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その日も外を眺めていた。
最愛の一人娘が入内してひと月もたたない頃だった。滅多に帰らない夫が幼子を連れてきたのは。
「これの母親が亡くなった・・・。これからは宮に育ててもらいたい」
絶望した。
今まで夫の甥にあたる子を後継として育てていたのに。
夫に見捨てられた自分をいつも気にかけてくれる、心優しい彼にしてやれるのは邸を継がせてやることくらいだったのに。
彼はどうするのだろう。夫は幼子を女房に預けると部屋を出て行った。
仕方なく、女主人として指示を出す。
「淡路、その子をお願いね。椿、すぐに牛車の準備を。して・・・それから荷造りを。六条にも伝えて」