案件56.運命のインターン
去年の夏頃、留年の危機に直面したアゼル、カネリ、ボンゴラの3人は、現状打破のためノゾミモチが主催するインターンシップに参加した。
「やっぱり人がいっぱい来てるなあ・・・」
インターンシップの会場には全国から千人近い学生が集まり、ボンゴラはその人数に圧倒されていた一方で、アゼルとカネリも訪れていた。
(流石特級異救者が主催するインターン、集まる人数の桁が違う・・・)
「人、人、人・・・人でゲキアツいっぱいだ!」
カネリが辺りを見回していると、目の前に見覚えのある因縁の相手がいた。
「あっ!お前まさか・・・アゼル!?」
「何っ!カネリか!?」
アゼルとカネリは、スパイで名を馳せる黒理家で生まれた双子の兄妹である。しかし仲は非常に悪く、優秀なアゼルは落ちこぼれのカネリを見下し、カネリは身内を見返そうと何度もアゼルに挑むが、一度も勝てた試しがなかった。
そして黒理家がカネリを追放して以降、二人は7年近く会っていない。お互いの変わり果てた姿を見て、驚きを隠せずにいた。
「ここで会ったが100年目!オレ様と勝負しろ!の前に、お前の左目と左手どうしたんだ!?てか何でここにいんだよ!?」
「お前には関係の無い事だ」
(くっ!こんなところで再会するとは・・・!)
アゼルはカネリがセイブレスと戦い生き残ったことを知っているが、カネリはアゼルが失態を犯し黒理家の信頼を失ったことを知らないのだ。
(黒に不味いぞ、こいつに今の俺の立場を勘付かれてはいけない・・・!)
人一倍プライドが高いアゼルはカネリに弱みを見せまいと、この場をどう切り抜けるか試行錯誤していた。
「わかったぞ!黒理家のスパイとして潜り込むつもりだな!何を企んでやがる!?」
「ハ!?・・・お、お前にしては鋭いじゃないか、知能面でも成長したようだな」
(こいつが馬鹿で助かった・・・)
カネリにバレずに済んだアゼルだが、彼女の発言のせいで悪目立ちしてしまい、付近の学生たちがヒソヒソと話を始めた。
「あいつ黒理家らしいよ」
「暗殺や破壊工作とか、ヤバイことしてるって噂の?」
「あの赤い子、黒理家の奴にそっくりだぞ、身内か?」
「そんな奴らと一緒のインターンは嫌だなあ・・・」
学生たちのヒソヒソ話を聞いたボンゴラは、遠くからアゼルとカネリの様子を見ていた。
(黒理家か・・・うわさは本当なのかな?)
その時、ノゾミモチの代表ツドウが会場中央のステージに上がり、マイクを手にスピーチを始めた。
『学生のみんな!インターンシップに来てくれてありがとう!異救者きっての盾男、盾守ツドウだ!!』
主催であるツドウの登場と同時に、ワアアと学生たちが歓声の声を上げた。
『みんなもう知ってると思うけど、今回のインターンは半年という長い時間をかけ、君たちをじっくり指導する』
『ただし君たちは3人一組になってもらい、どのチームの下で学ぶかはおれたちが決める。君たち一人ひとりの性格や能力を考慮してるから、そこは安心してほしい』
(カネリ以外と組めるなら特に異論は無い)
「アゼルじゃなきゃだれだっていいや」
(だれと組むことになっても、乗り越えてみせる!)
こうしてツドウは、学生たちを班分けすると同時に彼らのインターン先を発表していった。
だがこの小説を読んでいる読者は気づいているだろう。アゼル、カネリ、ボンゴラがだれと組むのかを。そう、運命は既に決まっていたのだ。
『第48班は黒理アゼル、激熱カネリ、手差ボンゴラ!インターン先は・・・ハトノス!』
「「「な、な、な、なんだっっってぇええええええ!!?」」」
3人はそれぞれ、まさかの人物と組むことになり目玉が飛び出すほどに驚いていた。
「冗談ではない!やり直しを要求する!!」
「アゼルと組むなんて、ゲキアツヤダ!!」
(よりによってこの二人と一緒になるなんて・・・!)
アゼルとカネリが激しい剣幕で異議を申し立てたため、ツドウは少し困った様子でいた。
『いや~そう言われても、1週間前から考えに考えて決めた人選だからなあ・・・』
「ならば人選ミスにも限度ってものがあるぞ!」
「そーだそーだ!!」
「ちょっと二人とも・・・」
「ツドウさんのご意向に不服なら、この場でインターンを辞退しても構いませんよ?」
二人は背後から敵意を感じ振り向くと、リクルートスーツを着た褐色肌の女性が佇んでいた。整ったボブカットで眼鏡をかけており、知的かつ冷徹な印象を醸し出している。
「射幸ハズミさん!?」
(1級異救者で、盾守ツドウの敏腕秘書!!)
「コイツ・・・ゲキアツ強そうだぞ!」
『まあまあハズミ、学生をそんな威圧したらかわいそうだよ』
「貴方がそんな態度だから舐められるんです、特級異救者としての自覚をもって下さい」
『すみません!!』
(ハズミさん、ツドウさんにも厳しいな・・・)
結局アゼルとカネリは、内定のチャンスを逃すわけにいかず渋々班分けに従った。全学生の班分けが決まると、異救者たちの案内でそれぞれのインターン先へ向かうことになる。
ちなみにツドウは学生たちへの餞別として、成人男性の上半身を覆い隠せる大きさで、強化プラスチック製の盾を全員分用意したが、快く受け取った学生は全体の3割程度に留まった。
アゼル、カネリ、ボンゴラこと第48班のインターン先は、ヌクラマ国にあるハトノスというチーム。果たしてそこで、どのような課題が待ち受けているのだろうか!?
To be next case




