案件73.ヌックリ鉱山の決戦
話は少し遡り、第48班たちがビッグタツマとの再戦に向けて作戦会議中、アゼルがある提案をした。
「Mrツドウ、カネリが激熱モードを使用する許可を頂きたい。奴を倒すには、あの黒な力が必要不可欠だ」
「アゼル!オレ様を差し置いて勝手に決めるな!」
「それを使ったら、ツドウさんの封印があってもこの国に影響が出るんじゃ・・・!?」
「接近戦に限定し、無駄な破壊を極力抑えれば問題無い筈だ。お前もそれ位出来るだろう?」
「・・・朝飯前だけどな!」
カネリファイヤ暴走事件の後、カネリはいざという時に備え激熱モードを制御できるよう、定期的に訓練していたのだ。
「オーケー、激熱モードの使用を許可する。ただし3分間までだ、それを過ぎたら再び力が封じられるよ」
そう言ってツドウは、鍵のような物をカネリに渡した。それは闇異鍵と言い、闇異の力を制御するアイテムだ。
「アンタらの分も、ゲキアツ叩き込んでやるぜ!」
「激熱モード中、俺は距離を取りカネリをサポートする」
「手差ボンゴラは、解除した直後に救手ハグネードだ」
「わかった―」
そして現在に戻り、ついにカネリファイヤが激熱モードを解禁した。
「ほ~う、バズレイダの英雄、本領発揮か。だが、いつまで正気でいられるかな?」
「その前に、テメェが立ってられるのかあ!?」
カネリファイヤとビッグタツマ、両者が互いに接近し激しい肉弾戦が始まった。前回は力負けしたカネリファイヤだったが、真の力を解き放ったことでビッグタツマと互角に戦えるようになったのだ。
(こっ、このガキ・・・!これほどの力とは・・・!!)
「オラオラどうしたぁ!?もっと!ゲキアツに!!熱くなれよおおおおお!!!」
肉体の再生力は自分より劣るはずなのに、殴っても殴っても怯まずに反撃を仕掛けてくる。段々ビッグタツマは、燃え盛るカネリファイヤの気迫に押され始めた。
「うおおおおおらあああああ!!!」
カネリファイヤはビッグタツマが怯んだ隙に、渾身の一撃を叩き込み数十m後方へフッ飛ばしたが、ビッグタツマは受け身をとり体勢を立て直した。
(ならば再びシンテージを投与し、正気を失わせてやる!)
ビッグタツマはニヤリと笑いながらシンテージを取り出すが、スパッという音と共にシンテージを入れた薬瓶が指ごと切断され、呪いの液体が地面にこぼれた。
「なにっ!?」
「やはりまだ隠し持っていたか」
ビッグタツマの手を読んでいた黒皇が、目にも止まらぬ斬撃でシンテージを破壊したのだ。
一方カネリファイヤは右拳を激しく燃やしながら、シンテージに気を取られたビッグタツマに殴りかかってきた。
「しまっ―!」
『ゲキアツバーニングストレートォオオオオオ!!!』
カネリファイヤの必殺右ストレートがビッグタツマのボディに直撃した瞬間、ドーーーンという爆炎が生じ辺り一帯を突風が襲った。
爆炎に伴う煙が晴れると、闇異の力を使い果たしたカネリと、黒焦げになりながらも仁王立ちするビッグタツマの姿があった。
「・・・クソッタレ!」
「残念だったなあ、バズレイダの英雄」
「カネリさん伏せて!」
『救手ハグネード!!!』
リチャウターがすかさずを光輝く渦を放ち、ビッグタツマを飲み込んだ。光の渦の中で、激しく回転しながら浄化されていく。
「ぬおおおおお!!!」
「この手で、救ってみせるぅううううう!!!」
『救手ハグネード』が勢いを失うと、ビッグタツマは空中に投げ出され、地面に叩きつけられた。
「よっしゃあ!」
「ハア・・・ハア・・・、ついにやった―」
カネリとリチャウターの表情は、安堵から絶望へ変わった。ビッグタツマがゆっくりと立ち上がったからだ。
「そんな・・・!」
「なんてヤロウだ・・・!」
「ハア・・・ハア・・・耐えてやったぞ、お前たちの必殺技を・・・!」
だが流石のビッグタツマも、二人の必殺技を受けたせいで息が上がり、身体中に少しヒビ割れが生じていた。
リチャウターも力を使い果たした影響で、ビッグタツマよりもヒビが広がっていた。闇異でいられる時間は、残り僅かだ。
「理解したか?最後に勝利するのは、完璧な存在であるこの私なのだあああああははははは!!!」
ドスッ
「・・・は?」
ビッグタツマの高笑いを止めたのは、黒皇の一撃だった。彼の黒いサーベルがビッグタツマの背中を貫き、胸の下から刃先を現したのだ。
「ならば俺の黒が、貴様の野望を終わらせてやろう!」
次の瞬間、刃先からドクロの形をしたオーラが溢れ出て、それを見たビッグタツマは身の毛がよだつほどの恐怖を抱いた。
「こっこれは・・・死の呪い!?」
「完璧な解答だ、とくと味わうがいい―」
(カネリと手差ボンゴラの必殺技をもってしても、尾後里タツマを倒せる確証はなかった)
(殺気だけで相手を呪い殺す、『黒死令』が使えれば話は別だが、それ以前に奴は呪いに強い抵抗力があった)
(だが先の戦いで『黒呪毒』の効果が発現した。原因はおそらく、ダメージの蓄積で抵抗力が弱まったか、呪いの蓄積量が抵抗力を上回ったか、あるいはその両方だろう)
(俺はそう推測し十分ダメージを与えた上で、黒に強めた死の呪いで仕留める作戦を発案した。しかしそれだけ強力な死の呪いを、体内でチャージすると俺自身の命も危うい)
(そこで武器にチャージすることで、リスク回避に成功した。己の不甲斐なさで感情が爆発し、呪いが増したサーベルの一撃がヒントになるとはな・・・)
(過去の自分に固執し創意工夫を怠った結果、こんな簡単なことに気付けなかった・・・。俺はまだまだ、黒が足りない―)
黒皇がサーベルを抜き背を向けると、ビッグタツマの身体からドクロの形をしたオーラが浮かび上がり、変異が解け膝をついた。
「感謝するぞ尾後里タツマ、貴様のお陰でこの技が誕生したのだ」
「わ・・・私は、完璧な存在・・・こんなところで、終わるはずが・・・!」
「そうだな、この技の名は・・・『黒殺刑』だ」
その直後、タツマは前のめりに倒れた。闇異は死ぬと人間の姿に戻り復活するが、タツマは心身のダメージが大きく白目を向いたまま気を失った。
こうして第48班は尾後里タツマの野望を阻止し、ヌクラマ国の平和を取り戻した。
To be next case




