案件74.結成、黒火手団!
タツマを止めた後、おれたち第48班は気がつくと病院の中にいた。見舞いに来てくれたツドウさんの話だと、戦いで疲れて3日間眠っていたらしい。
ツドウさんはおれたちのことをいっぱい褒めてくれて、がんばったご褒美に盾をくれたけど、アゼルとカネリは露骨に嫌な顔をしていた。
おれたちが寝ている間にマナキちゃんがヌクラマ国に訪れ、国内に充満する闇のエネルギーを浄化し、ヨブローさんを正気に戻してくれた。
また3ヶ月くらい前にこの国を浄化したのに、地下の闇エネルギーが急に活性化したのは、タツマがシンテージを使ったからだとわかった。
一方タツマとその手下たちは、既に逮捕され聖明機関本部に連行された。タツマを見送ったツドウさんとヨブローさんは、人を思いやる心があれば素晴らしい異救者になれたのにと嘆いていた。
そしておれたちは意識を取り戻した翌日に退院し、ツドウさんに連れられハトノス事務所へ戻った。
「聖女様が念入りに浄化し、聖明機関がガッチリ封印したから、シンテージを使われてもしばらくは大丈夫だ!これでまた世界中で盾活できるぜ!」
「よかったですねツドウさん」
「呆れるほど黒な盾男め」
「でも聖女様は、君たちが目を覚ます直前に出国したんだ。会えなくて残念だったね」
「仕方ありませんよ、マナ・・・聖女様は人助けで忙しいですから・・・」
「センギョ!?鮮魚ってことは・・・今日のメシは魚料理か!!」
カネリはお腹が空くあまり、聖女を鮮魚と聞き間違えてしまったようだ。
「お前は再入院して脳内スキャンしろ」
「病院のメシは少ないからヤダ!」
第48班とツドウがハトノス事務所に到着すると、敷地内には大勢の異救者が集まっていた。ハトノスの団員とインターン生に加え、他のチームの団員も呼ばれていた。
「ツドウさん、お待ちしていました」
「ただいまハズミ、これでみんな揃ったかな?」
「ええ、これからヨブローさんが開会の挨拶を始めます」
「ムムッ!クンクン・・・これはメシの匂い!もしやパーティーか!?」
カネリが食べ物を求めて辺りを見回していると、マイクを持ったヨブローが姿を現した。
『改めて異救者とインターン生のみんな、この国の人々を守るために全力を尽くしてくれてありがとう!政府がその御礼にと、一流シェフたちによる宴会を用意してくれた。思う存分食べていってほしい、それではみんな乾杯!!』
宴会が始まると同時にカネリは、怒涛の勢いで並べられた料理を皿に盛り、ガツガツと食べ始めた。
「うんめぇえええ!全力で人助けした後のメシは、ゲキアツ最高だぜ!!」
「ハトノス名物、100m流しそうめんだよ!」
「すご~い!竹がウォータースライダーみたい!」
「なにィ!?オレもそうめん食べるぞ!!」
カネリが食べることに夢中になる一方、アゼルとボンゴラはヨブローと再会し話をしていた。
「ヨブローさん、ご無事で安心しました」
「心配かけたねボンゴラ君、私はもう大丈夫だ」
「Mrヨブロー、あの時はその、済みませんでした・・・」
「でもアゼル君はタツマを止めるのに一役買ってくれた、守った甲斐があったよ」
「人ならざる力を制し、人助けに必要な実力と覚悟を満たす者が、一人前の異救者だ。君もそれを忘れないように」
「・・・黒に銘じておく」
同じ頃、ツドウはハズミからある情報を知らされ、少し驚いた様子だった。
「タツマがサエラと繋がっていたって!?」
「ええ、矛貫隊が尋問した際に判明しました。シンテージの研究と横流しだけでなく、密入国にも協力していたそうです」
「彼らはそれを知った直後、国内のアジトを特定し突入しましたが、既にもぬけの殻でした。ですが、シンテージを横流ししている大元は押さえたとのことです」
「オスタたちもがんばったんだな、でもサエラは侮れない。シンテージをばら撒いたのも、何かの布石のような気がする・・・」
「これからも聖明機関とは情報を共有しよう」
