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運命の歯車  作者: kisuke
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運命の歯車第1章始まりの終わり5

 月曜日またいつものように学校が始まる、これまでと同じように7時に起き顔を洗って歯を磨いてリビングに向かえばすでに母が朝食を用意している。現在父は仕事で海外に出張している、だからここ最近は母と妹と自分だけの食卓が続いているが父からはほぼ毎日のように手紙が届くので特に心配はしていない。妹もすでに起きてきているようで朝食もすでに終えたようだった。

「おはようお兄」

どうやら亜紀は昨日の説明に納得していないのか朝から不機嫌なようだ。だがこちらも説明のしようがない以上ご機嫌取りも出来ないのだから甘んじて受け入れるしかないだろう。

「おはよう」

「なーにあなた達また喧嘩でもしたの?」

 どうやら亜紀は母には何も言っていない様だ、無論母にまで昨日のことが知られたそれこそ言い訳のしようがないのですべてを話さなければならなくなってしまうのでありがたいことなのだが。

「母さんは今日も帰り遅いの?」

 母の仕事は詳しく知らないがどうやら病院でここ数年急激に広まっているウイルスの研究をしているらしい。病院で適切な治療を受けないとすぐに命を落としてしまうほどの危険なウイルスらしいがニュースなどでも詳しくやっていないのでどういったことをしているのかわからないが母は楽しそうに仕事をしている。

「そうねえ、今日の結果次第だけどもしかした今日は帰れないかもしれないわね」

 母が家を出る前に帰ってこられては外にでる口実を作らなくてはならないので帰ってこれないのは丁度いいと思いながら何か言うべきかと考えるが特にいう理由もないと考え余計なことは言わない方がいいとそう決める。

「お兄は今日桐火さんとデートだもんね」

(こいつはここで余計なことを言うのか)

 妹に明らかな不満の眼差しを送りながら母をごまかす方法を考えるがこのままデートで押し通した方が案外楽に話が終わると思い

「そうだな、今日は桐火とデートだから亜紀は一人で留守番だな」

「お兄のバカ」

 朝から余計な体力をこれ以上使わされないためにいつもより早く家を出ることにした。

家から学校までは徒歩でおよそ20分遠くもなく近くもないといったところだがすでに通い初めて3年になると学校まで向かう距離も近く感じるようになってしまった。今日学校に桐火は来るだろうかと考えながら自身の中ではおそらく来ることはないだろうと考えていた。

(もし、今日学校に桐火が来るならわざわざ雪白さんに桐火のいる場所に案内してもらう必要もないんだよな)

 だがそれも今日学校が終わり雪白さんに会えばすべて解決するのだから深く考えても仕方ないと思い今日の授業を考えながら学校へと歩みを続ける。

(やっぱり早く来すぎたよな)

 学校の教室についたとき中には誰もいなかった。これまでの学校生活で一番に教室に来たことはなかったので誰もいない教室を少し不気味に感じた。

(特別早くに来たからって何もないもんだな)

 みんなが学校に来るのはおそらく10分ほど後だろう。特にすることもなかったので桐火へと連絡しようと思い携帯型連絡端末を取り出すがそこでようやく気付いた。連絡先から桐火の名前が消えていることに。

「え?」

 全くもって訳が分からない、昨日寝る前に桐火に連絡したときは確かに存在したはずの連絡先が消えている通話履歴も着信履歴からも登録してあるアドレス帳からもどこを探しても桐火の名前を見つけることが出来なかったのだ。

 例え寝ている間に間違えてアドレス帳から消したとしても履歴のすべてが消えるわけではないので誰かがすべてを消さない限り見つからないことなどないはずなのだ。考えても仕方ないと昨日家に帰る前に教えてもらった雪白さんへ連絡することにした。

 何度かコール音がした後昨日聞いた声が聞こえてくる。

「柊斗くん朝から電話なんてどうかしたのかしら?」

「授業が始まる前に桐火に連絡をしようとしたんですが僕の端末から桐火の名前が消えているんです。アドレス帳だけじゃなくてすべての履歴が消えているんですが雪白さんは桐火に連絡できますか?」

「そう、もうそんなところにまで影響が出ているのね。柊斗くん今すぐ昨日私とあった場所に来られるかしら?もう残されている時間は少ないみたいだわ」

 突然のことに頭はついてきていないがそれでもわかったことはある。

(今すぐに行かないと桐火がまずいってことだよな)

「わかりました、すぐに向かいます」

 学校に早く着いたおかげで桐火の名前が消えていることに気付いたのだからたまには早く来るのも悪くないかと思いながらカバンなどはそのままに昨日桐火と約束した場所へと駆けていく。途中何人か知り合いがいたが適当に挨拶だけして終わらせる。

 学生服のままただひたすらに走っていく姿は出勤する途中の人々にはある意味異様な光景に見えただろうが今はそれどころではない。言いようのない不安感に襲われながら僕の頭はこれまでよりも少しだけ冷静に考えることが出来た。桐火の手紙にあったこの世界のことあれが真実ならもしかしたら桐火がこのまま消えてしまうのではないか雪白さんはそんなところにまで影響が出ていると、そう言ったのだ。

(今桐火のやっていることが桐火の存在と関係があるならもう桐火に会えなくなる?)

 そんな不安に押しつぶされそうになりながら、僕はただひたすらに走っていく。

 例え理解できていなかったとしても、これから先どうなるのかわからなくても一つだけわかっていることがあったからだ。

 雪白さんに会えば桐火のいる場所に行けるのだと。ただそれだけの思いで約束の場所に向かっていた。

 だが僕は知らない僕が何をしようとしているのかをそれが何を意味しているのかをもしもそれらのことを少しでも理解できていたならもっと違った選択肢もあったのかもしれないのだから。

運命の歯車第6話目の投稿です。

さて、前回の後書きで桐火さんの登場予定と報告させていただいたのですが諸事情により次話登場になります。この作品のメインヒロインがこのような扱いになってしまい非常に申し訳ないです。

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