案件77.悪堕者の罠
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「だからあれ程、警戒を怠るなと言ったのだ。最近悪堕者が俺達をも標的にしているから」
カネリとボンゴラは、負傷者に扮した悪堕者の分身たちを撃破し、黒火手団事務所で傷の手当を受けていた。
「ごめんアゼル、完全に油断してた・・・」
「本体は見つからねえし、ゲキアツ汚え連中だぜ!」
「以前も話したが、奴等は世界を闇で覆い尽くすために悪事を働き、より多くの人間に恐怖や絶望を与えてポイントを獲得する」
「最近は異救者の活動を妨害することで、ポイントを得ているようだ」
「許せない、人助けを邪魔するなんて・・・!」
「奴らの中でもとくに、シルバーランクの動きが活発だ」
「シルバーって、コズドと同じくらい強えヤツらか!」
「そうだ、悪堕者のランクは3段階あり、下からブロンズ、シルバー、ゴールドと分けられる。当然ランクが上であるほど、実力も悪辣さも黒だ」
「今後はシルバーランクとの戦闘が中心になるだろう、俺達もそれに合わせ強化する必要が―」
その時、3人のスマホが同時に鳴り緊急案件の通知が来た。
「ショッピングモールで火災が発生し、悪堕者の妨害で救助活動が難航、至急応援求むだって!場所は・・・霧明隊支部に近い!」
カネリとボンゴラが出動しようとするが、アゼルが制止した。
「待て!これも罠かもしれないし、先の戦いで消耗しているだろう!黒且つ慎重に動くべきだ!」
「んなこと気にしてたら、だれも助けられねえだろうが!!」
「奴らの卑劣な罠を放置すれば、本来助けが必要な人に手が届かなくなる!絶対止めないといけない!!」
「・・・黒に手のかかる奴等だ!」
2人の熱意にアゼルは折れ、人命救助のため出動することとなった。
黒火手団が火災のあったショッピングモールに到着すると、建物から黒い煙がモクモクと上がっており、他の異救者や聖明機関の隊員も救助に参加していた。
「ボンゴラくんたちも来てくれたのか!」
「ダニュアルさん!」
ボンゴラの旧友であり異救者のダニュアルは、負傷者の手当をしていた。
「モールの中にはまだ逃げ遅れた人たちがいる、彼らを助けてほしい!」
「わかりました」
「それと、これを持っていくんだ」
ダニュアルは御札の束を、ボンゴラに渡した。
「何の御札だ?」
「防火の御札だよ。これを身に着けると、炎や一酸化炭素などから守ってくれるんだ」
「煙を吸っても解毒してくれる、ただし効果は一時的だから気をつけて」
「1枚だけ貰うぞ、残りは全て被災者用だ」
そう言ってアゼルは、左胸に御札を貼り付けた。
「お前だけずるいぞ!」
「お前達には必要ないだろ」
体内で強力な炎を生み出すカネリファイヤと、人命救助を重視したリチャウターは、元々炎や有害物質に耐性があるのだ。
「いつでもいいぜボンゴラ!」
「よし行こう!」
「「「変異!!!」」」
黒火手団の3人は変異して、燃えるショッピングモールに突入した。
モールの内部では炎が激しく燃え盛り、複数の場所から異救者たちの声が聞こえた。
「だれか防火の御札を持ってきてくれないか!?」
「こっちは悪堕者の妨害を受けている!応援頼む!!」
「おい君!力を貸してくれないか!?」
「二人とも、手分けして救助しよう」
「了解だ、防火の御札を更に3分の1貰うぞ」
「オレは悪堕者をブッ飛ばしにいくぜ!」
黒火手団は三手に分かれ、他の異救者と協力して救助にあたった。
黒皇は防火の御札を求める声の元へ向かい、炎と煙で視界が悪くなった通路を迷わず疾走した。あらかじめショッピングモールのマップをダウンロードし、左義眼に映し出していたのだ。
「ここか。おい!防火の御札を持って来たぞ!」
黒皇が到着したのは、1階のフードコートだ。そこでは3人の異救者が結界を張り、中に12人の被災者がいた。
「すまない、助かった!」
「全員に御札を貼ったら、速やかに脱出するぞ!」
だがその時黒皇の背後から、首に銀色のタグをぶら下げた闇異が現れた。
「飛んで火に入る異救者3匹、まとめてひねり潰してやる」
「悪堕者!」
「しかもシルバーランク!」
黒皇は、恐れおののく結界の異救者に防火の御札を託し、漆黒のサーベルを構えた。
「貴様等は天井が崩れても被災者を守れ、こいつは俺が黒に仕留める」
一方カネリファイヤはモール2階の雑貨店で、シルバーランクの悪堕者を撃破した。
「コイツ本当にシルバーか?コズドの方がゲキアツ手強かったぞ」
「人が倒れてるぞ!防火の御札を用意するんだ!」
カネリファイヤが人に戻った悪堕者を担ぎ上げる間、他の異救者が人命救助にあたっていた。
しかしその様子を見ていたカネリファイヤが、倒れている被災者の指が釣り針のように鋭くなっていることに気づいた。
「ソイツも悪堕者だ!」
彼女の警告のおかげで異救者は、疑似餌分身の不意打ちをかわすことができた。しかし多数の分身が現れ、異救者たちの行く手を遮った。
「コイツらさっきの・・・!」
同じ頃リチャウターは、逃げ遅れた女の子を抱きかかえ、他の異救者と協力しながら疑似餌分身たちと戦っていた。
『救手パルマァ!!』
リチャウターは女の子を庇いながら、次々と浄化し一通り片付けた。
「君、ありがとう!」
「お互い様です、この子を安全な場所へ―」
その時リチャウターは、女の子の襟元に釣り針が引っ掛かっていることに気づき、それを外すと勢いよく引っ張られた。
「なっ君!?」
「おれよりこの子をお願いします!!」
リチャウターは引っ張られながらも、腕を長く伸ばして女の子を他の異救者に渡した。そしてモールの外まで引っ張り出され、そこから数km離れた3階建てビルの屋上に叩きつけられた。
「ぐあっ!」
「やったよルアーくん、黒火手団の一本釣りだ」
「いいぞ釣りくん、今度こそシメてやろう」
リチャウターの前に、悪堕者のツリットルアットと、その分身である疑似餌分身たちが立ちはだかった。そして彼の首にも、銀色のタグがぶら下がっている。
「シルバーランク・・・!」
To be next case




