中編
予告通り更新しました。
私は今、隣国のお姉様の嫁ぎ先に他の令嬢を連れて馬車に乗っています。自国には愛想が付きました。ですが、王妃様があの事件の首謀者だとは思いませんでしたわ。この国に来る前に会いに行きました。
「流石、シルビィアね。私に会いに来たのは正解よ」
静かな眼差しで私を見ています。
「王妃様、どうしてこんな事を?国が荒れますわ」
聡明な女性である王妃様がした事が信じられません。
「これ以上、あなたの母親に振り回されるのは我慢できなかったのよ」
悔しさをにじませた声で王妃様が言います。
「私のお母様にですか?」
振り回される?お母様は天然なとこありますね。
「ええ、そうよ。知ってるかしら?本当は貴女のお父様の婚約者は私だったのよ」
遠くを見ている王妃様は切なそうな顔をしています。
「それは、初めて聞きましたわ」
初めて聞いたわ。王妃様は、お父様の事今でも好きなのね。
「誰も言わないでしょうね、婚約者を交換したとは」
「まさか!それは酷い話ですが本当に?」
「本当よ、私は貴女のお父様に嫁ぐ日を楽しみにしていたわ。だけど貴女の母親は彼を好きになったから妻になりたいと、当時殿下の婚約者だった彼女は殿下本人にどうにかしてと頼んだのよ!」
「お母様が…」
そんな事実があったら、恨まれても仕方ないのでしょう。
「君が幸せになるならと、彼女の為に婚約者を交換した。無理やり殿下の婚約者にされて、愛してないが彼女の為だと言われたわ。なら、私はどうなってもいいと言うの!王妃などなりたくなかった。貴女なら許せる?」
「私でも無理です。王妃様の気持ちは分かりました。でも、だからと言って混乱を招いては民が苦しみます」
目を伏せて、断罪されようとも構わないと言う表情を王妃様はしています。
「分かっているわ。罰なら幾らでも受けましょう。でも、面白いでしょう。私が見つけてきた彼女は。ふふふ、貴女のお母様に似た彼女はやっぱり昔と同じ事してくれたわ。そっくり」
王妃様が泣き笑いの表情をしました。やっぱりこうなった。と言っているようです。
「……王妃様」
表情の意味がわかったような気がします。信用できなかったのですね。子供である殿下も、私のお母様を今でも優先する陛下も。
「王子は陛下そっくりなの、彼女に合わせれば同じ事するかもしれないと思っていたわ。しない事を祈っていたけどダメだったわ」
きっと王妃様は、王子に婚約者を裏切らないで欲しかったのだと思いました。自分と同じ事をされた私を見て。今思うと心が壊れそうだったのは王妃様だったでは。お母様のさりげない一言が王妃様の幸せを壊したのでしょうね。私は無言でその場を立ち去りました。王妃様には咎められませんでした。
「さようなら王妃様、お健やかに過ごされる事を祈っています」
馬車の中で昨日のできごとを思い出していました。こちらでお姉様に良い方がいらっしゃいましたら、お友達となった令嬢達に素敵な男性を紹介してもらえればと話をしています。お姉様の屋敷に着いてすぐに会うことができました。
「お姉様、この度はお世話になります。こちらが私のお友達の令嬢達ですわ」
「初めまして、シルビィア様と親しくして頂いているアリア・クリーニアキですわ。よろしくお願いします」
「初めまして、同じくシルビィア様と親しくして頂いてますマリーナ・ラックスビューですわ。よろしくお願いします」
「初めまして、同じくシルビィア様と親しくして頂いてますイリーナ・フロッシュルですわ。よろしくお願いします」
「まあ、素敵なお友達ね。シルビィアの姉になりますマリアンヌ・ドリップコピと申しますわ。皆さんを我が家で歓迎いたしますわ」
「お姉様、皆素敵な方なのですわ。ですから良い方を紹介して下さい」
「分かったわシルビィア、任せておいてね。素敵な方がこの国にはたくさんいらしてよ」
「ふふ、期待してますわ。お姉様」
お姉様の男の人を見る目は確かなので心配していません。問題は私です。今度は静かに暮らしたいですわ。普通の人でいいと思っています。社交界にあまり出なくても良いと言ってくださる方がいいわ。前の婚約者が酷かったので、王族の方は遠慮したいわね。