表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっちゃん冒険者の千夜一夜  作者: 金暮 銀
バルスベリー編
495/548

第四百九十五夜 おっちゃんと白の寺院(前編)

 おっちゃんたち三人は、村の危機を救った英雄として歓迎された。

 歓迎の後、イサベルは残りの詩の手懸りを探すために、セサルは白の寺院とアプネの神殿の情報を得るために、緑の寺院に籠もる。


 おっちゃんだけはやることがないので、気儘に村で過ごした。

 村で雑用をして日銭を稼いでも良かった。だが、英雄の肩書きが邪魔をして、働くことはできなかった。

(宿代が要らんくて、飯も出る。せやけど、暇やなあ……)


 一週間が経過した頃に、セサルが気分の良い顔で報告に来た。

「おっちゃん、アプネの神殿を知るための。最後の寺院の場所がわかりました。そこは、白の寺院と呼ばれています」

「そうか。やっと判明したか。長かったな。それで、白の寺院はどこにあるんや?」


 セサルの顔が一転して曇る。

「白の寺院は、ダンジョンの『詩人の岩窟』の地下にあります」

「最後の寺院は。ダンジョンの中かー、きっいところにあるのう」


 セサルが厳しい顔で警告した。

「しかも、かなり奥のほうにあります。おそらく、上級冒険者を六人ぐらい揃えて挑んだほうがいいでしょう」

「もしやで、白の寺院まで辿り着けたとする。そこで何を調べれば、アプネの神殿に辿り着けるんや?」


 セサルが真剣な顔で教えてくれた。

「文献によれば、『詩人の勲章』を持って、白の寺院にある『白亜の頃に』の絵を調べれば、道は開ける、とあります」

「そうか。あとはダンジョンの奥で絵を知らべればええだけか。よし、ほな、パパエルはんと話しをして、アイス・ワイバーン出してもらうおう。バルスベリーの街に戻ろうか」


 セサルが申し訳なさそうな顔で詫びた。

「勝手を言ってすいませんが、私はここに残ってもいいでしょうか?」

「どうしたんや? 何か気になることでもあるんか? あるなら教えてや」


「イサベルの調べ物が難航しています。できれば、塾の休みが終わるまで手伝ってあげたいのです」

「わかった。かつての仲間の手伝いをしたい気持ちは、わかる。なら、一足先にバルスベリーの街に戻るわ」


 セサルは深々と頭を下げた。

 おっちゃんは、パパエルに挨拶に行く。

「今日まで色々とお世話になりました。バルスベリーの街に戻りたいんやけど、次に街に行くのはいつになりますか?」


 パパエルは気のよい顔で申し出た

「二日後に売掛金の回収にバルスベリーまで行くから、送っていってあげるよ」

「ラッキーやわ、ほなお願いします」

 二日後、おっちゃんはアイス・ワイバーンに乗せてもらい、街に帰ってきた。


 前に使っていた宿屋で、前金を支払い宿を確保する。

 それから、冒険者ギルドに顔を出す。

「ただいま、ローサはん。飛翔族の村から無事に帰ったで」

 ローサが笑顔でおっちゃんの帰還を喜ぶ。

「お帰りなさい、おっちゃん。捜し物は見つかった?」


「いよいよ、佳境(かきょう)や」

「そう、よかったね」


「そんで、ちと、聞きたいんやけど。『詩人の岩窟』に挑んでいるパーティーで一番深いとこまで行けるのって、誰?」

 ローサがきょとんした顔で質問する。

「『鋼の詩』かしら? でも、どうしたの? そんな情報を訊いて」


「『詩人の岩窟』に白の寺院と呼ばれる場所があるんよ。『鋼の詩』ならそこまで行けるか、知りたい」

 ローサの表情が曇った。

「わからないけど、『鋼の詩』から白の寺院の話を聞いた記憶がないわ。だから、簡単には行けないと思うわ」


「そうか、それは残念やな。ちなみに、白の寺院までの地図ってある?」

 おっちゃんは『鋼の詩』に白に寺院に連れて行ってもらうつもりはなかった。ただ、他の冒険者が白の寺院に到達しているかが大事だった。


 ローサが難しい顔をして、リストを確認する。

「御免ね、おっちゃん。そこまでの地図はないわ」

「ないなら、しゃあないわ。何か考えよう」

(人間が頻繁に来る場所やないなら、ええやろう。トロルの姿で行けるかもしれん)


 おっちゃんは、その日はゆっくりと休む。

 翌日、おっちゃんはトロルの姿で、裏口から『詩人の岩窟』を訪ねた。


 暇そうな顔をしたギロルが、すぐに出てきた。

「おっちゃんか。今日は何も持ってきてないようだけど、商売の話かい?」

「へえ。ちょっくら、絵画に興味がありまして、白の寺院にある『白亜の頃に』の題名が着いた絵を、見たいんですけど」


 ギロルが意外そうな顔をする。

「絵画に興味があるなんて、珍しいね」

「商売柄、絵にも興味がありまして」


 ギロルが驚いた顔をする。

「何? もしかして、画商もやっているの?」

 曖昧(あいまい)に頭を下げて誤魔化す。

「少し(かじ)った程度には」


 ギロルが残念そうな顔で拒絶する。

「『白亜の頃に』かあ。そんな絵が、白の寺院にあった気がするなあ。でも、あれは、御館様の物で、手放す気はないって口にしていたからね」

「なら、見せてもらうだけ、見せてもらえませんか?」


 ギロルが素っ気ない態度で、やんわりと告げる。

「白の寺院には、拝観料を払えば入れる。だけど、拝観料は高いよ」

「おいくらでっか?」


 ギロルがちょっとだけ考える顔をしてから、さらりと回答した。

「マジック・ポータルを使うから、二万ダンジョン・コイン」

(絵を一枚見るだけの金額にしては、高い。けど、払えない額ではないな)

「そうでっか。ほな、拝観料を払うんで、見せてください」


 ギロルが悪いねとばかりに申し出る。

「あと、絵は白の寺院のどこにあるか、わからない。だから、適当に捜して見てもらうことになるけど、いいかな?」

「ええですわ。勝手に探して、見せてもらいます」


 おっちゃんは裏口から入って、石造りの通路を進む。

 途中、二ヶ所の隠し扉を通り抜けて、白く輝く魔法陣の前に案内された。

 魔法陣の前でギロルに請求書を提示されたので、サインをして支払いを済ませる。


 ギロルが心配した顔で忠告した。

「この先に白の寺院があるよ。あと、白の寺院はダンジョンの中にあるから、冒険者には気を付けてな」

「わかりました」

 おっちゃんは魔法陣に乗った。すると、体が浮遊する感覚を覚えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