の外へと旅立つことを認めよう。」

「よーし!」

 フミカが自分の頬を叩き、気合を入れる。彼女は広間の中央へ行き、渡された木刀を抜く。

 一人目の男が出てきた。この村の木こりをしている若い男である。がっしりとしたがたいから繰り出される一振りは強烈であり、この村の中でもかなり腕の立つ剣士だ。

 両者が木刀を構えて向かい合う。今、第一試合目が始まろうとしていた。

「それでは、試練第一試合、始め!」

 ジンベイの掛け声により試合が始まった。木こりの男が先に仕掛ける。木刀を大きくふりかぶり、フミカへ向けて振り下ろす。とても女性の力では防ぎきれない一振りであった。

 しかし、フミカは木刀を自分の方へ折り曲げ、相手の木刀と接するようにしてこの一振りを受け止めた。そのまま体をうまく動かし、威力を緩和しながら受け流す。この戦い方は彼女の得意とするところだ。腕力の不足をうまく補うやり方である。

 男の後ろに回り込んだフミカは低く構え、背中に突きを叩き込もうとした。しかし男は瞬時に体を翻し、連続してニ打目を繰り出す。この一撃をまたもフミカは受け流す。まるで踊っているようだ。

 彼女はまだ幼い頃に父親を亡くしている。「槍の国」との戦争時に命を落としてしまったらしい。息子を失ったジンベイは、相手の攻撃を受け流し、守りに徹しながら勝機を見出すこの戦い方をフミカに教え込んだ。もう肉親を失いたくはないという気持ちの表れだったのだろうか。そしてその戦い方が今の彼女の強さを生み出している。

 木こりの男に攻撃を全て受け切り、隙を窺う。一撃で全てを終わらせる豪快さはないが、踊るように相手を翻弄するこの戦い方は目を引くものだ。

 男の体力が削れ、次の動作へと移るまでの少しの遅れをフミカは見逃さなかった。すぐさま男の横腹に鋭い突きを見舞い、広間の端まで吹き飛ばす。ここで、ジンベイの声が神殿に響いた。

「そこまで!第一試合、フミカの勝利!」

 周りの人々がどっと盛り上がる。試練の一つを達成したのだ!あれだけ動いていたのに、フミカには息を切らしている様子はない。彼女の体力は本当に底知れない。

「ふぅー、一試合目から厳しいなぁ〜。」

「何が、厳しいなぁ、だよまったく。ちょっとは手加減してくれてもいいじゃねぇか。端まで吹っ飛ばしてくれちゃってよ。」

「あはは、ごめんごめん。よぉーし、次も勝つぞぉ〜!」

 この様子だと彼女に心配は必要ないようだ。彼女の次に行われる、自分の試練に集中しようと考えだしたその時だった。

 カランカランカランカラン

 大きな鐘の音が辺りに響き渡った。この音は…

「長老!大変です!」

 村から男が顔を真っ青にして走ってきていた。

「どうした!何事だ!」

「奴らです!「槍の国」からの敵襲です!」

 急に張り詰めた空気が場を流れる。

「なに!奴らがきたのはつい一週間まえだぞ!こんな短い期間に連続で進軍してくるなんて…」

「しかも奴ら、いつもと様子が違うんです!」

 男は震える声で続きを話す。

「数が…こっちへ向かってる兵の数がいつもとは全く違うんです!」

「一体何人だというんだ!」

「それが…」

 二人のやりとりを固唾を飲んで見守る。男の口からは、予想だにしない言葉が出てきた。

「や、約…150人です…」

「な、……」

 耳を疑う。150人だって?今まででは多くても一回に送られてくる兵は20〜30人程度だった。本格的にこの村を攻め落としにきたのか。

 しかし、そのような動きを「剣の国」の政府が見逃すだろうか。この村は「槍の国」からの進行を妨げる関所であり、この国にとっては重要な場所である。援軍どころか村人への注意喚起すらないのは不自然に思われる。

 とりあえずこの場をどう乗り切るかを考えなければならない。村の戦えるもの全員を集めたとしても、150人には遠く及ばない。しかしあの連中が降伏をしたところで、こちら側の命を助けてくれるとも考えられない。

