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第一話 中学篇〜初日〜

二年前


生まれは日本だけれど、物心つく前から英国暮らしだった。


親の仕事の所為で日本に滞在することはよくあったけど、まさか自分が日本で暮らすことになるとはあまり考えていなかった。


両親は英国暮らしの時から、家では日本語で会話してたし、俺も妹も二人で会話するときは日本語だったから、日本語を話すことに不便はないし、勉強も


『忙しくて見てあげられないから』


とご立派に家庭教師なんてものがついてたから、日本の学校よりは進んでる、と思う。


ただ、日本人の同年代の友達なんていなかったから、文化の違いとかそういうところは、少し不安だ。


とりあえず父親から


『初対面でのハグとキスは絶対禁止だよ。そんなことしたら、ドン引かれるからね!』


とは言われたので、それだけはしないようにと心に誓う。


そんな事を考えながら、5月という日本の暦では中途半端な時期に中学一年生として今日から、家の近くの市立中学校へ通うのである。


教師に連れられて、教室に入る。向けられるのは好奇心。


一斉に注目を浴びるというのは、なかなか複雑な気分だ。


そんな心情を知ってか知らずか、担任に自己紹介するように言われる。


「藤堂葵です、よろしくお願いします。自己紹介とか何話していいかわからないので、聞きたい事があったら聞いてください」


一応前日に色々自己紹介とか考えては見たけれど、特にこれといって浮かばなかったのでこの結論に行き着いたのだ。


好きな科目に始まり、好きな教科や音楽……。


「彼女はいるんですかー?」


英国ではいたが、日本に来てまだ数ヶ月。

いるわけないだろう、と内心ひとりで突っ込む。それとも、この年で遠距離恋愛でもしていると思っているのだろうか?それとも、日本人がよく使うという「お世辞」の類なのだろうか?そんな不快感を億尾にも出さない。


「向こうではいましたが、こっちに来てからは日が浅いのでまだ…」


自己紹介の質問コーナーも無事に終わり、指示された席に着く。


隣の席の奴と適当に会話をしながら、程なくして休み時間になった。待ってましたと言わんばかりに、葵の周りにクラスメイト達が集まり、矢継ぎ早の質問攻め。段々鬱陶しくなってくる。


挙句名前も分からない女子数人から渡されたのは、POPなデザインやキラキラとしたデザインのプロフィール帳。


名前や趣味、裏面には【クラスで可愛いと思う子は?】みたいな簡単な質問や、心理テストみたいなものがぎっしり書いてあった。


ここに越して来たばかりで、名前も分からないのに書けるわけもない。突っ返そうと思ったが、ちょうど授業が始まりみんなが席に着いてしまって、一体誰がこれを自分に渡したのかもよく分からなくなってしまう。


授業中に一通り表面の最低限だけを書き上げて、フリースペースとやらに描くか描かないか迷ったが、隣のやつに持ち主を割り出して相手の子の似顔絵を簡単に描いてやる。


何も描かなくても良かったのだが、裏面はほぼ白紙だったし鬱陶しいのには間違いないのだが、何も書かないのもなんだか悪い気がしてしまったのだ。


次の休み時間でそれぞれに返してやる。


女子たちは揃いも揃って葵の絵を褒めちぎる。


「母親がデザイナー兼イラストレーターとかでさ、昔からよく手伝わされてたんだよね。漫画のアシスタントみたいな。気付いたら俺もそれなりに絵は描けるようになっちゃって…」


「ええ!?

でもそれでここまで描けるのって、やっぱり藤堂君すごいよー」


「……昔からわりと器用なほうではあるけど、それだけだよ」


そのあとようやく放課後になり、数人に『一緒に帰ろう』と誘われたけれど、今は一刻も早く帰りたかった。


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