案件53.黒火手団の休日
5月7日、大型連休が終わり社会が通常運転に戻った頃、黒火手団は活動を休止し事務所でパーティーを開いていた。
アゼル、カネリ、ボンゴラの3人が囲むテーブルには、特上のお寿司や豪華なピザ、2~3人用のホールケーキが置かれ、ケーキには『祝!スコア1万点突破!』と書かれたメッセージプレートを添えられていた。
「全員スコア1万点突破を記念して、ゲキアツかんぱーーーい!!!」
「かんぱーい!」
3人は掛け声と共に、各々が持つグラスを当て合い飲み食いを始めた。
「約1ヶ月で所持スコア1万点以上、悪くないペースだ」
「来月の3級試験も余裕で挑戦できるね、でもコズドは今頃どうしてるかな?」
「そんなヤツのことは忘れて、今日は好きなだけ楽しもうぜ!」
その時、ピンポーンとインターホンが鳴った。
「依頼人!?」
「休業中の札が見えなかったのか?」
「緊急案件かもしれない、行ってみよう」
3人が玄関のドアを開けると、配達員と思われる女性が姿を現した。
「ホタビじゃねえか!」
「手紙を届けに来たよカネリ」
温屋ホタビはカネリと同じ【激熱家】の出身で、アルバイトをしながら看護師を目指している。
3人はホタビから、何通ものハガキや封筒を受け取った。
「意外とあるな」
「ホタビさん、ありがとうございます」
「オレたち今パーティーやってんだ、お前もどうだ!?」
「ごめんカネリ!これから大学の授業が始まるの、また今度ね!」
そう言ってホタビは、カネリに向かって手を振りながらバイクで去って行った。
「ホタビさんも大変だね、看護師になれるといいな」
「アイツならゲキアツ大丈夫だ!」
3人は食べ終わってから手紙を読み始めた。手紙の送り主は、かつて黒火手団が助けたあるいは、縁のある人たちである。
1通目は、父親の病気を治すため闇バイトに加担し、黒火手団を騙そうとした女子高生原ククリからだ。
『黒火手団の皆さん、以前はご迷惑をおかけしてすみませんでした』
『ヤスエさんのおかげで父は命を取り留め、回復傾向にあります』
『一方わたしは、恩返しとご迷惑をおかけした償いのため、ヤスエさんのお屋敷でしっかり働いています』
『護衛の人たちはとても優しい方で、休みの合間に通信制高校で勉強することを勧めてくれました』
『罪を償った後は、皆さんと同じように人の役に立てる仕事がしたいです。本当にありがとうございました』
ククリからの手紙を読み終えた3人は、少し安心した表情を見せていた。
「みんな元気そうでよかったな!」
「そうだね、マンジロウさんからの手紙もあるよ」
追景マンジロウは聖女マナキの追っかけファンで、ストーカー行為の果てに暗殺未遂の濡れ衣を着せられてしまったが、黒火手団の奮闘で真犯人は捕まり、罪が軽くなった。
手紙の内容によると、現在は異救者の管理下で人助けに勤しみ、罪を償ったらマナキのライブ活動を観に行くことを望んでいる。今度はちゃんと節度を守って応援するとのことだ。
「マンジロウさんも頑張ってるんだな」
「アゼル、お前宛ての手紙だけど、タカモクレンって誰だ?」
「!それをよこせ!」
アゼルはカネリが持つ封筒を奪うと、危険がないかよく調べてから開封した。
タカモクレンはマンジロウが関わった、聖女暗殺未遂事件の真犯人で一流の殺し屋だが、アゼルに撃破され刑務所へ送られた。
『黒皇!お前の活躍はムショでも噂になってるぞ!』
『だが全盛期のお前と比べれば、ブラックの頭文字程度でしかない!』
『無様な姿を晒したら、その眉間に風穴を空けてやるぞ!覚えておけ!!』
「・・・タカモクレンって、お前のファンなのか?」
「少々厄介な方のな」
「カネリ、ゲキアツメシからの手紙だよ」
「どれどれ・・・」
【ゲキアツメシ】(旧名キガボクメツ)とは、カネリが資金援助しているフードバンクセンターである。
改名する前は、経営難で仕方なく街中の廃棄食品を盗んでいたが、黒火手団と矛貫隊に目をつけられ解散の危機に陥った。
そこでカネリがオーナーとなりゲキアツメシに改名することで、窃盗の主犯である上内メグムを除く全職員は、これまで通り活動することを許された。
手紙を書いたのは代表のガスターで、カネリの多額の資金援助により、飢えに苦しむ人たちを今まで以上に助けられたと、感謝の想いが綴られていた。
「よ~し、みんなゲキアツがんばってるな!」
「メグムさんも早く罪を償って、一緒に活動できるといいね」
「残りは後舞ウロ、Mr.シャルド、遠里ダニュアルからの手紙だ」
「アイツらのもあるのか!」
後舞ウロは迷子の5歳児で、コズドと初めて遭遇した際に捕らわれてしまったが、ボンゴラの奮闘により助け出され無事両親と再会した。
ハガキには『くろびてだん、がんばれ!』と、拙くも力強い応援メッセージが書かれていた。
多々玲シャルドは、呪物を展示・保管する政村呪物館の館長である。特定危険呪物の一つ【血黒の鎧】が館内で暴れたため、事態の沈静化を黒火手団に依頼した。
手紙の内容は、黒火手団のおかげで大型連休中に無事開館し、大勢の来客で賑わったことへのお礼と、新たに展示する呪物の紹介だった。
遠里ダニュアルは、ボンゴラが生まれ育った孤児院【シュバシコウ】の同胞で、異救者として身寄りのない子どもたちの世話をしている。
手紙には、家庭崩壊で心に深い傷を負った少年、晴山カガヤの近況が書き記されていた。
カガヤは、自身の心の闇を悪堕者に付け込まれ囚われていたが、ボンゴラの必死の説得で立ち直ることができた。
現在は再び家族3人で暮らすことを夢見ながら、学校に通い一生懸命勉強に励んでいるとのこと。
「たった一ヶ月でオレたち、こんなにたくさんの人をゲキアツ救ったんだな!」
「まだ序の口だ、今後は今まで以上に黒な救済で、一気に成り上がる!」
「世界には、助けを求める人がまだまだいっぱいいる、みんなこの手で救ってみせる!」
「「「必ず、救世主になってやる!!!」」」
アゼル、カネリ、ボンゴラの3人は、救世主を目指す仲間同士でありライバル同士でもある。互いに見つめ合うことで、そのことを再確認した。
そんな中、再びピンポーンとインターホンが鳴った。
「今度は誰だ?」
「今度こそ緊急案件かも!」
「出りゃわかるだろ!」
「こんにちはー!聖女マナキでーす!!」
現れたのは救世主の代理人かつ、ボンゴラの幼馴染である聖女マナキと、彼女の護衛を担う二人の女性、イザベロとクレイアだ。
「聖女!?」
「マナキぃ!?」
「マナキちゃん!?」
再び訪れた超大物、聖女マナキの目的は一体!?
To be next case




