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案件59.衝撃の歓迎会

 インターン初日の夜、ハトノスの事務所の中にある食堂は、異救者(イレギュリスト)と学生たちで賑わっていた。


「歓迎会は参加費無料!遠慮なく食べていいよ!」

「美味い!ゲキアツ美味いぜ!!」


 食堂のテーブルには、タケノコご飯や笹竹の煮物など和食料理がビュッフェ形式で並べられ、カネリは食べることに夢中になっていた。


 一方アゼルとボンゴラは、カネリの食べっぷりを眺めながらゆっくりと食事していた。


「よく食べるなあ・・・」

「穀潰しだな」


「そう言えば、アゼルくんとカネリさんは兄妹?それとも姉弟?」

「受け入れ難いが双子の兄妹だ」


「いいか貴様、俺はあの出来損ないの落ちこぼれとは違う、黒理家(くろすじけ)(ブラック)な天才なのだ!」

「そういう言い方はないんじゃない?」


「二人の関係はよく知らないけど、インターンの間くらいは仲良くしようよ」

「断る。貴様も俺の足手纏いになるなら、容赦しないぞ」


『イエーイみんな~!楽しんでるかーい!?異救者(イレギュリスト)きっての盾男(たておとこ)盾守(たてもり)ツドウ再び参上!』


 インターンの主催者であるツドウが、マイクを持ったまま食堂に現れたことで、学生と異救者(イレギュリスト)一同の注目が彼に集まった。


『学生たちの親睦を深めるため、今から一人ずつ自己紹介してもらうと同時に、各班の指導を担当する異救者(イレギュリスト)を紹介するよ!』


『まずは順番通り第39班から!3分間待ってやろう!』




 こうして第39から47班までの自己紹介と、担当異救者(イレギュリスト)の発表が終わり、いよいよ第48班の番が回ってきた。自身に満ちたアゼルとカネリに対し、ボンゴラは心配そうな様子だ。


(ようや)く俺達の出番か」

「ここはゲキアツに決めねえとな!」

「ねえ二人とも、余計なことは言わない方がいいと思うよ・・・」


「安心しろ、公言するのは必要最低限だ」


 そう言ってアゼルは、食堂の中央に設けられたスタンドマイクに近づいた。


『俺の名は黒理(くろすじ)アゼル、黒理家(くろすじけ)の天才であり次期救世主の座を約束された男』


『訳あって今回のインターンに参加したが、俺は貴様等落ちこぼれと馴れ合う意思は毛頭無い。精々利用し甲斐のある、踏み台になることを期待する。以上』


「フザけんなこの野郎!」

「お前だって落ちこぼれじゃねえか!!」


 アゼルは学生たちからの大ブーイングを無視し、何食わぬ顔でその場を去ったが、ボンゴラは冷や汗をダラダラ流しながら愕然としていた。


(親睦を深めるどころか、最大限反感を買ってどうするんだよ!!)


『流石は黒理家(くろすじけ)の天才、言うことがちがうね~。次の人どうぞ!』


 アゼルの自己紹介に動じないツドウに呼ばれ、カネリが胸を張りズカズカと歩いてやって来た。


『オレ様は激熱(げきあつ)カネリ!救世主になる女だ!!』


『いいかお前ら!オレはだれにも負けねえ!最強のゲキアツパワーを見せてやるぜ!!覚悟しろよアゼル!以上!!』


 一同はアゼルの自己紹介とは裏腹に、呆然と立ち尽くしていた。


『何だよお前ら、オレ様にビビって声も出ないのか!?』


「呆れてものも言えないんだよ」

「うん・・・もう、何を言ってもむだだと思ったよ」


 ボンゴラの呆れは頂点に達し、眼から光が消えていた。


『では気を取り直して、第48班のラストメンバー!先の二人に負けない自己紹介をよろしくぅ!!』


(ツドウさん、おれの立場を考えて下さいよ・・・!)


 ボンゴラは一同から、敵意、警戒、憐れみなどの目を向けられ、針のむしろにいるような気分を味わいながら、スタンドマイクの前に立った。


『えっと・・・手差(てざし)ボンゴラです・・・よろしくお願いします』

『ところが彼はこう見えて、将来の夢はなんと救世主なのだぁ!!』

『ちょっとツドウさーーーーーん!!!?』


「救世主!?」

「・・・だと?」


 アゼルとカネリがボンゴラを睨みつける中、ボンゴラは顔を真っ赤にしてツドウを問い詰めた。


『ななななんで知ってるんですか!!?』

異救者(イレギュリスト)きっての盾男(たておとこ)は、何でもお見通しさ!それにみんなの前で堂々と言う度胸がなきゃ、救世主は務まらないぜ!』


『そして、そんな第48班を担当する異救者(イレギュリスト)は・・・同じく救世主を目指している、盾守(たてもり)ツドウだ!!』


「えーっ!?」

「ずるーい!」


 誰もが予想しなかった担当者の発表で、学生の多くが声を出し戸惑っていた。


『でも時間があったら、みんなのところに顔出してアドバイスするよ!』

『それでは引き続き、歓迎会を楽しんでいこう!盾活(たてかつ)も大歓迎だ!!』




「おいボンゴラ、ちょっとツラ貸せや」


 衝撃的な自己紹介の直後、威圧的な表情のカネリがボンゴラに絡んできた。ボンゴラは彼女に気圧され、腰が引けていた。


「カ、カネリさん・・・何の用かな?」

「お前も救世主目指してるみてぇだな、何でだ?」


 ボンゴラは、マナキからもらったマフラーを握り締めながら、ぎこちなく返事をした。


「それは・・・全ての人を救うため・・・幼馴染と、約束したんだ・・・」

「なるほど、そりゃご立派なモンだ」


「だがオレだって黒理家(くろすじけ)を見返して!死んだ恩人と仲間たちとの約束を果たすため!!ゲキアツに救世主を目指してんだ!!!」


「テメェみてぇなボンクラに、絶対ェ負けねえからな!以上!」

「・・・・・!」


 ボンゴラはカネリの勢いに只々(ただただ)圧倒され、何も言い返せなかった。そしてそんな二人の様子を、アゼルは冷ややかに見ていた。


「フン、身の程知らずがもう一人・・・」


 


 歓迎会が終わった後、学生たちは仮設住宅に戻り明日の演習に備えた。一方第48班は、反省会で初日のスケジュールが遅れたため、各々の手荷物を自室へ運び整理に追われていた。


「オレこんなカバン持ってきたかなあ?」

「それは俺の物だ、汚い手で触れるんじゃない!」

「明日朝早いから、整理は軽く済ませておくか」


「じゃあなヤロウども、救世主になるのはこのオレだ!」


 カネリはアゼルとボンゴラに対抗心を燃やしながら、自分の部屋のドアを勢いよく閉めた。するとボンゴラは、今度はアゼルが絡んでくるのではと思い心配そうに見つめた。


「安心しろ、貴様など俺の敵ではない」

「そ、そうなんだ・・・どうも」


 アゼルの冷たい笑顔に対し、ボンゴラは内心ホッとしながらも苦笑いで返した。


 その後ボンゴラは、明日の準備を済ませてから部屋の明かりを消し、ベッドの上で今日の出来事を振り返った。


(みんなの前で堂々と言う度胸がなきゃ、救世主は務まらない・・・か)


(・・・だから変異できないのかな、おれには覚悟が足りないから)


 こうして、波乱万丈のインターン初日は終了した。だがこれは序の口に過ぎない!第48班には、更なる波乱が列を作って待ち構えていたのだ!!


To be next case

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