すりすりばにぃ
「ケンタ様~」
ここはヒルブ王国の王都から離れて少しの所、ある程度離れたため一応は安全だと判断した拳太によってバニエットと共に草原のど真ん中で一休みしていた。
「……なぁ、バニィ」
彼に付き従うウサ耳少女にかける言葉は重い、しかしそれも仕方ないだろう、拳太はここに来るまでに追っ手を気にしてあまり眠れていないのだから、それは今も同じである
だが、理由はそれだけではない
「なんですか~?」
――すりすりっ
「……オレの頭に顎を擦り付けるのやめてくんねーか?
摩擦で熱くなって来たし、ちょっと重い」
「もうちょっと待ってください♪」
「それ、さっきも聞いたぜ」
……例えそれほど重量を感じていなくとも、長時間もたれ掛かる姿勢で頭を乗せられれば誰だって疲れる
拳太がバニエットを助けるために花崎大樹と戦った日以来、完全に拳太になついたバニエットは、暇さえあれば拳太の周りをクルクル回ったり、拳太に対して顎を擦ったりしていた。
恐らくラビィ族特有の感情表現なのだろうが、正直休みたい拳太にとっては辛い
「あーじゃあ寝転んでいいか? 一度眠りてぇ」
「あ、お昼寝ですか? なら私もご一緒します!」
そう言うとバニエットは拳太の足元に駆け寄るとそこを枕にするように身を丸くしてすやすやと寝息をたて始めた。拳太はバニエットの寝付きのよさに思わず苦笑したが、彼女の寝顔を見ている内に自分にも眠気が込み上げてくる
「……オレも寝るか」
拳太はバニエットと過ごすこの『日常』も悪くないと思いながら眠りについた。
因みに、拳太は知らない事だがウサギが顎を擦り付ける行為は所有権を主張するマーキング行為であり、「私のもの」という愛情表現である