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おっちゃん冒険者の千夜一夜  作者: 金暮 銀
魔都イルベガン編
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第四百九夜 おっちゃんと肉騒動

 翌日、昼過ぎに、おっちゃんは起きる。

 酒場でリンダを捕まえて聞いた。

「あんな、この街で喰うたらいかん食材ってあるの?」


「ないわよ。ただし、取引が禁止されていたり、解体が禁止されているから、実質的に食用禁止の食材はあるわね。空を飛ぶ竜や、龍の肉がそうね」

「あら、噂をすれば」とリンダが視線を酒場の入口に向けると、黒い制服を着たモスキル族の役人がやってくる。


 モスキル族の役人が、おっちゃんの前に来て身分証を見せる。

「骨・血液・食肉監視局の所属でキートンといいます。少しお話をよろしいでしょうか」


 おっちゃんはキートンに酒場の密談スペースに連れて行かれた。

 二人になると、キートンが真剣な顔で切り出す。

「おっちゃんさんは昨日、リリンの店先で龍の肉を売っていましたね」


(やはり、あの肉は、問題のある肉やったんやな。でも、もう証拠はみんなの腹の中や、逃げ切れるやろう)

「わいが手に入れた肉は二足歩行する恐竜の肉ですわ。空を飛ぶ竜の肉とも龍の肉と違いますよ」


 キートンがじろりと、おっちゃんを見る。

「まだ、肉は残っていますか?」

「残っていません。昨日、街の人間と全て食べてしまいました」


 キートンが冷静な顔で尋ねる。

「では、肉はどこで手に入れました」

「肉はジュミニはんのところで、恐竜を捕まえた報酬として貰いました」


 キートンが冷静な顔をして同行を求める。

「そうですか。なら、これから一緒に、ジュミニさんのところに一緒に行ってもらえますかな」

「ええですよ。ジュミニはんが証言してくれれば本当やと証明できる」


 おっちゃんはキートンと一緒に、ジュミニの研究施設に行った。

 呼び鈴を鳴らすが、ジュミニは出てこなかった。

「留守ですかね」


 キートンの顔が険しくなる。

「待ってください。血の臭いがします。これは、オーガの血の臭いだ」


 キートンは魔法で開錠すると、扉を開けた。

 中はジュミニの研究室で、用途不明な機械が置いてあった。

(色々な装置があるのう。揺り篭に、孵卵機、遠心分離利器に、浄水器か)


 キートンが下の階に行く階段を覗くと、階段を駆け下りていった。

 階段を下りて行ったキートンの声が聞こえる。

「ジュミニ氏を、発見しました。地下一階で血溜まりの中で倒れています。はい、すでに亡くなっています。死後硬直の具合から、死後二十四時間以内だと思われます」


 キートンはどこかに魔法で連絡を取っているようだった。

 おっちゃんは外で待たされる。

(なんや、厄介な事態になったのう。まさか、殺人犯と誤解されるとかごめんやで。余計な内容はしゃべらんとこ。容疑者になった孤立無援や)


 一時間後、鑑識員を連れた衛兵のオーガが来て、キートンと話をする。

 おっちゃんはドアの隙間からそっと中を覗いた。


 衛兵とキートンの会話が聞こえる。

 キートンが苦い顔で告げる。

「あとはお任せしますが、これは厄介な事件になりますよ」

「犯人の目星はついているんですか?」


「いいえ、付いていません。先ほど私が降霊術でジュミニ氏の魂を呼び出して、犯人を訊こうとしました。ですが魂が出てこない」


 衛兵の顔が曇る。

「被害者に犯人を訊けないとなると、まずいですね」

 おっちゃんがドアの向こうで聞き耳を立てていると、キートンが会話を切り上げてやってくる。まずいと思って、ドアから三歩の距離を置く。


 キートンがドアを開けて、おっちゃんを見つけると真剣な顔で尋ねる。

「貴方が最後にジュミニ氏と会ったのは、いつですか」

「へえ、昼前には、リリンはんの肉屋にいたので、昨日の午前中ですわ」


 キートンが思案する顔をする。

「死亡推定時刻からすると、ぎりぎり外れますね。ジュミニ氏の家でなにか不審な人物を見ませんでしたか」

「不審かどうかわかりませんが、わいの前にジュミニはんを訪ねてきている人物がいました」


「それは、どなたですか? 知っている人ですかな」

「オーガのオーリアはんですわ。わいが帰ったあともオーリアはんは残っていたので、ジュミニはんと最後に話した人物は、オーリアはんかもしれませんね」


 キートンと衛兵が意味ありげに顔を見合わせる。

「何ぞ、ありましたか?」


 キートンが取り繕う。

「何でもありません。とりあえずは、今日のところはお帰りいただいて結構です。また何かありましたら、お話を訊くかもしれませんが」

 おっちゃんは帰ってよいと許可されたので、モンスター酒場に戻った。


 リンダが晴れやかな顔で寄ってくる。

「無事に帰ってきたところを見ると、龍の肉の密売容疑は晴れたのね。よかったわね、おっちゃん」

「よくないよ。何か、面倒な事態になった」


 リンダが興味津々の顔で訊いてくる。

「あら、何が起きたのか、気になるわね」

「ジュミニはんが何者かに殺害されておった。しかも、降霊術で魂を呼び出そうしたら、魂が出てこんかったんやて」


 リンダが顎に手をやり、考える仕草をとった。

「魂が持ち去られたのなら、厄介だわ」

「相手が上級の死霊術師やからか?」


 リンダが難しい顔で見解を述べる。

「魂を持ち去る術を使える魔術師は、ここ魔都イルベガンに何人もいるわ。でも、問題なのはその魔術師のほとんどが、所属が街の管理者である『冥府洞窟』の職員なのよ」


「なるほどの、龍の肉の密売の裏には、権力者が絡んでいるのかもしれんのか」

「そう、それも、おそらく、上のほうの存在よ」

「あまり関わりに合いになりたくい話やのう」


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