ノンストップパレード
「止めてくれ」
突然だった。
眉間にシワを寄せて俯く僕にかけられた言葉。妙に冷淡な声は、誰の声かと一瞬僕を迷わせた。
「朔、止めてくれ!」
「え」
堪らず横から伸びてきた手がハンドルを握り、僕は驚いて急ブレーキをかける。車体がドラマさながらのカーアクションで止まる、なんてことはなく、
実際は急ブレーキの反動で僕とISSAが勢い余って前のめりになっただけだった。
「人だ」
「何?」
ハンドルに掴まったままISSAに目だけ向けると、こいつは僕をすり抜けた先の、窓ガラス越しに見える公園広場をじっと見ていた。
真似るようにして同じ位置を見ると、きっとISSAにはわからない、僕の視力だからこそわかった。いや、ISSAも気付いていたのだろう。
そうでなければ、彼が。
、、、、、、、、、
ISSAが、突然車を飛び出して、公園広場に走ることなんてなかっただろうから。
「ISSA!」
僕の呼びかけは、ISSAに届いただろうか。届いていたらいい、そうすればきっと加速するスピードのちょっとくらいは、ブレーキを利かせてくれたかもしれない。
僕が必死になって止めた、この車のように。
僕は…ISSAが、公園の砂場付近で倒れている老人にいち早く気付き、駆けていく姿を。
しかと、この目に、焼き付けていた。