案件67.三つ巴ライバル
8月下旬、ボンゴラが初めて闇異に変異して1週間くらい経ったが、第48班の繋がりはさらに険悪になっていた。
救世主を目指すアゼルとカネリは、ボンゴラを新たなライバルと認め対抗心を燃やし、彼を睨みつけながら朝食を食べていた。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・あのさあ、ご飯の時くらいはゆったりしようよ」
「随分余裕だな手差ボンゴラ、浄化出来るからと言って調子に乗るんじゃない」
「そうだぞボンゴラ!お前に助けられた恩はあるが、救世主の座はやらねえからな!」
「救世主の座はやらないだと?お前も黒に偉くなったな」
「文句あんなら表出ろ、ゲキアツに燃やしてやるぜ!」
「食事中にやめてよ二人とも、・・・はあ、最近いつもこうだ」
アゼルとカネリは外で組手を始め、ボンゴラが呆れながら見守っていると、ツドウとハズミがやってきた。
「おはよう!朝から組手とは精が出るね!」
アゼルとカネリの組手が激しさを増す中、ボンゴラはツドウに48班の現状を説明した。
「なるほど、二人の対抗心にさらに火がついたのか」
「変異したばかりの、おれにですよ?」
「無理もありません、浄化は対闇異戦において絶大な威力を発揮します。実戦経験と闇の深さで劣る貴方が、二人と互角に戦える唯一の力です」
「同時に、また後輩のライバルが増えましたね、ツドウさん」
「だよね~」
「ツドウさんも救世主を目指してるんですよね、何も思わないんですか?」
「おれはむしろ嬉しいかな、同じ夢に向かって進む仲間が増えて」
「ライバルであり仲間ですか、そう思える関係になれれば・・・」
その時、組手を終え汗だくになったアゼルとカネリが戻ってきた。
「特級異救者め・・・余裕も黒だな」
「アンタもいつか必ず、ゲキアツギャフンと言わせてやるぞ!」
「なら二人も早く、特級まで上がっておいで」
「ツドウさん、そろそろ本題に入りましょう」
「そうだね、確認だけど3人は、もう進路を決めたかい?」
「「「進路?」」」
特例を除いて異救者になるためには、専門の学校で3年間学び、国家試験を合格して、チームに入団しなくてはならない。
この時期、3年生の多くが志望するチームの内定を獲得し、国家試験に向けて勉学に励んでいる。
ツドウは、まだ内定が決まってない学生のためにインターンを開き、課題をクリアすれば彼が代表を務めるノゾミモチの、傘下のチームの内定が得られることを約束した。
「そう言えば、考えてる余裕がなかったな・・・」
「う~ん・・・じゃあノゾミモチで!」
「ノゾミモチは対象外だぞ」
「その通り、我々ノゾミモチは、各傘下の実力者から厳選される精鋭中の精鋭。貴方のような落第寸前者が、過程を踏まずノゾミモチに入団することは私が許しません」
カネリのノゾミモチを軽んじるような発言が、ハズミの怒りに触れてしまい圧をかけられて、カネリは何も言い返せなかった。
「ごめんね、おれは盾男として忙しいから、一から育てるひまがないんだ」
「ですので、ツドウさんが直々に指導して下さるこの機会を無駄にせず、心から感謝して下さい」
そう言ってハズミは、アゼルとボンゴラにも言い聞かせた。
「あ、ありがとうございます・・・」
「話を戻すが、俺の第一志望はマデット、第二志望はガッツメイトだな」
「残念ながらマデットやガッツメイトなど上位のチームは、新人の募集を既に終えています。スペイクなどはまだ枠が空いていますが」
「スペイク!?そんな知名度の低いチームに、俺が釣り合う筈がないだろう!」
アゼルがハズミと口論になっている間、ボンゴラは自分の進路について考え始めた。
(救世主を目指すなら、より多くのスコアを稼ぐチームに入るのが一番だ。でも大手のチームは倍率高いし、アゼルくんが言う通り既に枠が埋まってるだろう・・・)
「なら君たちで、新たなチームを結成するのはどうだい?」
ツドウの提案を聞いたアゼル、カネリ、ボンゴラの3人は、ハトが豆鉄砲を食らったような顔をした。
「俺達」
「3人で」
「組むってこと!?」
「ざっけんな!オレはこんな黒モヤシとゲキアツ組まねえぞ!!」
「何故黒な天才である俺が、脳筋雌ゴリラと組まねばならんのだ!!」
「でもツドウさん、新しいチームには3人以上が必要な他、2級以上の異救者が代表にならないといけないと習いましたが・・・」
「ノゾミモチの傘下に入れば、初級でも結成できるよ。さらに案件が多い地域に配属できるし、特殊案件も斡旋するからスコアを稼げるよ」
さっきまでいがみ合っていたアゼルとカネリが、スコアを稼げると聞き急に動きを止めた。
「あくまで選択肢の一つだから、よく考えといて。用はそれだけだからまた後でね」
そう言ってツドウは、ハズミと共にその場を去って行った。
「おれたちで新しいチームを作る・・・か」
(有力なチームの内定が期待できず、弱小しか残ってないなら、稼ぐチャンスのある新チームの結成は得策かもしれん・・・)
「・・・お前らとは組まないからな!」
果たして第48班それぞれの進路は、一体どこに決まるのか!?
To be next case




