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ジーザスクライスト  作者: 或田いち
脱サラリーマンによる白昼の堂々
3/16

反射と飛沫

 

 その間、間を持たす為に僕はぼんやりと口を開いた。普段ならこんなことは絶対試みないのだが、やはり「いつもと違う1日」に、人間は習慣以外の物事に挑む傾向があるらしい。


「君、80階ビルの最上階から見る、一般道を走る水捌けのいい車には、何か惹かれるものがあると思わない?」


 エレベーターガールは一瞬、訝り、斜めに僕を見たあと、直ぐに職務をまっとうして背筋を伸ばす。されど彼女の反応は、その見た目の割に適切だったと思う。


「何をおっしゃっているのか理解しかねますが…


 このビルの最上階からでは、一般道を走る車の水捌けの良さなんて、きっと一般人の視力では見えないと思います」


 僕は、思いついたように「あ」と声を漏らした。僕が声を漏らすのとほぼ同じタイミングで、エレベーターが一階に到着し、何事もなかったように機械的な動作で、彼女は「いってらっしゃいませ」と手を差し伸べた。


 逆だ、とこればかりは思った。強いて言うなら、今ここに相応しい言葉は「お疲れさまでした」だろう。




「朔さん、お疲れさまでえす」


 振り向くと、一階エントランスロビーで受付をする、春水さんが唇を突き出していた。見た目もケバい化粧に茶髪と近寄りがたいが、近くにいったら香水の臭いでもっとキツい。

 何を隠そうここでの「僕」の愛称を考えた第一人者である彼女には、振り向き、礼儀正しく告げてみた。


「きっと、今日限りで君ともオサラバだ」

「リストラですかあ」


 平凡な声がのんびりと届く。


「まさか」


 僕は何だかおかしくなって、そこで初めて笑みを溢した。


「自分から辞めたのさ」


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