案件85.闇深ゲーム開幕!
死の呪いに苦しむボンゴラたちをズイナンに任せ、アゼルとカネリは呪いを解くため矛貫隊の新人隊員3人と、悪堕者のアジトの乗り込むことになった。
5人はアジトにつながるワープゾーンに到着すると、ツドウの秘書ハズミと矛貫隊副隊長のフロンが待っていた。
「Msハズミ?」
「副隊長、アタシたちしかいないのですか!?」
「残念だけど、見ての通りよ」
「救世会は今回も陽動と判断し、アジトに突入する異救者を最小限に留める判断を下しました」
前回ショッピングモールの火災で手薄になった霧明隊支部襲撃を反省し、異救者たちはなるべく持ち場から離れないようにしているのだ。
「んで、手の空いてる俺等が選ばれたっつーワケか」
「貴方方と一緒にしないで下さい、私は他の業務に追われる中ツドウさんに頼まれ『仕方なく』今案件に参加したのです」
「御主人様と離れ離れになって、あなたも残念ね」
冷静を装うも少し不機嫌なハズミと、不敵に微笑むフロンは静かに火花を散らしていた。この二人の関係は、インターンの頃から変わってないようだ。
「二人ともここは協力しましょうよ・・・」
「あと30分でワープゾーンが起動する、作戦があるなら黒かつ手短に説明しろ」
「まず二手に別れて解呪法を探しましょう、私とアゼルとカネリのA班と矛貫隊4人のB班で」
「それが妥当ね」
A班はハズミ、アゼル、カネリの3人。B班はフロン、リンドー、バーク、ソラノの4人で構成される。
「だが万一、班全員が散り散りになった際はどう対応する?」
「その時は味方との合流を優先、単独での戦闘は極力避けることね」
「今回に限り、矛貫隊と連絡先を共有しましょう」
異救者たちがスマホで連絡先を共有している中、カネリだけが上手く操作できず悪戦苦闘していた。
「ううう・・・どうなってやるのかゲキアツわかんねえ・・・!」
「黒に世話の焼ける妹め、貸せ」
「カネリ、有料アップデートをインストールするぞ。そうすれば変異中、脳内でスマホの機能を使用出来るようになる」
「よくわかんねえけど、うっかり力入れて壊さずにすむんだな!」
異救者を管理・支援する救世会は、スコアと引き換えに人助けに役立つ便利なグッズやサービスを提供しているのだ。
しかしアゼルとカネリがスマホでやり取りしている様子を、バークだけが不満そうに見ていた。
(ケッ、黒理家と組むなんて冗談キツイぜ!)
カネリのスマホが連絡先の共有を終えたその時、ワープゾーンが起動し異空間への道が開かれた。
「始まったか!」
「みんな、くれぐれも無茶はしないで!」
「待ってろよボンゴラ!今度はオレが助けてやるぜぇ!!」
「「「変異!!!!!」」」
7人の異救者は一斉にワープゾーンに入り、悪堕者のアジトへ突入した。死の呪い発動まで、あと24時間!
その頃サエラは手下と共に、異救者たちをモニター越しで眺めていた。
「クックックッ、まさに飛んで闇に入る異救者だな」
「今回は陽動に引っかかりませんね・・・」
「そう気を落とすな、人数が減れば解呪法を見つける確率が落ち、デス・シンテージの被害者は全滅する」
「結局はやったもん勝ちなんだよ。お前たちも楽しもうぜ、この闇深案件を」
サエラが後ろを振り向いた先には、大勢の悪堕者が控えていた―
「・・・一体どうなってんだ?」
カネリことカネリファイヤがワープゾーンの先で見たものは、青空が広がり静かな波の音が聞こえる海辺だった。聖明師に変異したリンドーとソラノも、カネリファイヤの近くで周囲をキョロキョロと見回していた。
「ここがアジト?幻を見せられてるのか?」
「それより、わたしたち3人しかいないんだけど」
その時3人の頭の中から、フロンの声が聞こえてきた。
『みんな落ち着いて!これは悪堕者が作った異空間よ。わたしたちは別々の場所に飛ばされたわ』
「ですが副隊長、落ち着く場合じゃなくなりました・・・!」
なんと砂浜や海中から、次々と悪堕者の戦闘員が現れたのだ。
「へ~いカワイコちゃ~ん」
「オジサンたちと遊ぼうぜ~」
「いいぜ、ゲキアツな火遊びなら、燃え尽きるまで相手してやるよ!!」
一方黒皇と聖明師に変異したバークは、荒廃した街の中で悪堕者の集団と戦っていた。
「クソ最悪だぜ!よりによってテメェと一緒とはなあ!!」
「そんなに不満なら独りで戦ってろ」
バークは殴りかかってきた悪堕者をかわし、オーラを纏った右手で敵の腕を横に引っ掻いた。
『ツイストクロー!!』
次の瞬間、悪堕者の腕が物凄い勢いで回転し、ねじ切れてしまった。
「ぎゃあああああ!!!」
「軽く捻ったぐれぇで、ギャーギャー喚いてんじゃねえ!!」
「深手で負わせるな!こいつらもデス・シンテージを使用している可能性があるんだぞ!」
「黒理家がオレに指図すんな!」
特定危険呪物、デス・シンテージを使用した闇異を倒すと、その報復として死の呪いを受けてしまう。バークもそれはわかっているようで、腕が失い悶え苦しむ悪堕者を追撃しなかった。
「チッ、とんだクソゲーだぜ!!」
(触れた対象をねじ切る、これが捻生バークの異能か・・・)
同じ頃、ハズミことガニューズメントと聖明師に変異したフロンも、薄暗い洞窟の中で悪堕者たちと交戦していた。
「いいかヤロウ共!敵は撃破せず足止めし、ムダな戦いを避けながら合流しやがれえええええ!!!」
フロンが冷気を帯びた刀で敵を次々と凍結させる一方で、ガニューズメントは離れた場所の仲間に注意を呼びかけながら、銃を派手に乱射し悪堕者たちの手足を撃ち抜いた。
「変異すると豹変するのは相変わらずね、それと説得力がないわよ」
「黙れオスタの腰巾着!」
「異救者はどこだ!?」
「このあたりにいるかもしれないぞ!」
カネリファイヤ、リンドー、ソラノの3人は、悪堕者から身を隠すため浜辺にある岩場の陰に潜み、カネリファイヤとソラノが小声で話していた。
「カネリさんいい?自分が今どこにいるのか知りたいって考えると、目の前に画面が現れるの。画面の中心にある赤い点がきみで、周りにある白い点が味方。そして白い点を指で押すと味方の名前が表示されるの」
「へーゲキアツ便利!スマホをアップリケしたおかげか!」
「それを言うならアップデート」
「副隊長が合流地点にマーカーをつけた、そこを目指すぞ!」
死の呪い発動まで残り23時間になった頃、黒皇とバークが合流地点に到着した。
「どうやら俺達が一番乗りのようだな」
「・・・黒理アゼル、テメェに聞きたいことがある」
黒皇に問いかけるバークは、聖明師に変異したため表情は読めないが、声のトーンからただならぬ様子だ。
「何だ?好きな色は黒だが」
「聞いてねえよ。オレの兄貴、『捻生ホドク』を殺ったのはテメェなのか?」
To be next case




