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おっちゃん冒険者の千夜一夜  作者: 金暮 銀
ミンダス島編
452/548

第四百五十二夜 おっちゃんと威圧外交の真相

 翌日、郵便配達に見せかけて《陸のカモメ亭》のガイルを訪ねた。

《陸のカモメ亭》の一室でガイルは会ってくれた。ガイルは苦い表情をしていた。

「おっちゃん、いいところに来てくれた。俺も話がしたいと思っていたところだ」

「何や? 使節団の動きを何か、知っているんか?」


 ガイルが神妙な面持ちで頷く。

「昨夜、こっそり泳いで船に上がって、情報交換をしてきた」

「イルベガン参事会は威圧外交に舵を切ったんか?」


 ガイルが暗い顔で、首を横に振る。

「そうじゃない。ドンゲルの失敗により、各ダンジョンの足並みが乱れた。それで、独自交渉に切り替えようとしたら、船が五隻も出る結果になった」


 おっちゃんは窓から湾内を見る。船は帆船だが、船種に統一感はなかった。

「あの船団、魔都イルベガン参事会が五隻を出したんやなく、個別のダンジョンから一隻ずつ出したら五隻になったんか? 交渉窓口が五つもあるって、まずいで」


 ガイルが表情を歪めて内情を語った。

「俺も事態のまずさはわかっている。各船の使節もまずい事態を理解している。だが、どこのダンジョンも、引き下がる気はない」

「最悪の交渉やな。これは、城がまともに機能していても困るで。ちなみに、どこのダンジョンが船を出してきたんや?」


「『冥府洞窟』『タタラ大洞窟』『海洋宮』『ラタン砂塵宮』『ダブダル廃城』だ」

「『冥府洞窟』も個別にって、あかんやろう。骸はんの支持母体が独自路線に踏み出したら、参事会もバラバラになるで」


「船に乗っている奴らから聞いた話では、参事会は空中分解寸前だそうだ。ひょっとしたら、すでにバラバラになっており、さらに軍艦が増えるかもしれん」


 おっちゃんは苦々しく思った。

「骸はんの手腕では、参事会を纏め切れんかったか……」


 ガイルが渋い顔で訪ねる。

「それで、おっちゃんのほうは、何かわかったか?」

「お城では『酒神の像』を使って、『重神鉱』や『霊金鉱』を作っとる。そんで『酒神の像』を使える女王様が病気になって、鉱物資源の生産がストップしておる。せやから、ミンダス島は輸出したくても輸出できんのや」


 ガイルが暗い表情で相槌を打つ。

「そんな状態だったのか」

「さらに悪いことに、大陸から来た暴飲の魔女コンリーネが暗躍しておる。これが、王家を潰そうとしておるんや。そんで、コンリーネはすでにお城の中に潜伏しておる」


 ガイルが暗い表情で意見を述べる。

「かなり状況は悪いな。王家を潰そうと思っているなら、この機会を利用して開戦を目論み王家を潰すな」

「そうやねん。コンリーネにとっては、足並みが揃わず、事情を知らない軍艦は渡りに船やねん」


 ガイルが真剣な顔で提案した。

「なら、コンリーネを城から追い出すか?」

「追い出そうにも、コンリーネが城にいるとしかわからん」


 ガイルが自信ありげな顔で語る。

「コンリーネが城に潜伏しているのなら、誰に化けているかはわかる。商務大臣のアイオロスに化けている」


「なして、そんなことがわかる?」

 ガイルが笑って答える。

「おいおい、俺だって遊んでいたわけじゃないんだ」


「頼もしいのう。なら、本物はどこにおるん?」

「本物のアイオロスは、城の地下牢に幽閉されている。場所もだいたい目星が付いている」


「よし。なら、城に乗り込んで、コンリーネと対決しよう」

 ガイルが真剣な顔で提案した。

「今日はまずい。明日にしてくれ。明日なら、俺の友人たちに話をつけて、アイオロス救出の算段ができる」


「よっしゃ。なら、明日やな。わいは明日、イルベガンの使節として城に乗り込む」

「コンリーネと直接対決だな」


「わいがコンリーネと会談をしている場所に、本物のアイオロスを連れてきてくれ。そこでコンリーネの正体を(あば)いて、コンリーネを城から追い出そう」


 ガイルが眼に力を入れて発言する。

「わかった。では、急ぎ準備をする。明日の昼にまたここに来てくれ」


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