FILE3-持たざる者
こんばんわ。龍河です。
今回は時間稼ぎ戦闘回です。少々物足りない感じはあるかもしれませんがアマミヤは「人間」です。
剣や魔法が使える勇者ではありません。普通の人間ができることって結構少ないです。
そんな感じで書いてみました。
「ハァ・・・ハァ・・・」
あの子は無事に逃げられただろうか? なんてことを考えながら俺は廃ビルの一室にある不法投棄であろう事務用デスクの裏に身を隠して魔女が来るのを警戒していた。
あの子『イヴ』を逃がすために、魔女に大手を振ってケンカを吹っ掛けたが対面戦闘で勝てる訳もない
なのでリュックを投げ、視界を遮った後に近くの廃ビルへと駆け込んで現在に至る。
「騎士様~? どこに隠れたのかなぁ? 女の子の前だったからカッコつけたくなっちゃったのー??」
好きにほざいてろ、こちとら”普通の大学生”だぞ? 剣も魔法も使える勇者様じゃないんだ。なんて思いながら魔女の挑発を聞いた。
「私ねぇ~?? 昔から”かくれんぼ”は得意なんだよねぇ。見つけるほうだけど」
「いっつもすぐ見つけるから小さい頃はよく煙たがられたけどねぇ・・・」
なんか魔女が自分語りをし始めたぞ? 悦に浸っているうちに次の行動を考え・・・
ーーー『ねっ?、騎士様?』
・・・は? 俺は警戒を緩めてなんていなかった。なのになぜ『魔女は俺の横にいるんだ?』
魔女はかがんで太ももの上に肘をつけ、頬杖をしながら俺の顔をまじまじと見ていた。俺も魔女と目が合い魔女の顔を見た。ーーー魔女はニコニコしていた。
俺は全身から血の気が引いて、夏だというのに酷く寒さを感じ震えまで起こしていた。
「みーつけた♪ あれぇ?どうしたの? そんな怯えて顔しなくてもいいじゃん」
「どっ、どうして俺のいる位置が分かるんだ?」
「私、探知系の魔法に優れてる魔女だからねぇ~、人探しは得意だよぉ?」
「なるほど、じゃあ隠れてもムダって訳か、じゃあ”かくれんぼ”ではあんたに勝てそうにないな」
「”あんた”って失礼ね、私にはちゃんと『テネフィラ』って名前があるの」
「それは自己紹介どうも、俺は『アマミヤ』だ、よろしく『クソ魔女さん?』」
「・・・本当に人の神経を逆なでするのがお好きなクソ人間だこと」
「あんた、本当は怖いくせに随分強がるのね」
まさしく当たっている、めちゃくちゃ強がっているが普通に怖い。生きていて何をしたら魔女とこんなデスゲームしないといけないのか教えて欲しいくらいだ。でも怖がっていてもしょうがない、まずはこの状態を打破しないと。
俺は手が届く範囲でなにかないか目だけ動かして探した。
ーーー自分が隠れていたデスクの真ん中に引き出しがある、ちょうど引き出しを引っ張ったら魔女の頭付近に当たるのでは? と考えた。
「さて、では”騎士様?”あのお嬢ちゃんの変わりに一緒に来てもらうよ?」
「・・・テネフィラ様?あんたには大きな弱点があるよ」
「弱点?なによ突然」
ーーー「人間をなめてることだよ!!」
俺は引き出しに手をかけ、強く引いた。こちらの予想通り魔女の頭に当たりテネフィラは当たった箇所を抑えながら倒れ込んだ。床に倒れ込みながら俺のことを睨みつけている
「痛っ!! ・・・このクソ人間がぁ!!この高貴な魔女になにするんだぁ!!」
「お前の弱点は人間を下に見てるその『慢心』だよ、だからこんなしっぺ返しにあう」
「・・・なめやがって、とっとと大人しく捕まれよ!!」
俺は本格的にテネフィラの逆鱗に触れてしまったようだ、とりあえず魔女がよろめいているうちにこの部屋から出よう。駆け足で出口に向かって走り出した時、なにかが顔のすぐ横を通り過ぎた。よく見ると髪の毛の先端がチリチリになっており、さらには服の肩も燃えていた。俺は恐る恐る後ろを振り向いた。
「クソ人間が・・・どこに行くつもりだ?」
テネフィラが空中に魔法陣を出していた、俺の髪の毛や服が燃えているのをみるにあれは「火魔法系」だろうか、まじまじと見たことはなかったがそれよりも、魔法ってあんな速いのか??
「・・・テネフィラさん? 貴重な生贄の俺をそんな火魔法で攻撃したら使い物にならなくなるかと」
「予定変更だ、この私をこんな惨めな気持ちにさせた人間はおまえが初めてだ」
「お前は私の手で『葬ってやる』」
テネフィラは俺に向けて火魔法を放ってきた、俺はギリギリ出口のトビラを盾にして攻撃から逃れ部屋を出た。ビルの構造が分からないので適当に逃げたところ、上階に行く階段が見えた。上に行けばますます逃げ場がなくなるが果たしてどうする・・・なんて考えていたら後ろからテネフィラがこちらへ来ていた。
「どこ行くつもり? どこに隠れてもムダだよ?」
選択肢はないようだ、俺は急いで階段を駆け上がっていき2階へ。二階は崩壊が酷く廊下のいたるところに床が抜けたような穴が多くあり逃げ場としては適さないと判断、三階へ移動した。
三階は比較的まだ綺麗な状態だった、俺は近くの部屋に入り窓のへりに腰掛け息を整えた。
「さて・・・、これからどうするか」
考えろ、考えろ、頭を回せ、どうすれば治安局がくるまで時間を稼げる??周りに使える物がないか探すが流石に三階までになると一階に比べて物が少ない。すると階段から大きな音が響いた。
俺は急いで階段の方へ行き、状況把握のために階段から二階を覗いた。
ーーーあいつがいた。二階への階段を上がった踊り場におり、こちらに気づいたようだ。それよりも非常に良くない状況になった。
「あいつ・・・!!階段を壊しやがった!!」
ーーー状況は最悪の展開へと進みつつあった。
いかがでしたでしょうか?
ずっと魔女呼びでしたがやっとこお名前出せました「テネフィラ」です。
次回は6/23(月)公開予定です。
時間について、ここまで20時でやってきましたが次回は19時公開にしてみます。
色々試して自分のスタイルを決めたいと思います。