案件87.魔が宿る眼
その頃デス・シンテージの呪いに倒れたボンゴラたちは、聖明機関の医療施設で治療を受けていた。彼らがいる集中治療室は、生体情報モニタの電子音や医療隊員たちの対応で慌ただしくなっていた。
「血圧、心拍数が安定しました!」
「呪い緩和の御札をすぐ交換できるようにしろ、輸液もそろそろだ!」
矛貫隊の医療隊員ズイナンは、ベッド上で苦しそうにするボンゴラと自身の後輩たちに、申し訳なさそうな顔で声をかけた。
「済まんな、俺達に出来るのは少しでも苦痛を和らげることくらいだ。ん?」
その時ズイナンはボンゴラの枕元に、彼が愛用するピンク色のマフラーが置かれていることに気づいた。
「おい、手差ボンゴラの私物、持ってきたの誰だ?」
「そんなヒマだれもありませんよ!」
(確か・・・幼馴染のプレゼントだっけ?お前さんも心配だよな・・・)
ズイナンはマフラーに彼女の意志が宿っていると感じ、そのままにして治療を続行した。
場面は変わりカネリファイヤは、不滅氷のリベンジマッチに挑むも苦戦を強いられていた。
『冷視線』
不滅氷の指先にある眼から、冷凍光線が連続で放たれた。見通しが良く、砂で足を取られる浜辺では思うように動けず、カネリファイヤは避けるので精一杯だ。
「さっきの威勢はどうしたんだ?少しでも反撃してきなよ」
「うるせぇぞ冷め太郎!」
「冷め太郎?もっとマシな呼び方ないわけ?語彙力なくてマジ冷めるわ」
その直後ついに『冷視線』が命中し、カネリファイヤの左腕が凍結してしまった。
「冷てっ!」
「よく冷めるだろ」
「僕の『凍てつく呪い』は、そう簡単に解けやしない。猛暑でも快適に過ごせるんだ」
「フザケんな!夏はゲキアツでなんぼだろ!!」
カネリファイヤは左肩を庇い、不滅氷の猛攻を掻い潜りながら砂浜にポツンとある大きな岩へ避難した。そしてその様子を見ていた不滅氷は、深い溜め息をついた。
「逃げるとか余計冷めるし」
不滅氷がゆっくりと迫る中、カネリファイヤは岩の陰で口から炎を吐き、凍りついた左腕を解かしていた。
「クッソォ!手も足もだせねえ!」
『しっかりしろ激熱カネリ!』
カネリファイヤの窮地を見かねたリンドーとソラノが、脳内からの通信で助言をした。
『カネリさん、まずは相手を見て属性を見極めよう!』
「ゾクセイ!?冷め太郎は、目がいっぱいあるから・・・アヒルマン!」
『魔眼だ!』
闇異八大属性の一つ【魔眼】は、射撃能力と感知能力に優れている。高火力の弾を連続で放ち、はるか遠くにいる敵の存在を察知し正確に狙い撃つ。
聖女暗殺を目論んだ殺し屋タカモクレンや、ツドウの敏腕秘書ハズミことガニューズメント、そして今カネリファイヤにアドバイスしているリンドーも魔眼である。
「どうしたらブッ飛ばせるんだ!?」
『魔眼は身体能力高くないから、接近戦が苦手だよ!』
「近づきたくても避けられるし、砂で足がっ!」
その時カネリファイヤは、不滅氷の指先にある眼が、力を集中させるかのように輝き出していることに気づいた。
「ヤベッ!アレが来る!!」
『魔氷結凝砲』
パワーを凝縮され放たれた冷凍光線は、大岩に命中すると同時に巨大な氷塊を形成し、岩を周囲の砂場ごと凍結した。一方カネリファイヤは、凍結する直前にその場を離れ難を逃れた。
「さっきからだれと話してるわけ?」
「このヤロウ・・・!」
『落ち着け!魔眼の対抗策はもう一つ、 目を封じることだ!』
『魔眼は目が使えないと、感知する力が弱まって上手く狙えないの!』
「目を封じるだぁ・・・!」
二人の助言でハッと思いついたカネリファイヤは、両拳に火を灯し不滅氷に向かってまっすぐ走り出した。
「うおおおらあああああ!!」
「とうとうヤケになったか、マジ冷め―」
『バーニングストレート!!』
カネリファイヤが不滅氷にギリギリ近づいたところで、足元の砂場に左拳を叩きつけた。すると大量の砂が一気に巻き上がり、不滅氷を飲み込んだ。
「何っ!?」
『バーニングストレート』はヒットと同時にエネルギーを流し込み、相手を内部から焼き尽くす必殺の拳。それを受けた砂浜が、内部で熱膨張し大量の砂を撒き散らしたのだ。
不滅氷は身体中にある眼に砂が入るのを防ぐため、思わず全ての眼を閉じた。カネリファイヤはこのチャンスを逃さず、激しく燃える右拳を構えた。
「この・・・!」
カネリファイヤの接近に気づいた不滅氷は、僅かに眼を開いて冷凍光線を撃ったが、眼が上手く機能せず簡単に避けられてしまった。
「もう一発、『バーニングストレート』ォオオオ!!!」
必殺の拳が不滅氷のボディにヒットし、吹っ飛ばすと同時に彼の身体が爆炎に包まれた。ついにカネリファイヤは一矢報いることに成功したのだ!
「いよっしゃあああああ!!!」
『カネリさんナイス!』
『砂浜を利用したのか、お前にしては上出来だな』
「リンドーとソラミのおかげだ、ゲキアツありがとな!」
『だ~か~ら~、ソラノって言ってるでしょう!!!』
その時不滅氷がゆっくりと立ち上がり、全身に酷い火傷を負いながら海の方へ逃げていった。
「くっ!今回は・・・このくらいにしてあげるよ・・・!」
「逃さねえぞ冷め太郎!」
『待ってカネリさん!そんな奴ほっといて合流しよう!』
「いいや二度とジャマできないよう、ブッ飛ばしてやる!」
カネリファイヤが、不滅氷にとどめを刺すべく海面に足を踏み入れた瞬間、不滅氷の尻尾の先端にある眼から冷凍光線が放たれ、カネリファイヤの足元を凍らせた。
「あ」
「・・・はあ、こんな単純な手に引っ掛かるとか、マジ冷めるわ」
不滅氷はカネリファイヤの動きを確実に止めるため、わざと海の方へ逃げて誘い出したのだ。状況は再びカネリファイヤが劣勢になってしまった。
同じ頃、浜辺から遠く離れた廃墟の街にいる黒皇は、脳内通信でカネリの失態を知り呆れ返っていた。
「何をしているのだカネリ・・・!」
「妹より自分を心配なさい」
パボドレスと戦っていた黒皇もまた苦戦を強いられ、ひどく傷つき義手義足の一部が破損していた。一方パボドレスはほぼ無傷で、空中で翼を羽ばたかせながら余裕そうに見下ろしていた。
死の呪い発動まで、あと20時間30分!!
To be next case




