転生輪廻、魑魅魍魎
「それは趣味?」
重たい沈黙の、口火を切ったのは僕だ。昔から饒舌な方では無いのに、妙な空気には耐えきれず一掃してしまう癖がある。
僕はISSAの髪や、服装のことについて訊ねた。するとISSAは一度きょとんとしてから高らかに笑って、
「人間てのはさ」
と語り出した。出たよ、偏屈が、と無意識に身構える。
「人間てのはさ、毎日転生してるんだ」
「転生」
宇宙辺りからの妙なフリに、笑いを堪える。
「知らない?就寝が死で、目覚めが生誕て説く理念」
「聞いたことない。てかそういうのは悪いけど専門外」
笑いを堪える為、素っ気ない返事になるが、ISSAは特に気にする素振りもなくそう、と相槌を打つ。
「じゃあ例えばさ、戦時中の兵士は、病床の老婆は。寝る時、何より恐怖に怯えるんだ。何故だと思う?」
戦時中の兵士と病床の老婆についての関連を一度は頭に思い浮かべ、いいや違うと首を振る。
「戦時中の兵士は…そりゃ、場合によっては寝たら殺されるかもしれないし、病床の老婆は……
寝たらそれっきりってことが怖いからか?」
「賢いね」
パチンと指を鳴らし、明るい口調になるISSA。年下男子に小馬鹿にされているようで、一瞬気分を害した。
「それなんだよ。つまり、今日が彼らにとって明日にはない命かもしれない。そう思うのとは逆に、俺は毎日生まれ変わる気持ちで日々を過ごしている。
朝、起きて、誕生。夜、寝て、死ぬ。ってな具合に」
得意気に語る隣へはぁ、とか返事をしながらハンドルを回す。さっきまでの聰明さはどこへやらと言った感じだ。