案件93.期待の超新星
期待の超新星の一人タズネは、ヘラヘラと愛想笑いしながら面接官に自分の意見を述べた。
「前回とほぼ同じですけど、おれが元いた世界はクソでした。残業代も休みもないし、挙げ句にゴミを捨てるようにリストラされ、再就職のメドも立たず、どれだけがんばっても報われない毎日を過ごしてきました」
「初めてこの世界に迷い込んだ時、小説で読んだ憧れの異世界だと喜むも結局はクソでしたが、それでもかなりマシだと思ってます」
「何故ならここでは人助けをがんばるだけで、それなりの見返りと現状を変えるチャンスがあるからです。それに一番人助けした奴が救世主になって、世界を思い通りに救えるなんて最高じゃないですか」
「なので、今よりマシな暮らしをするため救世主を目指します。ついでにみんなの暮らしもマシにします。以上です」
死んだ魚のような目で愛想笑いを絶やさないタズネに対し、アゼルとカネリは対抗心を剥き出しにしたが、ボンゴラは静かに見つめていた。
(くっ!こんないい加減な男に、スコアで負けるとは・・・!)
「さっきからずっとヘラヘラしやがって・・・!」
(元いた世界で相当苦労してたんだな・・・)
「ありがとうございます。続きまして、星乃ステキラさんお願いします」
超新星の紅一点であるステキラは、少し緊張しながらも真剣な表情で自分の考えを述べた。
「わっわたしは小さい頃から、人々を守り救う異救者にずっと憧れ、彼らのようになりたいと思っていました!でもまさか浄化の力に目覚め、たくさんの人を救えることが今も信じられないです!」
「仲間や周りの人たちは、あなたなら救世主になれると言ってくれました!わたしはこれまで支えてくれたみんなの期待に応えたい、そして救世主になってみんなが幸せで笑顔になれる世界を実現してみせます!!」
ステキラは緊張し過ぎたのか息を荒げていた。カネリは一層対抗心を燃やすが、アゼルは冷ややかに分析していた。
「だれであろうとゲキアツ負けねえ・・・!」
(能力に対し経験が追いついてないな、ああいうタイプは長く持つまい)
(やっぱり素直な子だな・・・)
「ありがとうございます。最後に照世ミュカさんお願いします」
ミュカは周囲のプレッシャーを物ともせず、淡々と自分の信念を語り始めた。
「ぼくは勇者として、救世主を超える。そのために生まれ、今日まで人助けに励んできました。この考えが揺らぐことは、決してありません」
「きゅっ救世主を超える勇者だとぉおおお!!?」
カネリが思わず立ち上がり叫んだため、アゼルとボンゴラが彼女を止めに入った。
「この馬鹿黙れ!」
「落ち着いて試験だよ!」
ミュカは騒ぎを気に止めることなく、自分が救世主になった後のビジョンを説明した。
「そしてぼくが世界を救う力を手にしたら、まず全ての闇を完全に消し去ります」
「闇を・・・!?」
「消し去る!?」
ミュカの発言にアゼルとボンゴラも思わず声を上げ、アゼルがミュカに問い詰めてきた。
「照世ミュカ、闇を消し去ると発言したが闇異も該当するのか?」
「?そうだけど」
「ならば闇異に変異した人間はどうなる?それにこの世界の文明は、闇異の力で成立しているのだぞ。貴様が救世主を超えた後、人々の生活はどうなるのだ?」
「人々から闇を完全に取り除くだけだから、命を脅かすことはないよ。それに今では機械という闇異に代わる力がある、君だってその便利さはわかるだろう?」
「っ!」
アゼルは機械を人助けで存分に利用し、失った左側の眼と手足を機械で補っている。ミュカの言葉に反論する余地はなかった。
「闇異は人の手に負えない邪悪な力だ。実際過去にその力を戦争に使って、自分たちを滅ぼしかけたからね。それでもこの力に頼らないと人助けできない現状に、ぼくはいつももどかしさを感じているよ」
そう言ってミュカは、自分の服の胸元を強く握り締めた。
「でもぼくの母国では、浄化エネルギーを動力源とする機械の開発が進んでいる。これは環境に優しく、暴走の危険がほとんど少ない安全なエネルギーだ。ぼくが救世主を超え真の勇者になった時、浄化の力を全ての人に分け与え、闇が存在しない未来永劫平和な世界を築いてみせる」
ミュカの澄みきった眼差しと淀みない発言から、ステキラ、タズネ、アゼル、カネリ、ボンゴラの5人は、彼の本気度を思い知り言葉を失った。
(この世界から闇をなくす!?)
(やっぱりとんでもない奴だな・・・)
(黒極まりない男だ・・・!)
「んぐぐ・・・!」
(ミュカくんの言う通り闇異の力は危険だけど、その力のおかげで救われた人は大勢いる。消し去ってしまって、本当にいいのだろうか・・・?)
こうして集団面接は終了し、黒火手団を含む受験者たちは実技試験を控えていた。
「実技を突破すれば3級試験は終わりだよ」
「ジツギって何やるんだ?」
「人命救助及び変異を伴う実戦テストだろう」
3人が話していると、会場内にアナウンスが響き渡った。
『続きまして黒火手団の皆様、4番の部屋に入って下さい』
「お、呼ばれた」
「まさか超新星たちと戦うってことにならないよね?」
「ビビんなボンゴラ!」
「誰が相手でも黒に決めるだけだ」
黒火手団が4番の部屋に入り待ち受けていたのは、矛貫隊の新人隊員、リンドー、バーク、トゥエバ、ソラノの4人だった。
「矛貫隊!?」
「・・・中々厄介なだな」
「お前らも3級試験を受けに来てたのか!」
「ちげぇよ、オレ達がテメェらの試験官だ!」
「アタシたち聖明機関は、お前たちの倍の訓練期間を経て入隊するから、3級から始まるんだ」
「ということで、みんなよろしくッス!」
「これから実技試験のルールを説明するね」
「君たちは開始から3時間以内に、要救助者を模したロボットを守りながら、わたしたち4人と戦ってもらいます。わたしたちを全員撃破するか、ロボットがゴール地点に到達したら3級試験は合格。そして制限時間を過ぎたり、ロボットが少しでも傷ついたら失格だよ」
「ちなみにこれが、要救助者ロボットッス」
「ドーモ、クロビテダンノミナサン、ヨロシクオネガイシマス」
要救助者ロボットは腰が酷く曲がり、杖をついて身体中がピクピク震えていた。
「ロボットの動力には発信機がついてるから、隠してもムダだからな」
「そしてロボットの改造も失格だ」
「待って下さい、3対4でロボットを守る必要があると、おれたちの方が不利じゃありませんか?」
「そーだそーだ!ゲキアツ不公平だぞ!」
「その不利な状況を打開するのが今回の試験だ」
「言っておくが、オレたちは遠慮なくロボットを狙いに行くぜ」
「実技試験開始は今から30分後。時間になったらそこにある、試験会場行きのワープゾーンが起動するよ」
「ゴール地点などが書かれた地図はスマホに送っといたッス、添付したパノラマ画像で中の様子もわかるッスよ」
「一つ聞きたい、この実技試験も矛貫オスタが指揮をとるのか?」
「隊長や副隊長が出るまでもない、お前たちの相手はアタシたちで十分だ!」
リンドーたちは実技試験のルールを一通り説明し、要救助者ロボットを残して部屋から出て行った。黒火手団は実技試験を突破し、3級に昇格できるのだろうか!?
To be next case




