運命の歯車第1章始まりの終わり3
城桐火(きずききりか)初等部の2年から現在の高等部3年までずっと同じクラスになっている。
だが特別仲がいいとか家が近所であるとかそういったことは特にはない、だが何故か学校行事や委員会、そして掃除当番など事あるごとに何故か同じ振り分けとなり次第に勉強を教えあったりお互いに気が許せる異性の友人といったようになっていった。
そうそして特に何事もなく高等部を卒業してそれでこの関係はなくなっていくものだとそんな風に考えていたのに何がどう間違ってこんな状況になってしまったのか。
雪白渚(ゆきしろなぎさ)と名乗った女性から僕宛に書かれた桐火からの手紙を受け取りどうしてかはわからないがこの手紙を読みたくないとそう思った。
「あの、ここで読まないといけませんか?」
わざわざ聞かなくてもおおよその返答はわかっているのだがこの手紙をここで読むことに言いようがない拒絶感が溢れ出してくる。
「そう、やっぱりそうなのね。出来ることなら貴方の部屋でゆっくり読んでもらいたいのだけどでもそれはダメみたいね」
(何がやっぱりそうなのか、そして出来ることなら部屋で読んでもらいたいものをなぜここで読まないとダメなんだ?)
この女性や桐火に対する不安感が言いようのない拒絶感がそして未だに状況を整理しきれない頭が自分の考えをどんどん悪い方向へと考えてしまう。
だがここで読んでほしいと言われた以上ここでこの手紙の内容を確認するほかに選択肢はない状況だ。焦りと緊張そしてこの状況の不安から鼓動が早くなっていくなぜクラスメイトからの手紙を読もうとしているだけでこんな状態になっているのかはわからないがともかくこの手紙を読まないことには何も進まないらしい。
だから仕方なくこれまでのどんな状況よりも緊張しながら僕はその手紙を開いた。
[橋都柊斗(はしずめしゅうと)貴方がこの手紙を読んでいるならきっと私は貴方との約束を守れていないということでしょう。私からお願いしていながら約束を守れないことをまずは謝罪します。そしてきっとこれを読んでいる貴方は混乱しているでしょうね。突然こんな状況になってさぞかし貴方は愉快な顔をしているのではないかしら?渚さんはちょっと変な人かもしれないけど信頼できる人だから信じてあげてね。それでここからが本題ね ねえ柊斗もしも今私たちのいる世界が初めから終わりまですべてを決められているとしたら貴方はどうするかしら?誰もが生まれることから死に至るその瞬間まであらゆることが決められていたら?努力や自身の積み重ねてきた経験など一切関係なく何もかもすべてこの世界に決められていたら?誰が何をしても決められた定めから逃れることは出来ず決められた人生を生きているだけだとしたら果たしてそれは生きていると言えるのかしら?突然こんなことを聞かされても貴方は冷静に考えることが出来ないと思うから私の時間を少しだけ貴方にあげる。少ない時間になるけど明日の0時までにもしも私の話を信じてくれるなら渚さんと一緒に来てほしいの私のいる場所に今理由があって私はここから離れることが出来ないのだから渚さんに手紙を預けてすべての判断を貴方に任せます。でももしも少しでも何か思うことがあったならきっと貴方は来てくれるとそう信じています。 城桐火(きずききりか)]
この手紙を読み終えたとき何故か心が軽くなったように感じた。理由はわからない、ただこれまで自分の中にあったしこりのようなものが少しほどけたように感じた。
「雪白さん桐火は今どこにいて何をしているんですか?」
「それは私の口からは言えないわ。ただ一つだけ言えることは桐火は貴方を待っているわ。貴方ならきっと来るとそう信じて、今あの子は苦しんでいる自分ではどうしようもないことなのに全部自分で解決しようとしているわ。桐火は真面目な子だからね、本当なら貴方を巻き込むようなことはしたくなかったはずだけどもうあの子一人ではどうしようもないことなのよ」
雪白さんはまるで苦虫を噛み潰したような表情でまたその状況をどうすることも出来ない自身に苛立ちのようなものをうかがわせながらただこちらの判断を待つ様だ。
「僕がもし明日一緒に行かなかったら桐火はどうなるんですか?」
「それは貴方が気にする必要のないことよ。今貴方に必要な判断はこの世界がすべてを決められた世界だったなら貴方はどうするかなのよ」
「必要ないことじゃありません!桐火は僕のクラスメイトだ、この世界が最初から全部決めていようとそうでなかろうとそんなことは僕にはどっちだっていい!僕が聞きたいのは桐火がどこにいて今どうしているかです」
「もし本当にそれが知りたいなら貴方の選ぶべき選択肢は明日私と一緒に桐火のところに行くしかないわね私に出来るのは貴方を桐火のいる場所に案内することだけそこから先は貴方と桐火の問題よ、でも一時の感情に流されずにしっかり考えなさいこれは貴方だけの問題ではなくなるのよ」
「だったら僕が選ぶことは決まっています。桐火のいる場所に連れて行って下さい」
この時はただ心配だった、何も理解出来ていない状況ではあったが自分の行動によってもしかしたら桐火とはもう二度と会えないような気がした。
そしてもしそれが自身の判断一つで回避できるなら自分はそうするべきだろう。でももしかしたら自分がそうした選択をすることすらこの世界によって決められていたのかもしれない。この時はまだ想像もしていなかった自分の選んだ未来がどれだけの意味を持っていたのかを。
運命の歯車第4話目の投稿です。
他の方が書いている小説よりもどうやら自分の投稿している小説は随分と短めで投稿していることに気付いた今日この頃です。読者の皆様にはじれったい思いをさせているかもしれませんが毎日投稿していくには現在の長さ程度がちょうどいいと感じています。今後投稿のペースがはっきりと決まり次第1話ごとの長さは調整していく予定です。そしてようやく主人公の名前も決まりここからさらにストーリー的には混沌とした流れになるかもしれませんがいずれそのあたりの説明なども投稿していく予定ですのでそれまあで読者の皆様のご想像にお任せすることと思います。