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案件54.聖女お泊り会

 休暇を満喫する黒火手団(くろびてだん)の前に、突如聖女マナキが現れた。


「マナキちゃん!今度は何があったの!?」

「またストーカーか!?」

「新手の刺客か!?」


「3人とも大げさだよ~、今日はここへお泊まりをお願いしに来たの!」


「なんだお泊りか~」

「今夜はゲキアツ盛り上がるな!」

「来客用の部屋でいいなら、貸してやっても・・・」


「「「お泊りだってーーーーー!!?」」」




 3人は平静を取り戻した後、マナキと護衛の二人を応接間に案内し事情を聞いた。


「本日の祈祷を終えた聖女様は、最寄りのワープゾーンを利用し公邸へお帰りになる予定でしたが、悪堕者(シニステッド)にワープゾーンを破壊された上、ご宿泊の予約が取れず大変困り果てています」


「そこで聖女様が信頼を置く貴方方に、宿の提供をお願いしたいのです」

黒火手団(くろびてだん)のみんなお願い、一泊二日でいいから泊めて?」


 マナキは上目遣いであざといポーズを取り、ボンゴラは可愛さのあまり赤面しながら、ぎこちない返事をした。


「え・・・あ・・・うん・・・い、いいよ」

「やったー!ボンゴラくんありがとう!大好き!!」


 満面の笑顔のマナキに抱きつかれたボンゴラは、顔を真っ赤にして言葉を失い、頭から湯気が沸き上がった。


「ボンゴラが激熱(げきあつ)モードだ!」

「それはさて置き、聖女に宿を提供した際のスコアは?」


 抜け目ないアゼルは、マナキの護衛を務めるイザベロとクレイアに報酬を打診した。


「最低でも一人につき、1200点を約束します」

「お前達!聖女を(ブラック)且つ丁重に持て成すぞ!!」


「でもワープ使えねえなら、車で帰れば―」

「黙れカネリ!余計な事を口走るんじゃない!!」




 こうして、黒火手団(くろびてだん)事務所での宿泊が決まったマナキは、3人と存分にお泊り会を満喫し、まずは【救世(きゅうせい)ゲーム】というボードゲームを始めた。


 ルールはサイコロを振り、マス目やカードに記された案件を達成してスコアを稼ぎ、100億点を突破したプレイヤーが勝利するという、異救者(イレギュリスト)をモチーフにしたゲームである。


「これでわたしのスコア、一億点!」

「ゲーッ!食費で10万点マイナスぅ!?」


 持ち点はマナキがトップを独走し続けているが、カネリはゲーム内で何度もトラブルに遭い、最下位から抜け出せずにいた。


 一方2位のアゼルは大局を見据えた堅実なプレイでスコアを稼ぎ、3位のボンゴラは自分の手札を確認しながら慎重に進めていた。


(ブラック)に引きが強いな」

「聖女ですから」


「そういや、マナキについてた黒服の二人は?」

「イザベロさんとクレイアさんは、外で見回りをしてるよ」


「マナキちゃんはおれたちが見守ってるから、休んで下さいって言ったんだけど・・・」

「聖女の動向が何処まで漏洩してるか解らんのだ、警戒するに越した事はない」


「お前達も気を抜くなよ」

「それならおれたちよりもずっと強い、異救者(イレギュリスト)がいるチームに泊まった方がよかったんじゃないかな?」


「バカヤロウ!惚れた女を守れねえヤツが、救世主になれると思ってんのかぁ!?」

「そーだそーだ!」


 ボンゴラの弱気な発言に対し、カネリはサイコロをテーブルに叩きつけながら喝を入れ、その反動で跳ね返ったサイコロを、アゼルが素早くキャッチした。


「ボンゴラ、一理はあるが己の目的を果たす為ならば、あらゆるチャンスを(ブラック)に利用すべきだ」

 

 アゼルはそう言いながら、ボンゴラにサイコロを手渡した。次はボンゴラのターンだ。


「・・・そうだね、救世主になると誓ったんだ。その覚悟なしに、なれるわけがない!!」


 ボンゴラは覚悟を胸に、山札から手札を1枚引いた。果たして逆転の一手になるか!?




