案件91.矛貫隊と堕悪(だあく)トリオ
2025年最後の投稿です、皆さんよいお年を!
「矛貫オスタ隊長に、敬礼!直れ!休め!」
デス・シンテージ事件の翌日朝7時、矛貫隊支部は朝礼を行っていた。
「みんな、昨日はご苦労だった。そして俺の落ち度で、危険に晒してしまい済まなかった」
オスタは部下たちを労うと同時に、サエラに作戦を読まれたミスを謝罪した。するとリンドーが反論してきた。
「隊長は何も悪くありません!あなたの判断は最善でした!」
「結果は結果だ。それよりモズ、トゥエバ、身体はもう大丈夫なのか?」
「押忍!ボンゴラくんやズイさんのおかげで、自分はこの通り絶好調ッス!」
「ご心配をおかけしました」
「二人の体調は、俺が保証する」
「ズイさんが言うなら大丈夫だな」
「それとバーク、黒理アゼルの件で勝手な事をするな。ルールを貫き通せ」
「うっ、すんません・・・」
「隊長、そろそろ本題に入りましょう」
「ああ、まずはデス・シンテージについてだ。生産プラントに残された僅かなデータや、手差ボンゴラの協力もあって解呪法が確立した。また呪われてもすぐ対処できる」
「あれほど強力な呪いは、そう簡単に新しく作れない。しばらくは大丈夫だろう」
「最近は悪堕者の影響で、人々の心の闇が高まり聖女の負担が増えている。俺達も今まで以上に些細な闇の芽を摘み、これを阻止しなくてはならない」
「ルールを貫き、奴らの目論見を徹底的に叩き潰せ!」
「「「了解!!!」」」
朝礼の後、隊員たちは通常業務や案件を始め、執務室はオスタとフロンだけになった。オスタは自分のオフィスデスクでパソコンを操作し、ボンゴラの情報を閲覧していた。
「手差ボンゴラ、か・・・」
「気になるの?」
「部下の命の恩人だからな。かといって忖度はしないが」
「彼の浄化能力、ヌクラマ国にいた時よりさらに強くなってるわね」
「ちょうどあの時も、シンテージが絡んでたな」
「手差ボンゴラといい、今年度は豊作ね。人数も質も」
「聖明機関も豊作だが、浄化できる新人が例年より多い。しかもそいつ等に限って、スコアが群を抜いている」
「特に話題なのは、救光の勇者【照世ミュカ】、魔異少女隊エース【星乃ステキラ】、異世界から来た男【渡タズネ】、そして黒火手団の代表手差ボンゴラ」
「彼らを含め入団から2ヶ月半で、3級試験に臨める新人が10人以上いるのも前代未聞ね」
「相手が誰だろうと、ルールを貫き通せない奴は取り締まる。それだけだ」
「そうね、あなたが救世主になるためにも―」
一方、矛貫隊支部から遠く離れた絶海に、誰も知らない孤島があった。そこにある中華様式の豪邸はラビライザの別荘で、コズドとケラシルが招かれていた。
「ようこそ、私の別荘へ」
「何十人住めるんだ?」
「これが別荘なら、実家は何倍あるわけ?」
「つか何でテメェがいんだよ?」
「彼女と組んでメリットがあるか、見定めに来たのさ」
「早くお入りなさい、お食事が冷めてしまいますわ」
ラビライザに案内されて食堂に入ると、豪華で夥しい数の中華料理が立ち並び、コズドとケラシルは思わず息を飲んだ。
「・・・ゴクリ」
「満漢全席?」
「ご名答、用意したのは私の可愛い従者でしてよ」
「アメセラと申します。コズド様、ケラシル様、以後お見知りおきを」
アメセラは後ろにまとめた団子ヘアで、慎ましい中華服を纏い、そばかすがある控えめな女性だ。
「さあ二人とも、アメセラ自慢の料理を召し上がりなさい!」
三人はアメセラが用意したご馳走に手をつけていた。コズドはアヒルの丸焼きをそのままかぶりつき、ケラシルは棒々鶏やクラゲの冷菜を口にし、ラビライザは食事中でも上品な立ち振舞を崩さなかった。
「お味はいかがかしら?」
「中々、んぐ、美味ぇじゃねえか」
「悪くはないね」
「もっと具体的に言いなさい!」
「!ションベン行ってくる」
「場所知ってんの?」
ラビライザはデリカシーのないコズドに溜息をつきながら、アメセラを呼び出した。
「案内してあげなさい」
「かしこまりました、お嬢様」
「コズド様、こちらでございます」
「おう」
コズドが食堂から離れたタイミングで、ケラシルがラビライザに話しかけてきた。
「ねえ、『例のモノ』、ちゃんと用意したんだろうね?」
「せっかちですわね、ほら」
そう言ってラビライザは、白い円柱状の容器をケラシルに渡した。容器の蓋を開けると中には丸い錠剤がいっぱい入っており、ケラシルは鼻を近づけ匂いを嗅いだ。
「・・・本物みたいだね」
「私と組めば、それがいつでも手に入りますわ。協力する気になって?」
「いいよ。ただしこのこと、コズドに黙っててくれる?」
「あなたのプライドの高さは、彼といい勝負ですわね」
コズドがトイレから戻り、三人はご馳走を完食した。
「ラビライザ、そろそろオレの仇を教えろ!」
「その前に、やるべきことがなくて?」
「やるべきこと?・・・ああ、ごちそうさま。お前の手下が作ったメシ、美味かったぞ」
「そうですけど!それより重要なことがありますの!」
「君って意外と律儀だよね」
「私たち三人がチーム一丸となり、共に悪を極める誓いの儀式でしてよ!」
ラビライザはビシッとポーズを決めたが、コズドとケラシルは乗り気ではなかった。
「このスカシ野郎と?」
「そういうノリ、マジ冷めるんだけど」
「お黙りなさい!あなたたちの目的に協力し、衣食住を提供してるのですから、拒否権はなくってよ!!」
「オレはこの前、復讐をバカにしたコイツとは組まねえ」
「は?そんなことまだ根に持ってるわけ?」
「ならケラシル、コズドに謝罪なさい」
「はああ!?なんで僕が―」
「例のモノ、要りませんの?」
「ぐっ・・・!」
「例のモノ?弱み握られてんのか?」
ケラシルは苦々しい顔で、コズドに頭を下げた。
「・・・悪かったよ」
「あ?よく聞こえねえぞ」
「悪かったって言ってんだよ!耳腐ってんの!?」
「その程度で許すかバーカ!土下座しろ!」
「っ!下手に出ればいい気になって・・・!」
「はいはい、二人ともそこまでになさい」
「コズド、これでケラシルと組む気になって?」
「チッ、しょうがねえなあ」
お互い渋々ながらも組む気になったところで、アメセラがワイングラスを用意し液体を注いだ。
「酒か?」
「僕、未成年なんだけど」
「ご安心なさい、ただのライチジュースでしてよ」
「これより!『堕悪トリオ』結成を記念して、乾杯ですわ!!!」
ラビライザはグラスを掲げて高らかに宣言すると、アメセラが円形の金属製打楽器ドラをばちで叩きジャ~ンという音が鳴り響いたが、コズドとケラシルは変わらず乗り気ではなかった。
「かんぱーい(棒読み)」
「ネーミングセンスなさすぎてマジ冷めるわ」
「もっと景気よくやりなさい!!」
新たなライバルの存在が示唆され、悪堕者の強敵たちが徒党を組み始めた。負けるな黒火手団!人助けでスコアを稼ぎ、救世主の座を勝ち取るのだ!!
To be next case




