ISSA
「I、S、S、A、でISSA」
彼が僕にそう言った時、ふいに、頭の中で2つの事柄が浮かんだ。
1つは、かの有名な江戸時代の俳人、小林一茶だ。
学生時代、古典の教師の薦めで彼の作品集をまとめた小説を拝見したのだが、まだ初々しかった純真な青年の心が世の中の汚れたるものを知ったのは、その作品集のせいだ。と豪語しても過言ではないくらい、当時、作品に衝撃を受けたのを覚えている。
何より「父の終焉日記」では、父の病態の裏で蠢く継母、義弟の遺産問題の確執が生々しく、それを読んだ夜は余りに心がダメージを受けたと言うか。ピュア過ぎた学生に金や死のテーマは重すぎて、食事もロクに喉を通らなかったと言う、嫌な記憶しかない。
もう1つは、某ディズニー作品に出てくる、黄色いくまの友人のしましまのトラだ。
実際あのアニメをはじめて見たのが僕が幼稚園か、小学校に上がってすぐくらいだったと思う。
丁度見た場面が黄色いくまの家にそのトラが突然押し掛けてくる回で、初対面の相手の家に押し掛けてくるや否や、まさか家主を押し倒し自分の魅力を語ると言う、あの破天荒な図々しさにも違う意味で衝撃を受けた。
でも、今考えてみれば僕と言う人間は何事に置いても少し考えすぎる面があって、謙虚とは言わずとも積極性に欠けているので、あれ位の図々しさは持った方がいいのかもしれない、と習ったのもその頃。