「承知しました」
「さて!真面目な話は一旦後にして、おれたちも宴会を楽しもう!そして盾活も!」
「どちらも程々にして下さい」
宴会が終盤に差しかかった頃、カネリの腹部は食べ物でパンパンになっていた。
「カネリさんお腹大丈夫!?」
「いやぁ~、ちょっとはしゃぎすぎたぜ」
「・・・カネリ、ボンゴラ、話がある」
「んあ?」
「どうしたのアゼルくん?」
「お・・・俺の仲間になれ!!お前達の選択肢は、それ以外にないのだ!!」
アゼルの突然の発言に、カネリとボンゴラは呆気に取られた。
「これまで共に戦い理解した。お前達は一介の学生達より、黒な即戦力に成り得る。圧倒的な戦闘力を有するカネリと、浄化技が使え人命救助に秀でたボンゴラ。お前達の真価を発揮できるのは、黒な天才である俺しかいない!!」
「ゲキアツやだね!だれがテメェの子分になるもんか!!」
「黒に考えろ!お前達二人と組もうと考える輩は、俺以外に存在しない!」
「何よりお前のような脳筋雌ゴリラに、チームの代表が務まるか!!」
「何だとこの黒モヤシぃ!!」
アゼルとカネリが口論になっていると、騒ぎを聞きつけたツドウとハズミがやって来た。
「あらら、またケンカしてるのかい?」
「そうなんですよ、せっかくアゼルくんが組む気になったのに・・・」
「俺がチームの代表だ!」
「いーや!オレ様が代表だ!」
「じゃあ間をとって、ボンゴラに任せるのはどう?」
「え!?おれが!?」
「いやツドウさん、おれは代表をやる自信も経験もないんですが・・・」
「3ヶ月間ずっと見てきたけど、君が一番向いていると思うんだよな~。経験がなくてもこれから学べばいいし、アゼルとカネリはどう思う?」
「ふむ・・・」
「う~ん・・・」
「「コイツよりは・・・マシだな」」
と言ってアゼルとカネリは、お互いを指さした。
「以前から気になっていましたが、貴方達は仲が悪い割に妙な所で息が合いますね」
「なんだかんだ双子だからかもね」
「だがボンゴラ忘れるな、あくまで暫定だ!お前に相応しくないと判断したら、即引き摺り降ろしてやるぞ!」
「オレ様が認めてやったんだから、しっかりやれよ!」
「・・・わかった、アゼルくんとカネリさんの期待に応えてみせるよ」
「なあボンゴラ、オレたち仲間だからよ、呼び捨てでいいんじゃねえの?」
「ああ・・・そっか・・・」
「改めて、アゼル、カネリ、これからもよろしく頼む!」
「こちらこそ、ゲキアツ頼むぜ!」
「精々黒に励むことだ」
「つーことで、ゲキアツ団結成を祝い乾杯だ!!」
「待て!その無粋なチーム名を、黒救団に改名しろ!!」
「ハァアアア!?そっちの方がゲキアツダセェだろ!!」
「やめてよ二人とも!だったらおれたちの特徴をとって―」
「黒火手団に、なったんだね」
場面は過去から現在に戻り、事務所に宿泊しているマナキへの、黒火手団結成秘話の説明は終わりが近づいていた。
「うん、あの時は二人を説得するの大変だったよ」
「お前が駄々をこねなければ、話はスムーズに済んだのだがな」
「テメェだってグチグチ文句言ってたじゃねえか!」
「それからは課題に取り組みながらチームワークを強化して、インターンは無事終わったんだ」
「国家試験も難なくクリアし、俺達は正式に異救者に認定された」
「それまでおれたちが稼いだ仮スコアを金にして、この事務所を建てたってワケ!」
「しかしカネリが人命救助試験をクリア出来たのは、黒な奇跡だったな」
「奇跡じゃねえ!できて当たり前なんだよ!」
「インターンで一生懸命練習したからね」
「インターン・・・ボンゴラくんはずっと、変異できなくて大変だったんだよね・・・」
「マナキちゃんが気に病むことはないよ、こうして異救者になれたんだから」
「ちがうの、ボンゴラくんが変異できなかったのは・・・わたしのせいだと思う」
To be next case




