FILE2-黒魔女
こんばんわ。龍河です。
前回、ゴリゴリに戦闘回にするって言いましたが全然できませんでした(泣)
展開を急ぎすぎました・・・・ごめんなさい。
今回は戦闘に入る手前までです。
魔女の近くへ来た俺は声を掛けようと思ったが、様子を見る為に近くのガードレールに腰を掛け携帯端末を触るフリをしながら魔女を観察した。
あれから数分観察したが分かったことは『俺以外誰も認識していない』『魔女は通る人を見てデカい独り言を言っている』ということくらいだった。
なんか通る人を見るたびに「こいつもダメ」「こいつは低すぎる」「くそっ、どいつもこいつも使えない人間ばかり」とデカい独り言を言っていたが・・・・・・こいつはヤバい奴かもしれない。ここにきて興味本位で近づいてしまった数分前の自分に説教してやりたい。とりあえず俺も通行人Aを演じて帰ろうと思ったところ事態は進展した。
自分が来た方向から学校帰りであろう学生服を着た女子高生が歩いてきた。その女子高生はなんと魔女がいる方向を見ていた。まわりを確認して自分が見えていることをおかしいと感じたのか混乱と不安が入り混じった顔をしてキョロキョロしていた。
「・・・・・・見つけた♪」
魔女が嬉しそうにつぶやくとその女子高生にニコニコしながら近づいていった。俺は横目で魔女と女子高生の会話に耳を傾けた。
「こんばんわ~♪ お嬢さんもしかして私のこと見えてるかなぁ?」
「えっ? あっ、あなたなんですか? というかなんで他の人にはあなたが見えていないんですか?」
「そりゃ、認識疎外の魔法使っているから。今回は『魔力が高い人間』には効かないよう条件付けしてる、そしてその条件付けされた人もまわりからは見えなくなる。すごいでしょ?まぁ範囲は小さくなるなるけど」
女子高生はどうやら人でありながら魔力を多く持っている人らしい。女子高生は自分の体質を理解しているようでしばしの沈黙後、魔女に質問した。
「認識疎外の魔法をこんな道の真ん中で使って、あなたはなっ、なにしているんですか?」
「あぁ、計画を実現するのに大量の人間と魔力が必要なんだけど、最初は”質より量”で魔力の低い人間ばかり攫ってたんだけど労力の無駄だから私はこう考えたの”量より質”『魔力の高い人間』を集めるのが一番早いのでは?ってね♪魔力の高い人間は1人で何百人分の生贄になるんだもん」
・・・・・・こいつはなにを言っているんだ? 計画? 生贄? 俺は夢でも見ているのか? 頭が必死に理解しようとしているが理解が追いつかない。とりあえず深呼吸をして気分を落ち着かせて冷静に二人の会話を続けて聞いた。
「・・・・・・もしかして世間を騒がせている連続行方不明事件はあなたのしわざですか?その計画やら生贄やらのために私も攫うんですか!!」
女子高生は学校鞄を抱えながら後ずさりしてキョロキョロし始めた。
「そんな怖がらないでよぉ? 大人しく一緒に来てくれたら乱暴なことはしないから、ね?」
魔女はさらに女子高生との距離を詰めようとした時、女子高生はビルとビルの間にある路地に向かって走り始めた。
「ちっ、下手に出ればこれだ」
魔女はそうつぶやくと女子高生を追っかけに路地へと歩いて行った。それを俺は見ているだけだった。
・・・・・・どうする? まずは治安局に通報するか? いやそんなことしてるうちに見失ってしまう。でも追いかけてどうする? ただの大学生が魔女に何ができる?
女子高生が逃げた路地をじっと見つめる、・・・・・・俺は果たしてこのままでいいのだろうか?
不採用通知ばかり受け取る日々、まるで”世間から必要とされていない”烙印を押された気分だ。
ーーーうだうだ悩んでもしょうがない、どうせ1度きりの人生だ、やってやる!!
