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おっちゃん冒険者の千夜一夜  作者: 金暮 銀
オルトハルツ国
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第四百夜 おっちゃんと後継者を巡る会議

 ヒエロニムスが帰った翌日、おっちゃんは、リオン、ハワード、セバルを呼んだ。

 執務室で三人を前に、ヒエロニムスからの養子縁組みの話をする。


 リオンがまず怒った。

「そんな話を持ってくるなんて、馬鹿げている。最初からヒエロニムスは俺たちに建国なんてさせる気はなかったという話か。だが、このまま従う俺たちではないぞ」


 ハワードも怒った。

「おっちゃん、養子縁組みの話は断ってくれ。いくらなんでも、ヒエロニムス国王の提案は虫が良すぎる。ここは俺たちの国であり、断じてヒエロニムスの物ではない」


「二人が怒る態度は、もっともや、せやけど、ここは小国や。レガリアが本気になったらいつでも潰せる」


 リオンが息巻く。

「なら、戦争も止む無しだ。たとえ滅びる結果になろうと、俺たちにも意地がある」


 ハワードも険しい顔で告げる。

「ここで、妥協すれば、次に何を要求されるかわからない。ここは断固、拒絶すべきだ」


 おっちゃんはセバルを見る。

 セバルは難しい顔をして告げる。

「俺もヒエロニムス国王の提案に頭に来ている。だが、おっちゃんに国王を頼むと決めた時から、後継者についても、おっちゃんに一任するつもりだった。もし、おっちゃんが養子を取って、王位を継がせると判断するのなら、俺は判断を尊重する」


 リオンが激高した。

「俺たちのために船を調達して、危険な島の探険に出向いた人間だから、俺はおっちゃんを国王に認めた。ただ単に王の息子だというだけで、国王に納まろうという人間を俺は認めない」


 ハワードも辛辣(しんらつ)な顔で告げる。

「信義がない人間と取引はできない。騙し討ちで国を乗っ取ろうとする人間とは、交渉すべきではない。する必要もない」


 リオンとハワードはひとしきり怒ると揃って執務室を出て行った。

 部屋にはセバルとエルマが残った。セバルは苦い顔で告げる。

「それで、どうするつもりだ、おっちゃん?」

「これ、おっちゃんが一人で決めてええんやろうか?」


 セバルは冷静な顔で告げる。

「ハワードは怒っているが、利を示してやれば妥協(だきょう)する」

「ハワードはんならそうかもしれんな」


「リオンだって、俺とハワードが説得に乗り出せば、表面的には折れざるを得ない。民の長たちも、最初は反発するが、時間を掛けて説得すれば、理解は得られるだろう」

「そうか。セバルはんの見立てでは説得が可能なんか」


 セバルが穏やかな顔で告げる。

「俺はニコルテ村で行き場のない我が民を受け入れてくれた時から、おっちゃんを信用すると決めた。おっちゃんのためなら、苦労は惜しまない」

「ありがとう、セバルはん。でも、本当にヒエロニムス国王は難題を持ち込んでくれたな」


 セバルが退出して、部屋にはおっちゃんとエルマだけになった。エルマがおずおずと申し出る。

「皆さんが触れなかった、ヘンドリック王子がやってくるメリットについてお話ししてもよろしいでしょうか」

「ええよ。何が得られるんや?」


 エルマが明るい顔で、はきはきした口調で告げる。

「まず、ヘンドリック王子がやって来る場合には、大量の持参金を持ってやってきます。このお金があれば、国内の整備が進みます。ヒエロニムス国王が存命なら、追加で援助も受けられるでしょう」


 ヘンドリックが手ぶらでやってくるとは、おっちゃんも考えていなかった。纏まった金を持って来ると予想していた。額によっては、国は大いに助かる。

「せやな。お父さんとしては、息子を助けてやりたいと思うやろうな」


 エルマが利発な顔で述べる。

「次に、戦争の危険性が減ります。ハイネルンがレガリアの北のタイトカンドとアントラカンドを占領するとします。次にオルトハルツに目を付けても、レガリアから軍事支援を受けられます」


 ハイネルンには領土的野心がある。レガリアのユリウスにしても即位すれば再びオルトハルツ併合を夢みる可能性は捨て切れなかった。


「身内の国を攻めるなら、覚悟が要る。そうなれば、レガリアからは攻めて来づらい。それに、お兄さんがレガリア国王なら、レガリアがハイネルンからオルトハルツ国を守るため挙兵しても、大義名分が立ちやすい」


 エルマが爽やかな顔で告げる。

「最後に、ヘンドリック王子がやって来る場合は、優秀な家臣や官吏と一緒にやって来ます。有能な人材により、今より効率的に国は治まるでしょう」


「でも、それはデメリットでもあるで。ヘンドリックがリオンを疎ましく思えば、リオンの排斥に繋がる。上のポストがレガリア出身者に占められたら、支配されていると国民は思うやろう」


 エルマが心配ないといった顔で告げる。

「ヘンドリック王子なら、その辺りの匙加減がうまくできます」

「嫌にヘンドリックを押すの?」


 エルマが穏やかな顔で申告する。

「私の姉がヘンドリック王子の家庭教師だったんです。ですから、ヘンドリック王子についてはよく知っています」


「よし、わかった。一度、ヘンドリック王子に会ってみるよ。それで決める。もし、ヘンドリックがどうしようもない奴なら、ハイネルンと組んでも国を守る」

「わかりました。さっそく、面会の準備をします」


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