案件97.茅(かや)公園集団暴行殺人事件
黒火手団の3人が3級に昇格した翌日、彼らの事務所がある地域は梅雨入りし天気は曇っていた。そんな時バイクに乗った女性が、事務所にやって来るとカネリが出迎えた。
「待ってたぜホタビ!」
「3級昇格おめでとうカネリ!」
温屋ホタビはカネリの旧友であり、看護師を目指す女子大生だ。今日は息抜きするために事務所を訪問し、応接間のソファにゆったり座りながらお互いの進捗を語り合った。
「ホタビはこれからシューカツすんのか!」
「来月から採用試験が始まって、候補の病院を3つ決めてるの。内定が決まれば後は国家試験だけだよ」
「上手くいきゃあ、来年看護師になれるのか!ゲキアツ応援するぜ!」
「ありがとうカネリ」
「そういえば、アゼル君とボンゴラ君は出かけてるの?」
「ああ、図書館で色々調べてて、その間オレが留守番だ」
一方アゼルとボンゴラは、救世会附属図書館に訪れていた。
ここには高ランクの異救者しか閲覧できない機密情報が保管されており、3級に昇格した二人は黒理家に関する情報と、復讐に燃えるコズドを救う手がかりを探しに来たのだ。
「3級が入れるのは資料室レベル2だよね?」
「そうだ、入室時間は限られている、無駄な情報を集める暇はないぞ」
アゼルとボンゴラは、受付スタッフから通行証を借り資料室レベル2に入ると、設置されているパソコンの前に座りキーワードの入力を始めた。
(黒理家と捻生ホドク・・・0件。やはり3級程度では閲覧出来ないか・・・)
アゼルは直接の関わりはないとは言え、自分の身内の誰かがバークの兄を殺してしまったことに少し負い目を感じていた。
一方ボンゴラはキーボードに慣れてないのか、おぼつかない手で入力していた。
(基本スマホだからやり辛いな・・・。先代じゃなくて、9代目聖女暗殺事件っと)
検索ボタンを押すと、なんと千件以上の関連項目が現れてボンゴラは驚いた。
(これじゃあキリがない!だったら、浅刺コズド・・・)
ボンゴラは検索欄に追加入力して検索ボタンを押すと、十数件にまで絞り込めた。
(よし!関連度が高いのは・・・ん?【茅公園集団暴行殺人事件】?これって確か、アイカ様が暗殺された後に起きた・・・!)
ボンゴラはハッと何かを思い出したかのように、その項目を入力して詳細を調べ始めた。
茅公園集団暴行殺人事件とは、9代目聖女暗殺事件から2ヶ月後に起きた未解決事件である。
被害者は4人の親子とされ、一般人による暴行の末3人が死亡し残る1人は行方不明。遺体の損壊が激しく発見が日をまたぎ、身元の特定はほぼ不可能だった。
現場の足跡から加害者は5人以上いると推測されるも、人気のない深夜の公園で起きた事件のため、目撃情報はほとんどなく今でも警察が情報提供を求めていた。・・・表向きには。
(テレビやネットでは報道されてなかったけど、被害者の正体は・・・コズドと彼の家族!!)
パソコンの画面には、当時のコズドと彼の家族と思われる名前と顔写真、年齢などがはっきりと記載されていた。殺された三人は、コズドの母親と妹二人だったのだ。
コズドの父浅刺カズトは、9代目聖女暗殺事件の容疑者である。大勢から慕われていた彼女を殺した大悪党の身内だから、凄惨な私刑の末に殺害したという動機が考えられる。
このような暴徒による被害を防ぐため救世会はメディアに呼びかけ、9代目聖女暗殺事件に関わった人たちの情報をほとんど非公開にした。
(酷すぎる!どうしてこんなことができるんだ!?)
ボンゴラは以前、さらわれた人々を救うべくコズドに戦いを挑み、彼が自分の過去を語り復讐を誓った時のことを思い出していた。
茅公園で起きた事件を知ることで、彼の怒りと悲しみをほんの少しだけ理解できたと思い、さらに深く調べたが犯人の手がかりを見つけられず退室時間となった。
図書館から事務所への帰り道、アゼルとボンゴラは話しながら歩いていた。
「まさか茅公園集団暴行殺人事件の被害者が、浅刺コズドとその身内とはな。そして加害者に関する情報は、3級では閲覧出来ない可能性もある」
「でも、コズドを救う手がかりはかなり掴めたと思う。また図書館を予約して、情報集めながら方法を考えるよ」
「取り敢えず、事務所に戻ったら昼食だな」
「カネリからのメッセージだと、ホタビさんが来てるらしいよ」
正午を過ぎた頃、アゼルとボンゴラが黒火手団事務所に到着すると、バイクに乗ろうとするホタビに遭遇した。
「あ、アゼル君とボンゴラ君」
「ホタビさん、もう帰るんですか?」
「うん、依頼人が来ちゃったの。また遊びに行くね」
二人はホタビがバイクに乗って帰るのを見送ると、事務所に上がり応接間へ向かった。そこに座っていたのはカネリと、小柄な体型でおどおどした様子の中年男性だ。
「お前ら戻ったか!」
「その男が依頼人か?」
「このオッサン、悪堕者に狙われてんだって」
アゼルとボンゴラは応接間のソファに座り、中年男性から事情を聞いた。
「おれは沼中カシュー、一週間以上前から悪堕者に追われてるんだ・・・」
「よく一週間も逃げ切れたな!」
「その間他の異救者に、助けを求めなかったのか?」
「あっいや、近くに異救者がいなくて・・・」
「あなたが狙われている理由に、何か心当たりは?」
「さあ・・・おれにもさっぱり・・・」
「まあ心配すんなって!オレたちが守ってやっから!」
「あ、ありがとう・・・」
カネリがカシューの右肩に手を当て励ましていると、ボンゴラが壁の向こうから強い殺気を感じた。
「みんな下がって!!」
その直後、壁が裂けると同時に巨大な斧が現れ、ドォンという音と共に応接間の床をソファごと叩き割った。
「全員無事か!?」
「カシューさんも大丈夫だ!」
「ゲホッゲホッ、ダレだこのヤロウ!」
壊れた壁の向こうから現れたのは、黒火手団と因縁の深い赤と紫のボディを持つ鬼のような闇異だ。その姿を見たカシューは、酷く怯えた表情を見せた。
「ヒッ!ア、アイツだっ!!」
「どうしてお前がここに・・・浅刺コズド!!」
突如現れたコズドことアダウチオニは、今までの比ではない怒りに満ちた形相をしており、顔には血管が浮き出ていた。
「やっぱりここにいたか、沼中カシュー!!」
To be next case