 その場にいる全員が冷静さを欠いているときでも、ジンベイだけは落ち着いていた。

「…お前は急ぎ村へ戻り、戦える者を集め戦の準備をしろ。子供や戦えない女は食料を持たせて山へ逃すんだ。」

「わ、分かりやした。」

 男は駆け足で村へ戻っていく。彼の後ろ姿が見えなくなる前に、ジンベイはこちら側に振り返り、声を張り上げた。

「諸君、話は聞いたな。今この村には彼の国からの軍勢、150人もの兵が向かっている。この村の全勢力をぶつけても迎撃するのは難しい。」

 重苦しい空気が漂う。だが彼は続けた。

「しかし、ここで降伏をしても全員が助かる保証はない。よってワシは、この村の村長としての誇りを守るため、剣を取り、奴らと戦おうと思う。可能な限り奴らに抗い、一人でも多くの村人を守りたい!ワシと共に戦うという者は名乗り出よ!愛する者を守るために、この戦いに身を投じる覚悟がある者は剣をとれぃ!」

 試練が始まる前より数倍は大きい歓声が広間に響き渡る。その場にいる誰もが闘志を燃やしていた。

「よし!では一度村へ戻り、戦の準備を進める。出し惜しみはいらん。今持つ最も良い剣を使うのだ!」

 村人たちは続々と村へと向かって動き始める。自分のもとへ父と母、カオルが駆け寄ってくる。

「ミズキ…こんな日に大変なことになってしまったな…。」

「お父さん…。」

「お前はお母さんとカオルを連れて山へ逃げなさい。フミカちゃんも一緒にだ。お前たちがいれば道中も安心だ。」

「お父さんは?お父さんはどうするの?」

「俺はジンベイさんたちと一緒に奴らと戦うよ。」

「だめよ!そんなの絶対にだめ!それなら私も残るわ!」

「ミズキ…それはできないよ。」

「どうしてよ!私強くなったわ!もう一人の剣士として戦えるわよ!」

「ミズキ!頼む、いうことを聞いてくれ!お前たち若い世代は残りの村の人々を引っ張っていかなければならない。それにもしお前たちが危険な状況にあっても、戦場じゃ助けにいけるかどうかわからないんだ。そんな場所に君たちを連れていくわけにはいかないんだよ。」

「でも…もしお父さんが…。」

「大丈夫だ。俺を信じろ。そう簡単に死ぬつもりはない。もしもやられそうになったら、どんなに惨めでも逃げ帰ってきてやるさ。」

「…お父さん…。」

 何もできない自分に腹が立つ。ここまで自らの無力さを呪ったことはない。

 向こうでフミカとジンベイが話しているのに気づく。フミカは手で目を覆って下を向いている。泣いているのだろうか。ジンベイは彼女の肩をそっと抱き寄せ、頭を撫でている。

 母もカオルも不安そうに村の方を見ている。父がいなくなったら、この二人を守れるのは自分だけなのだ。

「…わかった。ここからお母さんたちと一緒に山へ逃げるよ。その代わり、何があっても絶対に生きて帰ってきてね。」

「…あぁ、勿論だ。」

 ニッと笑って父は言う。こんな時でも屈託のない笑顔を作れる父の強さには敵わない。

「そうと決まればすぐにここを離れなさい。あちらも…話はついたようだな。」

 ジンベイがこちらにフミカを連れてくる。彼女も思うところはあるだろう。しかし、目にはすでに光が戻っていた。

「フミカ…。」

「…うん、大丈夫。早く村へ行って、他の人たちと合流しよ。」

「…うん。」

 ジンベイと父は互いに頷き合い、村へと走っていった。私たちはその場にあった最低限の武装を整え、村とは反対方向にある山へと向かった。村から山への道はこの森ともう一つあり、残りの村人はおそらくそちらから山へ向かっているだろう。

 騒がしい村人の声を背に受けながら、私たち4人は山へと向かって走り始めた。


 …騒がしい。山の麓がやけに騒がしい。麓には確か小さな村があった。しかし、毎年この時期にある催し物とは少し違った騒がしさ。楽しみなど感じられない。不安、焦り、恐怖…。この騒がしさは一体何なのか。

「………………。」

 …この騒がしさの原因が分かったら、僕はまた一歩先に進めるのだろうか…。「目的」を成し遂げることに近づくのだろうか…。

 …分からない、分からないが…。


 少年は座っていた岩の上に立ち上がり、山からの景色を見渡す。今ここで、若き「剣士」たちの運命が交差しようとしていた。


 拙い文章でしたが、最後まで読んでいただきありがとうございます。投稿する頻度については詳しく決めておりませんが、気長に読んでいただけると幸いです。

 

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