第10話 影と己
僕は相手の影妖鬼に手を振り下ろした。その時、背中の円陣の剣が影妖鬼へ飛び、一刀両断した。影妖鬼がそのまま倒れたと思ったら、帝に吸い込まれた。
帝に吸い取られた影妖鬼の
影が融合し、新しい影を生んだ。その見た目は甲殻類の触覚に蟹とエビの鋏をつけその口からは黒い泡をはいている。そいつはこちらをぎろりとにらんで攻撃を仕掛けてきた。その速度すさまじく海洋生物のシャコのように速いパンチを高速で繰り出してくる。そのパンチをよけるので精いっぱいだ。しかも一発一発が重いことがわかる。空気が揺れて後ろの壁に小さいクレーターがいくつもできている。そこにいくつもの泡が混じることで視界が遮られる。その泡の数はどんどん増していく。その泡に触れてしまった。その泡は爆発しそのまま、敵のほうに飛ばされてしまう。そのまま飛ばされないように両手で防御の態勢に入る。相手の影のこぶしの重さに耐えられず後ろの壁に飛ばされてしまう。意識が飛んでしまいそうだ。
「...おい...起きろ...」
「無意識に声のほうに拳を繰り出す。」
「おい、意識を持っていかれてはなんもできん。」
「お前は今、美優の力を無意識に使っている。それではお前の体がもたん。美優と契約をするんだ。」
「美優はもういないんだよ!!」
「生きている。現時点でお前が使えている力が誰のものかわかっているのか」
「み、美優の力なのか?」
その時、上のほうから光が漏れ出し、その光の中の女性がふわりと降りてきた。
「あなたは私のことを覚えていますか。」
「キャンプの時のあの夢の女性?」
「あなたを救うとき、私は少しペナルティを受けました。それは人間となることです。影妖鬼は、人間を死の淵から救うことを禁じられていました。ですが一回破ってしまえば、もう縛りがなくなるのです。そして美優として死んだとき私の中にあった影があなたに取り込まれたときにもう一度影妖鬼として復活することができました。ですがあなたは契約外で力を使っています。まだ鼬鬼と刀鬼の力で消耗を抑えられている状態です。」
「私ともう一度契約をして、私たちと闘ってくれますか?」
「わかった...契約だ」
その頃、帝の影妖鬼は僕にとどめを刺そうとしていた。
だが帝が静止させ、こちらに近づこうとした時だった。
河喜の体が光に覆われた。帝は思わず目をふさぐ。河喜の横には白い髪の和服を着た女性の鬼が立っていた。右手には剣が握られていた。河喜の右手には日本刀が握られていた。
握られた剣には白く透き通ったオーラが日本刀には赤と緑のオーラがまとわれていた。帝の影妖は畏怖したようで冷静さを失い、攻撃を開始した。だがそれもむなしく、二人が刀を同時に一振りする。
「白黒影陽」
音のない静けさの中、切り裂かれ、影妖鬼は叫び声をあげて塵となった。力を使い終え元の姿に戻った。影を回収しようと念ずる。その時だった。
ヒュンッ!!
猫が飛んできて影をすべて回収してしまった。
「お見事だ。だが回収はさせないよ。」
声が上のほうから聞こえた。ふとそちらを向くと、猫のお面をした青年がすぐそこに立っていた。その子はフードをかぶり高いところから僕たちを見下ろしている。その時を見計らって帝は逃げ出したようだった。
「まぁ今回は君の勝ちだよ。だけど、まだ君にはあの計画を邪魔されては困るじゃあね~」
そのまま青年は去ってしまった。もう追いかけるにもどこに行ったのかわからなかった。僕たちは家に帰り治療をした。その後、風呂に入っている時だった。鬼の角が生えて和服を着た小さい鬼が出てきた。
「うわっ!!」
するとその2人が少し高い声で
「おいお前俺らがわからんのか。」
「え?もしかして刀鬼と鼬鬼?」
「そうだよ、なんか出れるようになったんだ!!」
「美優は普通に人間に戻れたらしいぞ多分今はキッチンにいるはずだ」
僕は風呂を出てキッチンへ急いだ。美優を見つけた時とても涙が流れた。美優はとてもびっくりしているようだが、僕のほうに来てやさしく抱きしめてくれた。僕は今までにないくらい涙を流した。僕は美優が作ってくれたご飯を食べて、泣きつかれたのかそのまま寝てしまった。
次の日の朝、僕たちは会議を開いた。あいつらの目的のこと、ぼくらができること、僕は力を使いこなすために特訓をすることになった。
僕がすることは影妖鬼の力を使わずに自分専用の武器が使えるようになること、自分が思う武器がよく思い浮かばない。その時ふと、猫の爪が思い浮かんだ。その時だった手に黒い影が包み鋭い爪を生成した。それは手の甲から生えた爪のようで4つある。だけど僕が持続できる時間はそう長くなくもって30秒だった。とりあえず自分が思う武器は完成した。でも30秒では何もできないだろう。だが対処方法はあるらしく影を増幅させコントロールする方法があるらしく、その方法を聞いてみた。
手順1、負の感情を影として器にためる。
手順2、その影を使って、自分の分身となる影を形成する。
手順3、その分身に核となる自分の使う影で作った武器ををいれること。
手順4、その分身と契りを交わす。
僕はこの手順をすべてやり遂げなんとか自分の分身を作ることができた。その分身は自分と一心同体らしく自我を持たせても本体に逆らうことはないということだった。だが僕に自我を持たせることはまだ困難らしいので今は、影を入れてコントロールをしているといった状況だ。
今日はとりあえずここまでにして休憩しよう