案件72.力を合わせる時
ビッグタツマに敗北した第48班たちは、一度撤退し近くの小屋に身を潜め、お互いに傷を手当していた。
「ツドウさん申し訳ありません、私が不甲斐ないばかりに・・・」
「そんなことはないよ、タツマの力を見誤ったおれの責任だ。アゼルとカネリとボンゴラも、無茶をさせてごめんね」
「気にしないで下さい、おれは大丈夫です」
「それよりなんで逃げたんだよ!アイツがしびれてる時にボコせば勝てただろ!!」
「少しは頭を使いなさい激熱カネリ。尾後里タツマは強敵です、無策且つ満身創痍で力押ししても、勝てる相手ではありません」
「それに黒理アゼルの呪いが、いつまで持続するかわからない上、ヨブローさんがシンテージで暴走寸前だった状況を考慮すれば、撤退以外有り得ません」
「・・・・・!」
ハズミに諭されたカネリは、歯を食いしばり何も言い返せなかった。
「ところでツドウさん、本当にヨブローさんを浄化しなくていいんですか?」
ボンゴラは心配そうに、ヨブローことバンブーオーに目をやった。彼はアゼルを庇ってシンテージを打たれ暴走する危険があり、『シーリングシールド』で封じられ眠るように大人しくしていた。
「ヨブローさんはおれが封印してるから大丈夫だ。その力は、タツマを止めるために残した方がいい」
「私もツドウさんも深手を負い、奴と戦う余力はありません。既に応援を要請しましたがいつ来るのか・・・。心苦しいですが、貴方達第48班が頼りです」
「ゲキアツ任せろ!」
「タツマを放っておいたら、またヌクラマ国の人たちが狙われる。この手で止めないと!」
「・・・悪いが、俺にその資格はない」
そう言ってアゼルは、落ち込んだ様子で小屋から出て行った。
「アゼルくん・・・」
外に出たアゼルは、近くの岸壁に拳を叩きつけた。
(なんて黒な失態だ!!俺のせいでMrヨブローが・・・!)
己の不甲斐なさを悔やむアゼルの前に、カネリとボンゴラが現れた。
「・・・何の用だ?」
「アゼルくん、おれたちと一緒に戦おう」
「敵の挑発で冷静さを欠き、味方に被害を与えた俺と?」
「タツマを止めるには、君の力が必要なんだ」
「奴の実力は知っているだろう、俺達3人が束になっても意味がない」
「さっきツドウさんが言ってた、タツマは2度の戦いで闇異の力を消耗している、おれたちが力を合わせればきっと―」
「落ちこぼれの分際で、知った様な口を利くんじゃない!!」
その瞬間、カネリがアゼルの胸ぐらを掴んだ。
「いつまで腐ってんだこの黒モヤシ!!一度負けたからなんだ!?天才なら、次どうしたら勝てるか考えろよ!!」
「それともアイツの言う通り、テメェも落ちこぼれになっちまったのか!?」
「・・・・・!」
カネリに発破をかけられたアゼルは、ビッグタツマが自分を煽った時の言葉を思い出した。
(どうやら再起不能になって、追放されたという噂は本当らしいな)
「惑わされるな!敵の言葉を真に受けるんじゃない!!」
カネリだけでなく自分にも言い聞かせるように声を荒げ、彼女の手を振り払った。
「全く、俺に嫉妬する輩が根も葉も無い噂を流すのだから、黒に不愉快だ!」
「そして俺を侮辱した尾後里タツマも許さん!お前達を利用してでも、奴を仕留めてやる!!」
「じゃあアゼルくん、手を貸してくれるんだね!」
「利用だ!都合よく解釈するんじゃない!!」
「ったく、素直じゃねえんだから!」
「いいかアゼル!今回はト・ク・ベ・ツに、お前と組んでやるからありがたく思えよ!」
「そんなに不満なら、捨て駒にして使い捨ててもいいんだぞ?」
「こんな時にやめてよ二人とも・・・」
挫折から立ち直ったアゼルは、打倒タツマに向けて仲間たちと作戦を練った。
「・・・以上が、おれたち第48班の作戦です」
「これならいけそうだ!ハズミはどう思う?」
「私も異論はありません、現時点で最善策だと考えられます」
「ありがとうございます!」
「体力も戻ったし、タツマをブッ飛ばすぞ!!」
「ただ唯一の懸念点は、奴がこの場に留まってくれているかだな」
「いや、その心配はいらないよ」
「出てこいツドウ!そしてその手下ども!!そこにいるのはわかってるぞ!!」
小屋の外から大きな叫び声が聞こえた、とうとうビッグタツマに見つかってしまったのだ。そして間もなく、変異した第48班が小屋から出てきた。
「おやぁ?ツドウは出てこないのか?」
「貴様如きに、Mrツドウが出る幕はない」
「テメェの相手は、オレたち3人で十分だ!」
「ヌクラマ国の人たちは、この手で守ってみせる!!」
「いいだろう、お前たちを血祭りに上げてから、引きずり出してやる!!!」
こうして、第48班VSビッグタツマの最後の戦いが始まった!
『黒幻自在!!』
黒皇が残像を伴う高速移動を行い、ビッグタツマの身体を連続で斬りつけた。
「おいおい、同じ攻撃が通用するとでも―」
溜息をつきながらタツマが右拳を振り上げると、リチャウターの伸びる手に手首を掴まれた。
「『救手アーム!』からの、『救手パルマ!!』」
リチャウターの手から光が流れ込み、ビッグタツマに浄化攻撃を与えた。
「ぬううううう!!!」
ビッグタツマは左腕で反撃しようとするが、またしてもリチャウターの伸びる手に掴まれ、素早い斬撃と浄化攻撃を食らい続けた。
二人に疲労が現れ攻撃の手を緩めた時を狙い、ビッグタツマが反撃を仕掛けるが、黒皇はすぐその場から離れ、リチャウターは両腕を下げた。
ビッグタツマが二人に気を取られた時、激しい炎が彼を襲った。カネリファイヤの『チャンプファイヤー』だ。
「ゲキアツに燃えろぉおおおおお!!!」
カネリファイヤは炎の勢いが弱まるまで吐き続け、ビッグタツマは煙を出しながら全身が真っ黒になってしまった。
「ゼエ・・・ゼエ・・・どうだ、ウェルカムにしてやったぜ!」
「それを言うならウェルダン」
「いや黒な消し炭だな」
「私を勝手に消し炭にするなーーーーー!!!」
ビッグタツマは炭化した表皮を弾き飛ばすと、既に新しい皮膚が出来上がっていた、凄まじい再生能力だ!
「ちなみに私の好きな焼き加減は、ミディアムレアだ!」
「貴様の好みは聞いていない」
「シャラ~ップ!とにかくお前たちの攻撃は通用しないぞ!」
ビッグタツマが余裕そうにしていると、カネリファイヤが鍵のような物を取り出し、胸に差し込んだ。
「だったら、こっからが本番だぜ!!」
するとカネリファイヤの右半身が激しく燃え上がり、パワーがみなぎり始めた。
「カネリファイヤ激熱モード。ウェルダンがダメなら、ゲキアツウェルダンにしてやるぜ!!!」
To be next case