俺は決心をして、路地へと走り出した。
路地裏は太陽の光もあまり入らず暗くジメジメしていた。思ったより入り組んでおり中々二人を見つけらずにいた、すると遠くから悲鳴が聞こえた。俺は悲鳴が聞こえた方向へ向かった。
悲鳴が聞こえた先は開けた場所になっており、建物と建物の間にできた空き地みたいな感じだった。そこに女子高生がビルの壁にもたれかかっていた。完全に逃げ場を失った状態だった。
「ねぇ? 鬼ごっこしてる暇ないんだけどさぁ、大人しくしてくれない?」
「お断りします!! あなたみたいな道を踏み外した魔女なんかに従うつもりはないです!!」
「生意気なガキだな、はぁ・・・・・・もういいわ。」
そういうと魔女は手をかざして魔法を放とうとしていた、俺は近くに転がっていた空き缶を魔女に向けて投げつけた。魔女は魔法を放つのをやめて振り向いた。
「・・・・・・なんだおまえ?」
魔女は驚いた表情をして俺に向かって質問してきた。
「通りで2人のやり取りを見て追っかけてきた、ただの大学生っすよ、随分物騒なことしてるんすね魔女さん?」
「大学生? ほぉ? おまえも私が見えるのか、今日はなんて運がいいんだろうか2人も生贄を見つけれるなんて」
魔女が一人で舞い上がっている隙に、女子高生がこちらに駆け寄り俺の背中に隠れた。
「あっ、あのありがとうございます。誰も反応してくれなくて助けも呼べなくて」
女子高生は涙目で俺の服を掴んでお礼を言っていたが状況は全然好転していない。
「お嬢さん、お礼を言うのはまだ早いかな・・・・・・。正直俺も"ただの大学生"戦闘のプロではないんだよ」
女子高生は不安な顔をして俺の服を掴みながら泣くのを我慢していた。立っているのもやっとだろう
どうする? そう簡単には逃がしてくれないだろう。せめてこの子くらいは・・・・・・。
「お嬢さん、名前は?」
「・・・・・・『イヴ』です。」
「俺は『アマミヤ』だ。よし、イヴちゃんさっきいた通りまで戻れるかい?」
「戻れると思います。でも、アマミヤさんは?」
「俺は、時間を稼ぐから通りまで出て治安局でもなんでもいい通報してこの位置を知らせて欲しい、できるか?」
「時間を稼ぐ!? あっ、アマミヤさん死んじゃいますよ!! ダメですそんなの!!」
「それしか助かる道はない」
「でっ、でも!!」
二人で小声で会話をしている間に魔女が割って入ってきた。
「お二人さーん? 作戦会議は終わりましたかぁ?」
軽くため息をつきながら魔女がこちらへ近づいてくる。
ーーーまずい!! 魔女が来る!! 俺は背負っていたリュックを下ろし、手に持った。
「早く逃げろ!!」
俺は魔女にリュックを投げつけて視界を遮り、その隙にイヴは泣きながら走り出した。俺は魔女に向かって走り出した。魔女は飛んできたリュックを虫を払うかのように手で払った。
「へぇ~魔女相手に反抗的だねぇ? 面白いねぇ? 君」
「褒め言葉として受け取りますよ ”クソ魔女さん?”」
ーーー魔女との命がけの時間稼ぎが始まる。俺はこの夏のことを生涯忘れることはないだろう。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
自分で決めといてあれですが、認識疎外の魔法設定が結構後付け感強くて申し訳ないです。
一応条件付けできるけど範囲が小さくなる仕様になります。
File-0で監視カメラに映ったのは魔女が条件付けミスったせいにしています。
次回は、命がけの時間稼ぎ戦闘回です。
更新は6月16日(月)20:00くらいに更新予定です。
感想等も拝見しますのでよろしくお願いいたします。