運命の歯車第1章始まりの終わり6
「雪白さん!」
学校から飛び出し走り続けることおそよ10分元々は桐火との約束の場所であったが雪白さんとの唯一と言ってもいい集合場所に到着すると見覚えのある服装の女性がそこにいた。
「柊斗くんよく来てくれたわね。出来るなら説明をしてあげたいけどもうそんな時間も残されてないようね。最後にもう一度だけ確認しておくわ、本当に桐火のところに行くのね?」
「はい!桐火の手紙にあったこの世界のこときっと僕は何も理解出来ていないと思います。でもそんな僕でも桐火のいる場所に行って何か力になれるなら僕は迷いません。雪白さん僕を桐火のところへ連れて行ってください」
覚悟と言えるほどのものではない、何もかもわからないことばかりで自分が何をしようとしているのかもよく理解していないそれでも行かなければきっと後悔するそれだけは確かなことだろうとそう信じて迷いなく言い切る。
「わかった、それじゃ少しの間そこを動かないでね、あなたは初めて転位を経験するから途中で動くと貴方の情報がうまく再構築できなくなるから」
(正直どういうことなのか理解できないけど転位が終わるまでじっとすればいいってことだな)
「お願いします」
雪白さんは腰に吊るした剣を抜くと地面に突き立てる、自身は剣の柄に両手を置き精神統一をしていく。
心臓の鼓動が徐々に早くなっていくまるで自分の体が溶けていくような感覚が全身を襲うが動かないようにその感覚を体になじませていく。少しずつ辺りの時間がスローモーションのように流れていく。いつしか見える景色は不鮮明になり徐々にこれまでは違う景色が見え始める初めのうちは不鮮明にだが少しずつ鮮明になっていくそれまで見えていたあたりの景色とはまるで違う高層ビルやショッピングモールの後はどこにも見当たらない。
それに変わって見えてきたのは見渡す限りの草原と森と山々だ。これほどの自然が一体どこにあったのかそんな場所の記憶は僕にはない。
「雪白さんここはどこですか?」
「そうね、ここがどこかその質問の答えは曖昧な返事になるわね、正確にはここがどこなのか私たちにもよくわかっていない、でもここを私たちはこう呼んでる約束の地と」
「約束の地?」
「そうここはかつて人類が世界にすべてを決められる前に住んでいたとされる世界。ここは人が人として生きていくことが出来た世界なのよ」
人が人として生きていた世界そう言われても正直想像がつかない。もしもここがそうだと言うのならこれまで自分たちが生きていた世界は何だったのかどうしてそんな世界が作られたのかわからないことばかりが増えていくが自分がここに来た目的は桐火に会うことである。
「桐火はこの世界にいるんですよね?」
「ええ、ここから歩いて10分ほどの場所にかつての人類の居住区があるわ。桐火はそこにいる」
「わかりました。お願いします」
(あと少しで桐火に会える、僕に何が出来るかわからないけどそれでも会わないと何も始まらないよな)
雪白さんの後をついて行きながら見渡す限りの緑の世界を見つめて素直に美しい世界だとそう感じる。これまで自身の見てきた世界はビル群ばかりでこれほどの自然を見ることはなかった。本当にこの世界で人が暮らしていたなら自分たちとはずいぶん違う生活を送っていたのではないだろうか。
「ここに本当に人が住んでいたんですか?僕たちの世界とはまるで違いますが」
「ええ、間違いないことよ。まだすべての謎が解けたわけではないからどうしてこの世界から人がいなくなったのかどうして世界にすべてを決められた人生を送ることになったのかわかっていないことは多いわ」
(まるで実感がわかないな。でも雪白さんが言うならこの世界で人が暮らしたいたことは本当なんだな)
「さあ、着いたわよ。この中で桐火が待っているわ」
雪白さんに促され桐火が居ると言う住居の前で立ち止まる。そこはこれまで自身が住んでいたような一軒家とは違いまるで何かの研究所のようなそんな雰囲気を持っている。
「ここから先には私はいけないわ。今ここに入れるのは桐火と貴方だけ、だからここから先は貴方に任せるわ」
なぜ自分は入れて雪白さんは入れないのかわからないが今は行くしかないだろう。
入り口には特に鍵などは見当たらず扉に手をかけると自然と開いていく。中はほとんど白一色で占められている。特に家具のようなものなどは見当たらず殺風景な印象だ。中の広さは凡そテニスコート一面分ほどで随分と広い、だがそれゆえに何もない空間とは不気味に感じるものだ。
部屋の奥に続く扉は一つだけだ、ゆっくりとしかし焦る気持ちからか徐々に早足になっていく。扉は入り口と変わらず鍵などは見当たらないだが扉まであと数歩となったところで突然声が聞こえた。
「生体認証 データベース照合 該当あり 被験者ナンバー001と確定 扉の解錠を許可 おかえりなさいませ」
中世的な声で男性か女性か判断がつかない声だ。正直何を言われたのかわからないが扉は勝手に開いていく。まるで長く主人の帰りを待っていたかのようにこちらを迎える様に開いていく。
「桐火!」
扉が開ききったところでその部屋にいる人物の姿が鮮明になった。
「柊斗...やっぱり貴方は来てくれた」
部屋の中央何かの台座のように見える場所に桐火は立っていた。その顔は随分と疲労しているように見える、いつもの笑顔はなくただただ疲れ切った表情だ。
「桐火よかった、無事なんだな」
「そうね貴方のその安心しきっただらしない顔を見るまで死ねつもりはなかったもの」
「死ぬってお前そんな不吉なことを言わないでくれ僕がどれだけ心配したか」
桐火の表情は相変わらず良くないが少しだけ笑顔が戻ったように感じる、自分がここに来たことで少しでも桐火が安心できたならここまで来たかいが少しはあったのだろう。
「桐火一体何がどうなっているんだ、説明してくれ」
「そうね、ここまで来てくれたんだもの私が知っていることは全部話すわ」
この時の僕は桐火に会えて桐火の無事を確認できてただただ安心していた。これで後は桐火の話を聞いてどうするかを決めて帰ればいいとそう思っていた。
もしも少しでも何かを理解できていたならもっと違った答えを出していたのかもしれない。
前回の後書きの通り今回ようやく桐火の登場です!
皆様の想像よりも随分と短いものになってしまって申し訳ないです。
ここからさらに加速度的にストーリーは進みます。
今後とも運命の歯車をよろしくお願いします。