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案件70.ヨブローとタツマ

 ヌクラマ国最大の資源産出量を誇るヌックリ鉱山が、尾後里(おごり)タツマ率いる闇異(ネガモーフ)軍団に制圧されてしまった。彼の要求は、ツドウとヨブローの身柄の引き渡しである。


 ヌックリ鉱山の地下鉱脈を刺激したら、闇のエネルギーが暴走して国そのものが崩壊してしまう。タツマの野望を阻止するため、ツドウとヨブローに加え、ハズミと第48班が密かに出動した。


「約束通り二人で来たぞ!タツマはどこにいる!?」


 ちょうど正午になった頃、ツドウとヨブローはヌックリ鉱山の採掘場に訪れていた。そこにはタツマの手下と思われる闇異(ネガモーフ)が20人ほどいて、二人は囲まれていた。


「ボス!二人が来やしたぜ!」


 手下の一人が近くの小屋に向かって叫ぶと、中からタツマが姿を現した。


「久しぶりだなヨブロー、相変わらず竹臭い男だ。そしてツドウ、守ることしか能のないお前がよく特級になれたものだ」


「お前の目的はなんだ!?今すぐに作業員たちとこの鉱山を解放しろ!」


 ヨブローはいつも以上に激昂していた。彼とタツマは何か深い因縁があるようだ。


「ノンノンノン、それは無理な相談だ。何故なら私の目的は、お前たちとこの国への復讐だからだ!」


 今頃ハズミと第48班は、ヌックリ山の地下数百mまで潜入し、地下鉱脈と人質の奪還を目指している。その時間を稼ぐために、ヨブローはあえて感情的になってタツマの気を引き、ツドウは冷静に会話を引き出した。


「・・・復讐?何のことでしょう?」

「忘れたとは言わせないぞ、お前たちから受けたこの屈辱を―」


 タツマは笑みから怒りの表情に変えながら、自分の過去をペラペラと語り出した。


 


「本来ハトノスの代表になっていたのは、完璧な頭脳と力を持つ『私』だった。だが!私に嫉妬した卑しいヨブローが、耄碌(もうろく)した先代代表を騙し、生意気な後輩ツドウにハトノスを売り、無能な部下と愚民共を扇動して私の地位と名誉を奪った!それがお前たちの罪だ!!!」


 タツマの激烈な怒号に対し、ヨブローは静かに怒りを燃やしながら反論した。


「・・・確かに君は優秀な異救者(イレギュリスト)だった。自分の力に酔いしれ、悪人に度を超えた暴力を振るい、目的のためなら手段を選ばず、仲間や国民を危険に晒さなければ!」


「先代は甥である君が、いつか自分の過ちを認め改心すると信じ庇い続けた。だが君はその想いを理解せず、ハトノスの信頼を奪い解散の危機に陥れた!」


「先代は悩んだ末に私を代表に任命し、私はツドウ君の提案に乗って彼の傘下となり信頼を取り戻した。お前はハトノスの代表だけでなく、異救者(イレギュリスト)としても失格だ!!」


「シャラ~ップ!実力では私に何一つ敵わないクセに、私のやることに何度も口答えする!お前のそういうところが、昔から気に入らなかったんだ!!」


「だからお前は、この国が闇にのまれる光景を目の当たりにし、絶望に叩き落としてから始末することにした!」


「そして闇に染まったヌクラマ国とその地下資源を、完璧な存在である、この私が支配するのだあああああははははは!!!」


 タツマの狂気に満ちた高笑いと歪みきった野望に、ツドウとヨブローは開いた口が塞がらなかった。


(こいつ・・・)

(狂っている・・・!)


「さあツドウ!作業員共の命が惜しければ、地下鉱脈の封印を全て解除するのだ!!」

「・・・お断りします。どの道ホリオさんたちを、生かしておく気はないのでしょう?」


「ほう、特級ともあろう者が人質を見捨てるのかね?」

「そもそもあなたが完璧な存在なら、『シーリングシールド』くらい簡単に壊せたでしょう」


「シャラ~ップ!」

「『自称完璧』のあなたでさえも壊せなかった。だから人質を取り解除を迫った、ちがいますか?」


「シャラーーーップ!!!調子に乗るなこのクソガキ!!お前の盾さえなければ、こんな回りくどいことをせずに済んだのだ!!!」


 ツドウの挑発に乗り激昂したタツマは、ガッと彼の胸ぐらを掴んだ。


「それはお気の毒に。なんせおれは、異救者(イレギュリスト)きっての盾男(たておとこ)ですから!」


 ツドウが笑顔でウインクをすると、タツマの怒りがさらにヒートアップし、顔に血管が浮き出した。


「・・・いいだろう。見せしめに人質を一人、血祭りに上げてやる!地下にいる連中に伝えろぉ!!」


 その時、手下の一人が慌てた様子でやって来た。


「ボス!大変です!」

「何だ!?後にしろ!!」


「人質を全員奪い返されました!!」

「ぬわんだとぉ!!?」


「間に合った!」

「今だツドウ君!」


「「変異!!」」


 ツドウとヨブローは、タツマの隙を突いて変異し反撃を開始した。




 同じ頃、ヌックリ山の地下に潜入した第48班とハズミは、変異して地下鉱脈を占拠する闇異(ネガモーフ)軍団を撃破し、作業員を全員救助した。


「ホリオさん大丈夫ですか!?」

「ボンゴラくんか!?助かったべ・・・」


「Mrツドウの読み通り、作業員たちは地下鉱脈にいたか・・・」


 タツマ一派はホリオたちを人質にすると同時に、地下資源を掘らせ売り捌こうとしていたのだ。


「どうだアゼル!ブッ飛ばした敵の数は、オレたちゲキアツ団の方が多いぜ!!」

「馬鹿を言え!撃破数は俺の方が上だ!」


「それよりMsハズミ、封印の方はどうなっている?」

「ツドウさんの盾はなあ、テメェが心配するほどヤワじゃねえんだよ!」


 『シーリングシールド』は酷く傷つくも、闇エネルギーの封印を維持していた。


「おいテメェら!アタシはツドウさんたちに加勢するから、作業員共を避難させてこい!」


 そう言いながらガニューズメントは、真上に向けて銃を乱射し第48班を焚き付けた。


「天井が崩れるから撃つのを止めるだ!!」

「すぐここから出ましょう!」




 およそ1時間後、第48班はホリオたちと地上へ上がり避難所に預けると、自分たちもツドウたちに加勢すべく、急いでヌックリ山へ戻った。


 採掘場に訪れると、至るところに銃痕や盾の残骸が散乱し、横たわる闇異(ネガモーフ)軍団と竹分身たちの様子から、ここで激しい戦闘があったことを知った。


「・・・やけに静かだね」

「Mrツドウたちは何処だ?」

「おい!あれ・・・」


 カネリファイヤが指差す方を見ると、酷く傷ついたエスクディアンとバンブーオー、ガニューズメントが、大柄で筋骨隆々な闇異(ネガモーフ)の前で横たわっていた。


「お前たちなど、強満闇異(ごうまんネガモーフ)ビッグタツマの敵ではない!」


To be next case

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