案件75.聖女の隠し事
「ボンゴラが変異できなかったのは、マナキのせい?」
「マナキちゃん?」
「どういう事だ、詳しく説明しろ」
「ボンゴラくん、4年前わたしが聖女になった日の前のこと、覚えてる?」
「え?・・・何かあったっけ?」
「・・・先代聖女暗殺事件と関係があるのか」
「うん、わたしを含め歴代の聖女は、救世主ルニディムの末裔であると同時に、彼の力を後継者に渡すための【器】でもあるの」
「ウツワ?」
「ルニディムの力が失われないよう、マナキちゃんたちが守っているんだ」
「聖女になれるのは、末裔の中で一番その力に適合できる人だけ。でもその人がずっと、器でいることはできない」
「一国を浄化出来る程黒な力だ。末裔と言えど、生身の人間には荷が重過ぎる」
「だから聖女は力を保てなくなると、次の聖女に渡すため【継承の儀式】を行うの」
「じゃあマナキは、先代が殺される前にギシキやったのか」
「ううん、継承の儀式を行う前に聖女が死ぬと、ルニディムの力は勝手に次の聖女に宿るの。わたしが聖女になるまでだれも知らなかった。儀式を控えた聖女が殺されるなんて、4年前まで一度もなかったから」
「・・・それで、おれが変異できなくなったのと、先代聖女暗殺事件とはどういう関係が?」
「わたしにルニディムの力が宿ったあの日、隣にはボンゴラくんがいてその力の影響を強く受けてしまったの」
「なにぃ!!?」
「おいボンゴラ!本当に覚えていないのか!?」
「いやそんな話・・・今初めて聞いたよ!」
「あの時のわたしは、器として未熟だったから力をコントロールできなかった―」
マナキは4年前、ルニディムの力が宿った直後のことを思い出しながら、その一部始終を説明した
『ボンゴラくん!ボンゴラくん!しっかりしてえ!!』
当時のボンゴラはその力を直に浴びた影響で意識を失ってしまい、マナキは彼を呼び起こそうと必死で叫び続けていた。
「救世主の力は大勢の人を救えるけど、使い方を間違えれば大勢の人の命を奪えるの。わたしの身体から溢れる力が、ボンゴラくんを死の淵に追いやった・・・」
マナキは涙を流しながらボンゴラの身体にすがり付き、彼の復活を全身全霊で祈った。
『いや!お願い!ボンゴラくん死なないでえ!!!』
「その時、奇跡が起こったの。身体から溢れる力が止まると同時に、ボンゴラくんの身体が光りだして目を覚ました」
『・・・マナキ・・・ちゃん?』
『・・・!よかったあボンゴラくん!ありがとうルニディム!!』
マナキは嬉しさのあまり、意識が朦朧としているボンゴラを強く抱きしめた。
「でもボンゴラくんは、その時のことを覚えていなかった。わたしはあなたに嫌われたくないから、何も言えなかった・・・」
「―だからボンゴラくんが闇異に変異できなかったり、リチャウターや約束を忘れたりしたのは、わたしのせいなの・・・」
「成程、ルニディムの力を直に浴びた後遺症で、記憶障害と闇への拒絶反応を起こすようになったのか」
「マナキちゃん・・・」
その時マナキは、ボンゴラに深く頭を下げて謝罪した。
「ごめんなさいボンゴラくん!あなたを危険な目にあわせた上、今までずっと黙ってて、苦しい思いをさせて!あなたに嫌われるのが怖くて、そうなるなんて知らなかったから!!」
誠心誠意のこもったマナキの謝罪に対し、ボンゴラは彼女の両手を優しく握り、微笑みながら答えた。
「マナキちゃんは悪くない、君は命の恩人だよ」
「それにあの苦労があったから、アゼルやカネリと出会い、リチャウターに変異できたんだと思う。改めてありがとう」
「ボンゴラが許してんだから、気にしなくていいだろ!」
「ルニディムの力が、浄化能力の獲得に繋がったと説明がつくな」
「うう・・・ぐすっ・・・ボンゴラくぅん!!!」
マナキは大粒の涙を流しながら、ボンゴラに抱きついた。
「マ、マナキちゃん!ちょっと落ち着いて!!」
「ヒューヒュー!ゲキアツだなお二人さん!」
「だがお前と生活を共にして半年以上経つが、記憶障害の症状は一切みられなかったな」
「闇異に目覚めた影響で、体質が改善したからかなあ?」
(ごく一部とは言え、救世主の力を宿した手差ボンゴラ、改めてカネリと同様、黒に侮れん・・・!)
アゼルがボンゴラに脅威を抱いている中、マナキがふと時計を見ると、時刻は深夜2時を過ぎていた。
「あ、もうこんな時間!」
「ほんとだ、話に夢中で気づかなかった」
「ふあ~あ、ちょうど眠くなってきたぜ・・・」
「みんな遅くまで話してくれてありがとう、わたしもそろそろ寝るね」
アゼルとカネリは自室に戻り、ボンゴラはマナキを来客用の部屋へ案内した。
「ここがマナキちゃんの部屋だよ」
「え~、ボンゴラくんの部屋がいい!」
「いやそれはマズイよ!!」
「昔は一緒に寝てたじゃん!」
「な~んてね、おやすみボンゴラくん」
「ふぅ・・・おやすみマナキちゃん」
翌日ワープゾーンの復旧が完了し、マナキの護衛であるイザベロとクレイアは、公邸に帰る準備を整えた。
「やだやだやだぁ!今日も黒火手団事務所にお泊りするぅ!!!」
「わがままを言わないで下さい聖女様」
「予定が詰まっているんです、帰りますよ」
2人は駄々をこねるマナキの手足を支えながら、黒塗りの高級車の中へ運び、黒火手団の3人はその様子に呆れていた。
「あれでよく聖女が務まるものだ」
「イザベロさん、クレイアさん、お疲れ様です・・・」
「また遊びに来いよ!」
その時、車の窓が下がりマナキが顔を出した。
「そうそうアゼルさんとカネリさん、昨日の夜話したことは、ぜーったいヒミツだからね!しゃべったら、スコア全部没収だよ!」
「理解っている、貴様を敵を回すほど愚かではない」
「ス、スコア・・・ゼンブ、ボッシュウ・・・!!」
カネリは以前、秘密をバラしたことでスコアを引かれたことを思い出し、身体をガタガタ震わせながら、冷や汗をダラダラかいていた。
「ボンゴラくん、またね」
「うん、また」
マナキを乗せた高級車は、3人に見送られながら走り去っていった。
「おい!ポストに手紙が入ってるぞ!」
「MrヨブローとMrホリオからだな」
「ヌクラマ国の人たちも、元気そうだね」
こうして黒火手団の休日は終わり、通常営業を再開した。しかし同じ頃、悪堕者のとあるアジトで、サエラが闇異たちにこう呼びかけた。
「さあ行け闇深案件ども!ゴールドランクを目指し、悪の限りを尽くすのだあ!!」
『スコア早見表』
黒理アゼル(初級)
12200点(+1500)
激熱カネリ(初級)
12000点(+1500)
手差ボンゴラ(初級)
11800点(+1500)
スコア100億点以上で救世主になれる!
まずは1万点以上を目指し、3級試験に合格せよ!
To be next case




