案件84.呪われた挑戦状
「ボンゴラおい!しっかりしろボンゴラぁ!!」
闇異根絶団の解散を見届けた後、突然ボンゴラが倒れてしまった。明らかに様子がおかしいため、聖明機関の医療施設で緊急入院することになった。
カネリが必死で呼びかけるも、ボンゴラはさっきよりも顔色が悪くなって衰弱し、酸素マスクや点滴を施された状態でベッドに乗せられ、集中治療室へ運び込まれた。
「どうしちまったんだよボンゴラ・・・!」
集中治療室の前でカネリは居ても立ってもいられず歩き回り、アゼルは真剣な表情でスマホを操作していた。
「お前はこんな時にスマホいじってんじゃねえ!」
「こんな黒な状況だから情報収集しているんだ!」
「現時点で判明しているのは、各地の異救者がボンゴラ同様倒れたことだ」
「他の異救者もか!?」
「しかも一般人の被害は一切上がってない、これは流行り病ではなく―」
「呪いだよ、それもかなり強めのな」
アゼルとカネリの前に、聖明機関矛貫隊の医療隊員ズイナンが現れた。
「ズイのおっさん!」
「何故貴方がここに?」
「俺の後輩もやられたからだ」
ズイナンが廊下の向こうに目をやると、呪いに倒れたモズロウとトゥエバが仲間たちによって搬送されてきた。
「トゥエバ!もう大丈夫だからな!」
「ズイさん!二人のことお願いします!」
「ああ、お前たちは前で待ってるんだ」
「アイツらもやられたのか・・・!」
「呪いに耐性がある聖明師すらか・・・」
ズイナンが集中治療室に入った後、アゼルとカネリ、矛貫隊の新人隊員リンドー、バーク、ソラノの合計5人は、ソワソワした様子で仲間の無事を祈っていた。
「激熱カネリ!ウロウロするな!」
「お前らだってゲキアツウロウロしてるだろ!」
「テメェほどじゃねえよ!」
カネリがバークとリンドーと一触即発になったため、アゼルとソラノが止めに入った。
「こんなことで体力を無駄にするな!」
「そうよ二人とも、ズイさんたちを信じて待とう」
その時カネリは、ソラノに対しある疑問を抱いた。
「アレ?お前見ないツラだな、新入りか?」
「いやきみとわたし、初対面じゃないんだけど」
「わたしは常平ソラノ!きみが初めて矛貫隊支部に来た時、スマホで黒皇を見せたでしょ!」
ソラノが初めて登場したのは案件29であり、この時はアゼルが悪堕者に寝返った疑いで隊長のオスタから尋問を受けていた。
「そんな前のこと覚えてねえよ・・・」
「まだ一ヶ月も経ってないでしょ!」
「熱くなんなソラノ、コイツはバカだから影が薄いお前なんていちいち覚えてねえよ」
「だれがバカだこのヤロウ!」
「影が薄いですってぇ!?」
バークは軽薄な言動でカネリとソラノを怒らせてしまい、二人に詰め寄られ怖気づくと、アゼルとリンドーが仲裁に入った。
「治療中に騒ぐんじゃない!」
「隊長はソラノのこと、ちゃんと見てるから・・・」
その時、集中治療室からズイナンが出てきたため、一同が駆け寄り仲間の安否を確認した。
「ズイさん!」
「ボンゴラは助かったのか!?」
「・・・いや、3人は厄介なことに『死の呪い』をかけられている」
「死の呪い!?」
「じゃあ助からないんですか!?」
「まあ落ち着け、即死するタイプじゃない」
「今本部で解呪法を模索している、問題はそれまで持つかどうかだ。俺達もできる限り手を尽くすが・・・」
「そうだ!マナキを呼ぼう!アイツなら死の呪いだって浄化できるだろ!」
「馬鹿を言えカネリ!」
アゼルはカネリの口を塞ぎ、矛貫隊に聞こえないよう小声で話しかけた。
(ボンゴラと聖女の関係が発覚したら、俺達はスコアを全て失うんだぞ!)
「んまほほいべぶばばひが!(んなこと言ってる場合か!)」
「確かに聖女様なら浄化できそうだけど、来てくれるかな?」
「どうだか、下々数人を助けるためにわざわざ来て下さるのかね?」
幸い矛貫隊の隊員たちは、ボンゴラとマナキの関係に気づいてないようだ。そんな中リンドーが外に出ようとしたため、ズイナンが彼女を止めた。
「だったらアタシが、直談判に行ってくる!」
「待てリンドー、聖女様は大勢の人を救うために忙しいんだ!」
「他になんかないのか!?」
「!SNSのトレンドを見ろ!」
アゼルに言われて一同がスマホでSNSを見ると、悪堕者が犯行声明の動画をアップしていた。そして動画を再生すると、薬液が入ったアンプルを持つサエラが姿を現した。
『ご機嫌よう異救者の諸君、我々が開発した【デス・シンテージ】はいかがかな?』
「デス・シンテージ!?」
『こいつを打たれて変異した闇異は、【自分を倒した相手に死の呪いを与える】。中々の闇深案件だろ?』
「サエラの野郎!またフザケたモン作りやがって・・・!」
「やはりMsミサコとMrボッコが変異したのは、シンテージが原因か」
つまりボンゴラは、デス・シンテージで変異したボッコことボコストロールを撃破したことで、死の呪いをかけられてしまったのだ。
『今頃罠にかかった異救者は、死にかけているんだろうな~かわいそうに・・・。そこで、お前たちにチャンスをあげよう!』
『この動画を投稿してから1時間後、概要欄が示す場所にワープゾーンが現れる。そこは我々のアジトとつながっており、呪いを解く方法が隠されている。仲間を助けたければ、アジトに眠るお宝を見つけ出すのだ!』
『ただし制限時間は、ワープゾーンが展開されてから24時間!タイムアップと同時に、死の呪いが発動してジ・エンド。チャレンジャーは誰が何人来てもOK、持ち物の制限もなし、凶暴な闇異と危険な罠をた~っぷり用意して待ってるぜ。グッドラック!』
サエラの動画が終了した後、バークは顔に血管を浮かせ拳を震わせた。
「クソ野郎が!オレたちとゲームしようってのか!?」
「上等だ!このまま乗り込んでやる!!」
「待てカネリ!これは黒な罠だ、そもそも解呪法があるとは限らんのだぞ!」
「ズイさん、時間までに浄化できませんか!?」
「聖女様でなければ絶望的だな・・・」
その時、矛貫隊のスマホから一斉にメッセージが送信された。
「フロン副隊長からだ!・・・黒火手団と協力して、悪堕者の挑戦を受けろだって!」
To be next case




