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はじまり

 まなざし。

 猫のももは、くすんだブルーの瞳。その瞳をみつめるのは、小学2年生の河口香澄かわぐち かすみ

 香澄は、ももの瞳のブルーが好きだった。

 ももが香澄の家にやってきたころ、二人の間には、緊張感があった。でも、その緊張感はもうない。かわりに、今の二人の間にあるものを、なんて言葉でいうのだろう。香澄はわからなかった。


 今日はクリスマス。

 おじいちゃんと、おばあちゃんの家でパーティーをすることになっていた。

 シュトーレンというクリスマスケーキに、猫用クリスマスケーキも用意していると、おばあちゃんが言っていた。お父さんとお母さんは、昼はお仕事だから、香澄だけ先におじいちゃんとおばあちゃんの家に行くことになっていた。ももは、夜になってから、お父さんとお母さんと行く予定だ。


 香澄は、おじいちゃんと、おばあちゃんの家まで、一人で行くの初めてだった。

 午後になって、お母さんがリモートワークの合間に、香澄をバス停まで送っていった。


「香澄、もう一回、バス停の名前を言ってみて。」

「新町。」

「そう。バス停の名前を書いたメモは?」

 香澄はリュックからメモを取り出してみせた。

「新町でバスを降りたら、そこでおじいちゃん達が待ってるからね。」


 香澄とお母さんはバスを待った。

 とても寒い日だった。くもり空で、昼なのにうす暗い。

 ぽつりぽつりと雨がふり出した。お母さんに、傘に入れてもらう。

 香澄は、このままお母さんといたかった。夜になってから、お母さんとでかけたかった。

「私、やっぱりお母さんと行く。お仕事終わるの待ってる。」

「香澄。バス停をおりたら、おじいちゃん達が待ってるから。行きなさい。」

 お母さんは、ちょっと泣きそうな顔をしていた。

「あのね、ことわざがあるの。『可愛い子には旅をさせよ』といって、香澄は今日、自分の力で新町まで行くの。お母さんたち、ちゃんと夜になったら行くから。一緒にパーティーしようね。」

 香澄は、お母さんのお腹に顔をうずめて、少し泣いた。

 でも、頑張ろうと思った。香澄の力で行ってみようと思った。


 バスが来た。

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