「・・・不祥事で刑務所入りぃ!!?」


 ボンゴラが引き当てたのはペナルティカードだった、現実は非情である。


「ギャハハハハハ!!!そりゃねえだろ!!!」

「やれやれ、これでは先が思いやられる」


 カネリは腹を抱えながら爆笑し、アゼルは呆れ果てていた。


「と言ってる間に、わたしの勝ちぃ!」


 マナキの駒がスコアを獲得できるマスに止まったことで、彼女の持ち点が100億を突破し一人勝ちした。


「チクショー負けたぁ!もう一回だマナキ!!」

「飽きたからヤダ!」

「聖女のクセに逃げんのか!?」


「見苦しいぞカネリ」

「他のことやろうよ」




 その後は4人で対戦アクションゲームをプレイし、ネットで無料配信中のアニメ映画を鑑賞したりした。


 夕食はマナキ手作りのカレーライスで、あまりの美味しさにカネリが10杯もおかわりした。


 一方ボンゴラはカレーの美味しさだけでなく、マナキの髪をまとめエプロンを着用した姿を見て悶絶していた。


「もう19時半か」

「時間たつのゲキアツ早えな!」


「わたしそろそろお風呂入りたいな、借りてもいい?」

「ああ・・・いいよ。もう水は貯めてあるから、カネリよろしくね」

「オッケーイ!」


「一番風呂は聖女に譲ってやれ、それと熱くし過ぎるなよ」

「わかってら!」


 カネリが我先に風呂場へ入って行ったのを見て、マナキはボンゴラに疑問を投げかけた。


「ボンゴラくん、どういうこと?」

「お風呂のガス代を節約するために、カネリの力を借りてるんだ」

「その代わり、毎回奴が一番風呂に入るというルールだ」


 カネリは浴室でカネリファイヤに変異し、水風呂に右腕を突っ込んだ。すると右腕から高熱を発し、浴槽に貯めた水を一瞬でお湯に変えた。




「じゃあわたしお風呂入るね、覗いたらダ・メ・だ・よ!」


 そう言ってマナキが洗面脱衣室に入った後、カネリがニヤけた顔でボンゴラに肘を当ててきた。


「ホントはゲキアツのぞきたいんだろ?」

「ちょっとやめてよカネリ・・・!」

「それより聖女の衣類をどう洗濯するか・・・微温湯(ぬるまゆ)ですすぎ洗いか?」


「洗濯ってことは・・・し・・・した・・・!」

「『下着』も洗うに決まってるだろ」


「待ってアゼル!!お男の人が洗うのは・・・色々、マズいんじゃないかな!!?」


 ボンゴラは顔を真っ赤にしながら、激しく取り乱していた。


「しょうがねえなあ、オレが洗ってやるよ」

「ダメだカネリ!カネリのとはちがって、マナキちゃんのはデリケートなんだ!・・・多分!」


「ならば幼馴染であるお前が洗濯しろ!」

「いや・・・まだ、そこまでの関係じゃ・・・」


「お前も孤児院育ちなら、女の下着くらい干したり片付けたりしただろ!」

「そうだけどさ・・・マナキちゃんは別なんだよ!」


 同じ頃マナキは浴室で身体を洗いながら、3人の口論を聞いて笑いをこらえていた。


「プププっ、全部聞こえてるのに・・・!」


 結局マナキの衣類は、護衛の二人に洗ってもらうことになり、着替えも彼女たちが用意してくれた。




 その後黒火手団(くろびてだん)の3人も入浴を終えたが、ボンゴラは鼻に詰め物をしてぐったりした様子だった。


(ブラック)に落ち着いたかボンゴラ?」

「うん・・・ブラック・・・」


「今日のお前はカネリ以上に世話が焼ける。風呂上がりの聖女を見るや鼻出血し、入浴中に再出血して溺水しかけたのだからな」

「ごめんアゼル・・・ありがとう・・・」


「風呂ん中で、マナキのハダカ考えてたのか?」

「ヤダ~、ボンゴラくんのエッチ~」


 カネリとマナキは、ボンゴラを見てニヤニヤしていた。


「止めろ!これ以上刺激するんじゃない!掃除の手間をかけさせるな!」

「じゃあ気晴らしに・・・何か話そうか」


「だったらオレ様の、ゲキアツ武勇伝を聞かせてやるぜ!」

「それよりわたし、黒火手団(くろびてだん)が結成されたいきさつが知りたいな!」


To be next case

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